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Updated on 2020年6月28日. Posted on 2020年6月23日

新型コロナのパンデミックに乗じて加速する、LGBTヘの攻撃や差別

新型コロナウイルスのパンデミック下で、世界各国ではLGBTの人々をやり玉にあげる「スケープゴート化」が起きている。ゲイクラブで集団感染が発生した韓国では、メディアがアウティングに加担した。他の国では、警察がロックダウン中の規制を利用して、LGBTの人たちを非人道的に扱うケースや、政府が機会に乗じてLGBTを排除する動きを強めるケースが見られる。

LGBTの人たちの性的指向や性自認が強制的に暴露される「アウティング」が起きている。

新型コロナウイルスの流行が始まっておよそ4カ月が過ぎた5月はじめ、韓国のニュースメディアは、新型コロナウイルス検査で陽性となったゲイ男性たちの身元を公表し始めた。

韓国は、厳しい検査体制と濃厚接触者の追跡調査で、新型コロナウイルスの封じ込めに成功したと世界中から称賛されている。4月には、新たな感染者がひとりも確認されない日もあった。

ところが、首都ソウルを第2波が襲うのではないかという恐怖心が生まれた途端、その矛先は即座にゲイの男性へと向けられた。

きっかけは、キリスト教系新聞の『国民日報』が5月7日、数十人の集団感染が発生したソウル繁華街、梨泰院(イテウォン)のナイトクラブはゲイクラブだったと報じたことだ。

The King Nightclub in South Korea (Jung Yeon-je / Getty Images)

新型コロナウイルスの集団感染が発生した韓国・ソウルの「キングクラブ」

陽性だった全員がゲイだったわけではない。新たな感染が起こったナイトクラブが、すべてゲイクラブだったわけでもない。

にもかかわらず、ほかのニュースメディアもこぞって、陽性と確認されたゲイの人々の氏名、住所、勤務先を公表し始めた。続いて、陽性者のうちの男性2人がゲイ向けサウナに足を運んでいたことが明らかになると、人々は次々と敵意をむき出しにした。

こうした事態は、エイズ危機のときに広まったアンチ・ゲイ感情を思い出させるものだ。そしてこうした感情は、新型コロナウイルスが流行するなかで、世界的な傾向となりつつある。

LGBTの人々をやり玉にあげる「スケープゴート化」が起きているのだ。

レイシストによるステレオタイプ化や、責任の押し付け、路上での無差別攻撃が相次ぐなか、世界各地の報道から、ある並行現象が浮かび上がってきた。

影響力を持つ政府、教会、警察、メディアなどの組織が、新型コロナウイルス感染拡大の責任を、性的マイノリティやジェンダーマイノリティになすり付ける現象だ。

こうした現象は、実はもう何十年も前から起きている。LGBTの人たちを敵に回した、より大きな運動の一部を形成しているのだ。

世界が別のことに気を取られているうちに、非常事態に乗じて政府がLGBTの権利をはく奪したり、都市封鎖という規制に乗じてLGBTコミュニティに属する人たちを攻撃したり、アイデンティティのために政府支援を受け取れない人たちを放置したりしているのだ。

その結果、多くの人たちが困窮し、危険にさらされている。

人権擁護派は助けを求めており、LGBTコミュニティ内部だけでなく外部にまで巻き添えの被害が及ぶと警鐘を鳴らしている。しかし、ウイルス流行による混乱のさなかでは、そうした訴えが人々の耳に届くことはほとんどない。

Jung Yeon-je / Getty Images

梨泰院(イテウォン)の歓楽街に設置された新型コロナウイルス検査場。2020年5月12日、ソウルで撮影。

反LGBT感情を扇動した韓国の日刊紙『国民日報』は、過去30年にわたってキリスト教徒の権利を求めて運動を行ってきた。韓国のプロテスタント教会系の新聞だ。

アンチ・ゲイの活動について報じることが多い。2019年には、「クィア・フェスティバルに反対する抗議集会」について報道し、政府が発表した「同性愛者を支援・擁護する方針」を批判した。

韓国で同性愛は違法ではないものの、社会は依然として保守的だ。同性婚は社会的に認められておらず、LGBT差別を禁止する国の法律もない。LGBTであることを公表している著名人は少なく、同性愛者の軍人が刑務所に入れられることもある。

今回は、国民日報の報道から数時間のうちに、アウティングとスケープゴート化があっというまに広まり、丁世均(チョン・セギュン)首相が「特定の集団」に責任を負わせないよう、市民に呼びかける事態となった。

ただし、首相がそう訴えた理由は、憎しみや暴力を煽りかねないからではなく、感染拡大抑制の取り組みを妨げるからだ。報道では、LGBTの人たちがアウティングを恐れて新型コロナウイルスの検査を避けているという事実が、すでに明るみになっていた。

韓国の英字新聞『コリア・ヘラルド』の記者ヒュンス・イムが5月11日、同性愛者をターゲットにした行為の影響について書いたツイートは、広く拡散した。

「マッチングアプリを利用する同性愛者のところには、ドキシング(個人情報をインターネット上にさらすこと)の脅迫メッセージが届いています」とイムはツイートした。

「不満はいま、目に見えた憎しみへと変化しています。私の知り合いには、アウティングされるのを恐れて、マッチングアプリに載せていた写真を削除したゲイ男性が、少なくとも2人います。すると、『写真を削除したな』とか『いまに見ていろ』という不気味なメッセージが、プロフィールに何も書かれていないアカウントから送られてきたそうです」

同性愛者をやり玉にあげるスケープゴート化は、韓国以外の国でも起きている。

2020年3月末に、アカウント名「Tony White」が、1本の動画をFacebookに投稿した。映っていたのは、大勢のゲイ男性が踊っているイタリアでのパーティーだった。

参加者の顔がはっきりとわかる動画で、イタリアで新型コロナウイルス感染者が急増したのはこうした集まりが原因だというコメントが添えられていた。

この投稿は1000回以上シェアされた。映像は、ツイッターやインスタグラムの宗教系アカウントで拡散し始め、ときには同性愛を嫌悪する中傷コメントが書き込まれた。

ところが、AFPが報じているように、投稿の映像を調査したところ、実は2018年にブラジルで行われたカーニバルで撮影された映像であることがわかった。しかも、映っている人たちは同性愛者でさえない。

動画のなかで踊っている人々が、揃って同じレインボーカラーのタンクトップを着ていたのは、ストリートパーティーの入場料を支払ったことを示すためだった。

Facebookに投稿された元の動画とコメントは2週間後に削除されたが、フェイク投稿は、事実よりも速く拡散してしまった。

A galera do Bloco Crocodilo, que será puxado por Daniela Mercury, já aguarda ansiosa início do desfile na Barra. #carnaval2018

2018年のブラジルでのパーティーの様子。

新型コロナウイルスの流行中、濃厚接触者の追跡が行われている国々では、LGBTの人たちが、アウティングされたり名誉を傷つけられたりするのではないかという恐怖心を抱いていることが明らかになっている。

日本では、同性婚の法制化を目指す団体「Marriage For All Japan ―結婚の自由をすべての人に」が2020年4月にLGBTQを対象にアンケートを実施。その結果、LGBTの人たちは、保健所に行動履歴や濃厚接触者を明かしたら、その内容を公表されてしまうのではないかと不安を覚えており、検査を受けないようにしていることがわかった。

同調査ではさらに、LGBTの人々が、新型コロナウイルスに感染して入院せざるを得なくなる状況を危惧していることも浮き彫りになった。パートナーは自分の近親者として扱ってもらえるのか、医師と相談して重要な決断を下すことが許されるのか、懸念しているのだ。

オンライン上で広がる同性愛者への反発とぴったり重なり合っているのが、危機対応をめぐる非難をかわそうとする世界各国の政府や当局者の動きだ。

新型コロナウイルスへの恐怖を、LGBTに対する、より広く文化的な戦いに取り入れているケースもある。そうしたやり方は時として、流血事件や殺害事件を招く。

2020年5月、ウガンダの首都カンパラの警察がLGBTシェルターに踏み込んだ際の動画が明るみに出た。そこには、地元市長が現場に入り、シェルターの住民をなじり、棒で殴打する様子が映っている。

シェルターの住民たちはロープで縛られ、警察署に連行されて逮捕され、ソーシャルディスタンシング関連の罪で起訴された。シェルターの運営責任者はその事件について、実施中のロックダウンを「私たちを排除する機会に利用した」と述べた。18人が法的支援を得られないまま刑務所に入れられたという。

Badru Katumba / Getty Images

オレンジ売りの女性を棒で叩く警察官。ウガンダの首都カンパラにて。

中央アジアのジョージアでは、警察がロックダウン中の規制を利用して、LGBTの人たちを非人道的に扱ったとして非難されている

セシリ・ツマイアと名乗るトランスジェンダー女性によると、外出禁止令が出ている夜間に外にいたという虚偽の理由で、警察官の集団が、彼女と友人を逮捕したという。

ツマイアは地元のニュースメディア「On.ge」に対し、しまいには警察官から暴行を受けたと語った。

「警察に2~3メートル引きずられました。そのあと、手を縛られ、責任者に背中を蹴られました」

ほかの国でも、新型コロナウイルス対策のロックダウンで導入された社会規制を好機ととらえ、LGBTQの人権を奪い取ろうとしている政府がある。

ハンガリーでは3月末に、権威主義者の様相を強めつつあるヴィクトル・オルバン首相の権限を強化する法案が可決された。新型コロナウイルスに対応するためというのが表向きの理由だが、権力掌握だとして批判が集まっている。

オルバン政権はその翌日に、書類などの性別欄に、自らが選択した性を記入できる制度を廃止する法案を提出した。つまり、常時携行を義務づけられているパスポートや身分証明書などすべての法的文書で、出生時の性別が記載される制度を復活させるものだ。

そうなるとトランスジェンダーは、身分証明書の提示を求められた際に、必然的にアウティングされてしまう。この法案は可決する見込みだ。

ハンガリーのトランスジェンダー数人、ならびにハンガリーの主要LGBTQ権利団体はBuzzFeed Newsに対し、この法案が提出されたことで、逃亡しようと考えているトランスジェンダーがいると語った。ソーシャルメディアでは自殺をほのめかす人も多くいるという。

Emma Molnar

ハンガリーのトランスジェンダー活動家エマ・モルナール(写真は本人提供)。

プエルトリコの人権活動家も、同国政府が機会に乗じていると非難している

プエルトリコでは2018年に、トランスジェンダーが自ら選択した性別を法的文書に記載することを認めるよう立法府に命じる判決が下された。ところが政府は、この判決を無視して、新たな「民法」を提案した。

出生証明書をはじめとする身分証明書には、出生時の性別をそのまま記載し、本人がのちに取得した性別は余白に書き加えるよう定められた。これでは、トランスジェンダーは身分証明書等を提示した瞬間にアウティングされてしまう。

プエルトリコのLGBTQ公民権運動グループ「Lambda Legal」は、次のように語った。

「新型コロナウイルスが流行し、プエルトリコのトランスジェンダーが被害を受ける横暴が続くさなかに、この国の議会は、欠陥のある新民法の導入を優先させることを選んだのです。そのために公聴会が開かれることはなく、開かれたプロセスも存在していません」

2018年にトランスジェンダーの性別認定を求めて立法府を相手に訴訟を起こして勝利した同グループは、この民法改正を阻止すべく動いている。

Ricardo Arduengo / Getty Images

プエルトリコ、サンフアンでのプライドパレード。2018年6月3日撮影。

ほかの国では、当局が実施したロックダウンが、暴力的なヘイトクライムの誘因となっている。コロンビアの首都ボゴタでは、ソーシャルディスタンシング推進のため、外出できる曜日が男女別に分かれている。

しかしそうした措置が、一般市民による性別監視につながった。地元の報道によると、トランスジェンダー女性が「間違った曜日」に外出したとして、とがめられたり、攻撃されたりしている。刃物で刺された者もいる。「女性らしく」見えないと攻撃を受けやすくなるのだ。

ペルーでも、男女別の外出規制が敷かれ、反LGBT主義者による暴力が相次いでいる。ただしペルーの場合、警察によるトランスジェンダーの取り締まりは行われていなかった。

ロックダウン中に、国民に支援金を支給している国があるが、LGBTが支給対象から外されるケースもある。ギリシャでは、セックスワーカーとして働くトランスジェンダー女性は、法律上では正式な労働者として認められていないため、政府の支援金を受け取ることができない

女性であることを証明する書類がなければ、不法労働だとみなされるのだ。

東ヨーロッパの活動団体「Eastern European Coalition for LGBT+ Equality」は、東欧地域ではロックダウン実施中にLGBTに対して十分な国の支援が行われていないとして、非難する声明を発表した。

そのなかで、(監視の強化と警察や軍の配備により)LGBTは「以前にも増して暴力と差別の対象になりやすくなっている」として警鐘を鳴らした。

また、LGBTのセックスワーカーが法執行機関からハラスメントや暴力を受ける事例が増加していることや、ホームレスのLGBTが「短期雇用や一時的な滞在先でさえ確保する機会が急減し、とりわけ不安定な状況に置かれている」ことが挙げられている。

LGBTのホームレスを支援するイギリスの慈善団体が5月はじめ、BuzzFeed Newsに現状を語った。ロックダウンをきっかけに、親が自分の子どものアイデンティティを知ることとなり、行くあてのない子どもを家から追い出すケースが起きているという。

ホームレスは、ヘイトクライムから身を守るすべをほとんど持たないうえに、オンライン上には、そうしたヘイトクライムを煽る動きが多い。そんな状況で生きていける見込みがどれだけあるのかと、同団体は強く危惧している。

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世界各地でLGBTQコミュニティの文化を讃え、権利向上に向けて支援するイベントなどが開催される毎年6月の「プライド月間」。BuzzFeed Japanは2020年6月19日から、セクシュアルマイノリティに焦点をあてたコンテンツを集中的に発信する特集「レインボー・ウィーク」を実施します。

【配信中】オトマリカイ@ BuzzFeed News Live あなたのお悩み一緒に考えます🏳️‍🌈 LGBTQの当事者から寄せられた相談について、りゅうちぇるさん(@RYUZi33WORLD929)&ぺえさん(@peex007)と一緒に考えます。 視聴はこちらから👇 #PrideMonth #虹色のしあわせ🌈 https://t.co/H3uXcYtszu

特集期間中は、ハッシュタグ「#虹色のしあわせ🌈」を活用し、さまざまな記事や動画コンテンツのほか、LGBTQ当事者からの様々な相談をゲストのりゅうちぇるさん、ぺえさんと一緒に考える番組を配信します(視聴はこちらから)。

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この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

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