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コロナ禍でもHIV検査を受けて 医療者なしで三密を避ける検査プロジェクトがスタート

12月1日は世界エイズデーです。新型コロナの拡大でストップしている保健所でのHIV無料検査。このまま放置してはまずいと、愛知県で医療者なしで、検査結果は自宅に居ながらわかる検査の試みがスタートします。

新型コロナウイルスの感染拡大は、一般の医療にも大きな影響を及ぼしている。

保健所も感染者対応や相談で手いっぱいになる中、普段行なっている検査を中止しているところが多い。HIV(※)検査もその一つだ。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

医療者なしでのHIV検査プロジェクトの研究代表者、横幕能行さん。「コロナも大変ですが、他の病気も重要なのは変わりないのです」と話す

「どんな時でもHIV検査を止めていてはいけない」と、名古屋医療センターエイズ総合診療部長の横幕能行さんは、愛知県の協力を得ながら、医療者の対応が不要で、結果はネットの閲覧でHIV検査ができるプロジェクトを12月から2ヶ月間行う。

厚生労働省の新型コロナ対策に関する特別研究費を使い、効果があれば課題を改善した上で、全国にも広げる狙いがある。

横幕さんは、「三密による感染の不安を解消できて、保健所の負担も減らせるならみんなハッピーなはずです。みんなで知恵を出し合って新しい検査体制を作りたい」と参加を呼びかけている。

※HIV(ヒト免疫不全ウイルス)。現時点では治療でウイルスを排除することはできないが、治療薬を飲み続ければ寿命を全うできる。治療をせずにウイルスが体内で増殖し、免疫が落ちることでニューモシスチス肺炎など23の病気を発症した状態をエイズ(後天性免疫不全症候群)という。

新型コロナで逼迫する保健所、HIV検査数は激減

新型コロナウイルスの感染拡大で、対応に追われる保健所の中にはHIV検査を中止しているところも多い。

厚生労働省のエイズ動向委員会の今年4〜6月の統計では、保健所などに対するHIV/エイズの相談件数は1万1689件で、昨年同期(3万2498件)の約3分の1。HIV検査に至っては6259件で、昨年同期(2万6529件)の約4分の1まで激減した。

横幕さんによると、名古屋市内の保健所は平日のHIV検査を全て閉め、日曜日だけ外部委託で行うようになった。

「保健所のキャパシティーが新型コロナでオーバーしているということと、当事者がコロナ感染を恐れて検査に来たがらないということがあるようです」

横幕さんが行なっているHIV/エイズ診療でも、これまで新規患者は保健所からの紹介が圧倒的に多かったが、現在では3つのパターンが増えている。

「まず、HIVは感染直後にインフルエンザのような高熱が数日間続くのですが、それを『コロナではないか?』と疑って受診して、HIV感染が発覚するパターンです」

「次に、『いきなりエイズ』とも呼ばれていますが、感染に気づかずに発症してわかるパターン。『なんだか息苦しいな』と思ったら、エイズの一つであるニューモシスチス肺炎だったというようなことがあります」

3つめのパターンは外国人の受診だ。

「航空便が止まって本国から治療薬が届かないと言って、薬の処方のために受診するパターンです。こちらも増えてきています」

しかし、HIVは早期発見がやはり重要だ。

「特にエイズを発症してからわかると、免疫のバランスが既に崩れた状態での治療開始となりますので、その後の経過も大変になります。また、感染を知らずに他の人にうつす可能性も当然増えるでしょう」

「日常的にHIV感染をチェックしていたMSM(Men who have Sex with Men 男性とセックスする男性)が今はチェックできない状態になっています。自身の健康を守るためにも、感染を広げないためにも何か工夫ができないかと思いました」

匿名・無料 医療者なしで自分で採血

そこで考えたのが、「新型コロナウイルス感染拡大期における保健所HIV等検査の実施体制に関する研究(iTesting Study)」と称したプロジェクトだ。

HIVだけでなく、梅毒、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの4つを調べる。いずれも性的な接触でもうつるウイルスで、HIVに感染していると他のウイルスにも感染している可能性が高くなるからだ。

横幕能行さん提供

検査までの流れ。全て匿名で行う

検査できるのは、愛知県に在住、または仕事や通学のために通う16歳以上で、全ての手続きは匿名、無料で行われる。

まず希望者はウェブで検査日を予約して、IDを取得する。

その後、愛知県庁の会議室の1室にある検査会場で、タブレットを使って検査の流れを確認し、同意の手続きをする。

その後、検査キットの針を自分で指に刺し、ろ紙に血液を染み込ませる。それと書類を封筒に入れ、自分で会場内の投函箱に入れる。検査を受けてみてどう感じたか、アンケートにも回答する。

ここまでが検査当日の流れだ。15分程度で終わる。

検査結果はネットで確認 陽性の場合は相談窓口も

横幕能行さん提供

検査結果を確認する方法と、その後の流れ

検査結果は、3営業日が経った後に、予約IDとパスワードをネットで打ち込むことで家に居ながら確認することができる。

陽性だった場合は、メールや電話、チャットを使って、検査会社やHIV感染者を支援する団体「ぷれいす東京」などに相談することもできる。

そして名古屋医療センターや保健所で改めて確認検査を受けることが必要になる。そこで自分の都合に応じた適切な医療機関も紹介してもらえる。

治療費は障害者手帳が交付されたら自己負担は所得に応じて1割未満になる。薬を飲み続ける限り日常生活は変わらず送ることができ、ウイルスを検出限界値未満に抑え込めば、コンドームなしでセックスしても他の人にうつすことはない。

HIVの治療は劇的に良くなった。治療につながることが肝心なのだ。

250人の検査で効果と課題を検証

検査は12月8日、15日、28日、1月12日、19日の5回行う予定で、250人の利用を目指す。

横幕さんは、アンケートを取って、安全、安心に検査を受けることができたか、検査に対する意見などを聞き、今後の改善につなげる予定だ。

研究も兼ねた今回の試みで、コロナ禍であっても受けやすく、保健所など医療者や行政の負担もコストも減るという結果が出たら、全国に広げたい。平時であってもHIVの検査がしやすいように様々な形の検査を増やし、検査へのハードルを下げていくという狙いもある。

横幕さんは、「コロナは確かに大変な病気ですが、他にも命にかかわる病気はあります。コロナによって他の病気の治療が遅れたり、リスクのある人の命の質が下がるのは問題です。みんなで知恵を出し合って、より良い仕組みを作れたらと思っていますのでぜひ受けにきてください」と検査を呼びかけている。

検査「iTesting」のウェブサイトはこちら。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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