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【後編】新型コロナ、BuzzFeedはどう報じたか? PCR検査の誤解、貧困の増加、そして再びの感染拡大へ

新型コロナウイルスの流行が長引き、困窮者が増え、人間関係もギスギスすることが増えました。感染対策にも飽きてきたこともあり、再び感染拡大の危機が迫っています。どうか今年だけは静かに、元気に年末年始を過ごしましょう。

新型コロナウイルスの流行は、当初から長引くことは予想されていた。

実際に長期化すると、生活に困窮する人が増え、差別や偏見は人の心や人間関係をじわじわと蝕んでいく。

この窮屈さからの早い解放を願って、PCR検査や治療薬の開発に過剰に期待する動きも見られた。

その中でBuzzFeedは、どうこの感染症を報じてきたか。下半期を中心とした後編をお届けする。

差別・偏見、「自粛警察」とどう戦うか?

流行の初期から、感染者や、感染者の治療に当たる医療者、介護者への差別や偏見が広がっていった。

感染対策を怠っているように見える他の人を監視し、厳しく糾弾する「自粛警察」も問題となっている。

新型コロナ、未だ手付かずの倫理的課題は? 専門家会議のメンバーが問いかける(4月20日)

感染してもいいけど、1人目にはなりたくない… なぜ、"自粛警察"や感染者バッシングは起きるのか?(6月4日)

「公衆衛生ファシズム」が吹き荒れる 「行き過ぎた予防啓発は差別や偏見の温床」(6月13日)

「怖いのは感染ではなく風評被害」 精神疾患や認知症患者専門のコロナ病棟を開設した病院の悩み(6月23日)

「県外ナンバー車への差別はダメ」宣言したのはなぜ? 感染爆発を避けるため、鳥取県知事が伝えたいこと(8月31日)

差別や偏見に加担するのは一般人だけではない。感染対策を名目に、人権に配慮した手続きを経ずに、警察権力が個人の感染情報や個人情報を引き出し、悪用されかねない仕組みを作った問題も指摘してきた。

照会書や本人の同意なしに警察へ感染者情報を 警察庁の依頼で厚労省が自治体や保健所に通知 「人権侵害では?」との反発も(6月18日)

【独自】陽性判明後に行方不明→厚労省が警察に捜索を依頼できる仕組みを検討→保健所反発(7月14日)

感染症法の前文には、こう明記されている。

我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。

感染拡大防止の名の下に人権が軽視されることのないよう権力を監視するのもメディアの大事な役割の一つだ。

なぜ感染者の職業を公表?市区町村まで明かされるケースも… 新型コロナ分科会メンバーが問題視する情報公開のあり方(8月21日)

新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員の武藤香織さんは、差別や偏見に関するワーキンググループを作り、メディアの情報発信のあり方に疑問を投げかけている。

PCR検査の誤解

流行初期から、PCR検査に関する論争が続いている。

確かに第1波の頃は、PCR検査体制のキャパシティが少なく、症状があり医師が必要だと判断した場合も、なかなか検査を受けられない問題があった。

ただ、検査には限界があり、陰性だからといっても感染していないことを証明するわけではない。BuzzFeedでは、検査の意味とその解釈、対応について、2月から継続的に発信を続けている。

新型コロナ、なぜ希望者全員に検査をしないの?  感染管理の専門家に聞きました(2月26日)

しかし、医師を育てる医科大学でさえ、全学生に「陰性確認」のための検査をするなど、迷走が続く。

東京女子医大が全学生に新型コロナの陰性確認実施へ 「儀式としてのPCR検査は無意味」専門家が批判(5月16日)

繰り返し、検査で何がわかって何がわからないのか、どう使うのが適しているかを伝えてきた。

「あらゆる人に検査を」で得られるのは偽物の安心。PCR検査の特異度が99.9999%でも、議論は変わらない(7月10日)

必要なのは、全ての無症状者への徹底的なPCR検査ではない。尾身会長「100%の安心は残念ながら、ない」(7月17日)

ソフトバンク、なぜ無症状の社員にPCR検査?専門家「保健所がやってほしいと思う検査をやってください」(8月8日)

「経済を回すために無症状への検査拡大」専門家はどう見るか?(8月12日)

「検査を増やせば新型コロナ感染者を減らせる」は正しいのか? 疫学の専門家に聞きました(9月2日)

無症状の市民に幅広くPCR検査をやるのがマズいわけ(9月28日)

「元の生活に戻りたい」という一般人の願いにつけ込み、質の低い民間のPCR検査ビジネスも乱立している。

「陰性なら帰省できる」「陰性なら出張できる」という誤解を与える宣伝文句で安価に販売したり、結果の説明をせず、陽性の場合の届け出や受診先も紹介しない「野良検査」がはびこっている。

「誰にも知られず、こっそり」強調 民間PCR検査キット、使ってみた(11月26日)

「無料で」「優先的に」PCR検査? 国民生活センター「詐欺的なものも」と注意喚起(11月26日)

面会禁止、通常医療への影響

新型コロナウイルスが病院や介護施設に持ち込まれ、体力が下がった人に感染すると命を奪う可能性もある。

面会を禁止する医療機関や介護施設が増え、人生の終末期にも家族が立ち会えない事態が問題となっている。


「これが今生の別れになるのか」 新型コロナウイルスで面会できないことに揺れる家族の思い(9月16日)

新型コロナウイルスで緩和ケアは自殺したのではないか? 医療者は、死者の権利を冒涜している(6月13日)

また、医療機関で感染したくないなどの思いから、必要な医療や予防接種、がん検診の受診控えが増えている。命に関わることなので必要な医療は受けるようにし、主治医やかかりつけ医と相談して自己判断は控えてほしい。

新型コロナの影響で子どもの予防接種率が低下 専門家「ワクチン接種を先延ばししないで」(5月21日)

「受診や治療がストップした」「入院したらアウティングが怖い」 新型コロナ流行でトランスジェンダーの直面する医療不安(5月26日)

がん患者の8人に1人が新型コロナで治療や受診を変更 その半分が自己判断(11月30日)

コロナ禍でもHIV検査を受けて 医療者なしで三密を避ける検査プロジェクトがスタート(12月1日)

やさしい日本語の記事 外国人へ情報を届ける

新型コロナウイルスは社会的な弱者を狙って広がっていく意地の悪いウイルスだ。

その中でも感染対策の情報が十分に行き届かない外国人たちにどう伝えるかは、メディアにとっても重要な課題となっている。

BuzzFeedでは、日本語を母語としない人向けの文章「やさしい日本語」の研修を取材した冨田すみれ子記者を中心に、新型コロナでもやさしい日本語の記事を届けてきた。

コロナウイルス かな?電話(でんわ)で相談(そうだん)できます【やさしい日本語の記事】(1月31日)

「やさしい日本語」で コロナウイルス の おしらせ が あります 【やさしい日本語のきじ】(2月11日)

コロナ ウイルス で 学校(がっこう) が やすみ に なるかも しれません【やさしい 日本語 の きじ】(2月29日)

コロナ で 仕事(しごと)が なくなり ましたか?そうだん できます【やさしい にほんご の きじ】(3月27日)

コロナ に ついての 会話(かいわ)シート、13 の ことば で あります【やさしい にほんご の きじ】(4月3日)

布(ぬの)の マスク で 気(き)を つける こと、医者(いしゃ)が おしえ ます【やさしい にほんご の きじ】(4月7日)

コロナ の 相談(そうだん)、8つ の ことば で 電話(でんわ)できます【やさしい にほんご の きじ】(4月10日)

国(くに) からの 10万円(まんえん) の もらい方、11 の ことば で せつめい あります【やさしい 日本語 の きじ】(5月2日)

コロナ で こまって いる 外国人(がいこくじん)の ための ウェブサイト【やさしい にほんご の きじ】(7月27日)

こまっている がいこくじん が、14 の ことば で 電話相談(でんわ そうだん)できます【やさしい にほんご の きじ】(8月27日)

こども に コロナ予防(よぼう)、どう おしえる?【やさしい 日本語 の きじ】(10月22日)

コロナ に ならない ために。5つ の こと、気(き)をつけて【やさしい にほんご の きじ】(11月18日)

「外国人(がいこくじん)に つたえたい」ベトナムご、タガログご、ネパールご、ミャンマーご で 動画【やさしい 日本語 の きじ】(11月20日)

コロナ で 困(こま)ったら 電話(でんわ) を してください【やさしい にほんご の きじ】(12月29日)

どうか身近に困っている人がいたら、この記事の存在を教えてあげてほしい。

情報の吟味 

大量に出される情報を吟味し、適切に評価した上で届けることは医療情報を扱う記者に求められる大事な能力だ。

日本企業の富士フイルムが開発した新型インフルエンザ治療薬「アビガン」は、芸能人の新型コロナ感染者が使って回復したという報道もあり、早くから効果が期待されていた。

首相や厚労省も国策のように承認に前のめりな発言を続け、当時の医師会長や、ノーベル賞受賞の研究者さえも早期承認を求め続け、大手メディアはその発言を垂れ流してきた。

「アビガンは特効薬ではなさそう」 現場で患者を診てきた救急医が語るウィズコロナの時代(6月9日)

だが治療現場の医師からさえも効果を疑問視する声が聞こえ、臨床研究を進めていた大学は統計的な有意差をもって効果を示すことはできなかったという結果を発表して研究を終えた。

政府は200万人分を備蓄、首相の「鶴の一声」求める声も… アビガンめぐる議論に、研究現場や専門家は何を思うのか(8月18日)

その後、製薬会社による治験も進められたが、被験者が少なく、医師はアビガンを投与したか否かを知っている研究デザインだったため、効果の判断にバイアスがかかる問題が専門家から指摘されていた。

アビガン、10月中に承認申請へ 治験で確認された効果とは?専門家は2つの問題を指摘(9月24日)

そして、結局、承認申請されたものの、出されたデータだけでは判断できないとして審査が見送られる結果となった。

同様の問題は、「イソジン」でも起きている。

大阪府の吉村洋文知事が、一つの病院の40人程度の研究で、新型コロナウイルス対策に効果があるとして、ポビドンヨードを含むうがい薬を勧める記者会見を開き、それを多くのメディアがそのまま垂れ流した。

全国のドラッグストアでイソジンが売り切れになった騒ぎを覚えている人も多いだろう。

しかし、口内や喉のウイルスがうがい薬で消えても、肺や鼻のウイルスが消えるわけではない。被験者も少ない研究で「感染対策に効果がある」と言うのが無理筋であるだけではなく、水うがいとの比較さえなされていなかった。

深刻な副作用が出る恐れがある妊婦や甲状腺機能に問題がある人が使う危険性もある。

我々は急いで検証記事を書き、すぐに騒ぎは沈静化した。

「イソジンなどのうがい薬でコロナ感染予防」は本当? 大阪府が発表→医療者らから批判相次ぐ(8月4日)

専門家解説 新型コロナ対策、イソジンなどのうがい薬に飛びつくべきでないのはなぜ?(8月5日)

うがい薬でコロナ対策、根拠とされる研究には欠陥も。専門家「ズルをしてはダメなんです」(8月11日)

飲食店や自治体がアルコール消毒の代わりに盛んに使った次亜塩素酸水の問題も、BuzzFeedは専門家に取材して検証する記事を繰り返し出している。

大量に商品が出回る「次亜塩素酸水」の危険 科学者「一番怖いのは...」(6月3日)

「次亜塩素酸水」の普及目指す団体に、噴霧反対の医師や科学者が苦言 「効くならば...」(6月15日)

次亜塩素酸水は新型コロナに有効だと確認したが... 政府「吸入しないように注意を」(6月26日)

生活困窮者の急増

流行が長引き、経済活動への影響も長引くにつれ、仕事を失い、それと共に住まいさえ失う人が増えてきた。

炊き出しや生活相談などの支援の場所では、30〜40代で若くして家を失った人も目立つ。若手の千葉雄登記者が支援の現場に繰り返し足を運び、この現状を伝えている。

「1日1食にして耐える」「生活費、学費払えない」コロナの影響で困窮。ネパール人留学生の声(5月22日)

「年越し派遣村」再来も? 年末年始に最大3393世帯が家を失う可能性。支援団体が再び支援の拡充を要望(11月19日)

腐ったレタスの中から、食べられる部分を探した。コロナ禍で困窮する子どもたちの深刻な実情(11月30日)

コロナ禍で30〜40代のホームレスが増え始めた。支援現場に危機感、都は1000室確保を宣言(12月1日)

コロナで収入が減った「ひとり親世帯」のための給付金。 追加給付には申請が必要?注意点をまとめました(12月8日)

生活保護を受けたいのに追い返される… 「水際作戦を終わらせたい」支援団体が独自の申請システムを開発(12月15日)

この寒空の中、路上で過ごす人が増えるのを放置するようでは、日本政府は政策の失敗を問われても仕方ないだろう。

まずは私たちが現状を知り、解決策を共に考えるためにコロナと貧困の問題は継続的に追いかけていく予定だ。

そして、再び感染拡大へ

そして今、私たちは再び感染拡大の危機に直面している。欧米各国ではワクチンの接種も始まったが、日本では順調に行っても来年の春以降の接種開始となりそうだ。

既に通常の医療も十分に提供できない状況になっている今、感染者を抑え込まないと、取り返しのない事態に追い込まれるのは明らかだ。

なぜ、医療崩壊は全ての人にとって「他人事」ではないのか? 尾身茂会長が避けたいと願う「最悪のシナリオ」(30日)

感染拡大でも続く政治家の会食、食い違う政治のメッセージ… 尾身茂会長がリーダーたちに願うこと(31日)

我々はこれまでの経験で、どのポイントを抑えれば、感染拡大が止まるかはわかっている。長引く流行で、感染対策にも飽きてきた頃だと思うが、この冬の感染を抑え込めるかどうかが、来年の生活を決める。頑張って乗り切りたい。

忘年会、新年会、成人式、年末年始の帰省 分科会「今年は静かに過ごして」(12月11日)

普段一緒に過ごしていない人と、大人数で、長時間、飲食をするのはリスクが高い。忘年会、新年会は避け、今年はなるべく帰省もしないでいたい。カウントダウンや初詣などのイベントもできれば避けるようにしよう。

もし、それでも抑えられなければ、罰則と給付金をセットにして飲食店の時短営業ができるように法律が改正される可能性も菅首相によって示された。

給付金と罰則をセットにした特措法改正を検討 菅首相が会見で示す(12月25日)

東京などで一向に減らない感染状況に、最後の切り札である「緊急事態宣言」を検討すべきだという声も専門家から上がり始めている。

緊急事態宣言は必要ですか? 増え続ける新型コロナ感染者に最後の切り札を切るべきか(12月23日)

イギリスやアフリカでは感染力の高い変異株も出始めており、より一層の感染対策の徹底が求められている。

新型コロナ、変異で「感染力1.7倍」「子どもにも感染しやすい」は本当?ワクチンへの影響は? 専門家に聞きました(12月28日

医療現場の最前線で疲れ果てながら、それでも使命感をもって新型コロナウイルスの治療に当たる医療者たちが私たちに求めるのは、「健康でいること」「感染しないこと」だ。

空振りの「勝負の3週間」 現場の医師が感じ始めた「諦め」の気持ち(12月19日)

医療機関のために何かをしてほしいとは思っていない。でも… クリスマスにコロナ治療最前線の専門家が願うこと(12月25日)

「本当はもっとやってあげられるのに」 限界を超えてコロナ診療に当たるスタッフのストレスとは?(12月29日)

この年末年始、どうぞ感染リスクの高い場面は避けて、元気にお過ごしください。1年間のご愛読、ありがとうございました。

BuzzFeedでは新型コロナウイルスの記事をまとめたページ「covid-19 新型コロナウイルス」をを作っているので、ぜひ他の記事もお読みください。