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「特別な配慮」が生きづらさを生む場合も。「LGBTを受け入れよう」から「全ての性を尊重しよう」へ

10月から11月、「SAITAMA RAINBOW フェスティバル」が開催された。最終日、講演会に登壇した中島潤さんは、性的マイノリティを取り巻く課題に対処する上で、多様な性を包括する視点が欠かせないと話す。

埼玉県川越市にある最明寺で、LGBTQの啓発を目的とする「SAITAMA RAINBOW フェスティバル」が開催された。

イベントは、川越市の後援のもと10月4日から約2カ月にわたって行われた。主催者の最明寺レインボーさいたまの会・NPO法人にじの絲は、本堂のライトアップや映画鑑賞会、トークセッションなど、様々な企画を実施した。

最明寺提供

拠点となった最明寺は、川越市がパートナーシップ宣誓制度を開始した今年の5月1日から、同性どうしの挙式サービスに乗り出している。「LGBTウェディング」をはじめ、このような性的マイノリティの支援活動に寺が取り組むのは珍しい。

副住職の千田明寛さんは、寺を「誰もが、どんな背景を抱えていても足繁く通える場所」にしたいという思いからイベントに踏み切ったと語る。

「日本のお寺は、どうしても葬式やお墓参りなど負のイメージが強いですよね。でもお寺というのは本来、人の生老病死、人が生まれてから死ぬまでトータルサポートができる場所であるべきだと思うんです」

Rikako Takahashi / BuzzFeed

イベント期間中、寺の敷地内にはレインボーカラーののぼり旗が立てられた。

イベントの反響で最も大きかった声も、やはり「寺でやることの意外性」だったそうだ。

「(寺でLGBTQ関連のイベントが行われるのは)大変珍しいです。何より、お寺の関係者を対象とした形ではなく、お寺が会場になっていることが重要だと思います」と話すのは、イベント最終日に講演を行った中島潤さん。

中島さんは、企業に勤めながら性的マイノリティに関する講演を数多く行う。SAITAMA RAINBOW フェスティバル最終日には、「『生と性』自分らしさを生きる」をテーマに登壇した。

Rikako Takahashi / BuzzFeed

中島潤さん(左)と千田明寛さん(右)。

「性別」から「性のあり方」へ

講演で中島さんは、「性=男と女。この当たり前をときほぐすために使えるツール」として、「ジェンダーブレッド・パーソン」を紹介した。

人型クッキーのジンジャーブレッドマンを土台に、多様な性のあり方を図解しているものだ。活動家・アーティスト・作家・コメディアンなど様々な顔を持つサム・キラーマンが提案した。

genderbread.org

ジェンダーブレッド・パーソン。公式サイトでは、図だけではなく自分でスケールを書き込めるワークシートなども、教材として無料提供している。

あなたは自分の性をどう自認している?あなたの生物学的な性は?あなたが表現したい性は?恋愛的に惹かれるのは?性的に惹かれるのは?

自分の性について多角的に尋ねる質問が複数あり、それぞれに「男女」の二択ではなくスケールで答えられる。

「私はこれくらい男性に惹かれるし、これくらい女性にも惹かれる」と、両方への回答が可能だ。回答のバリエーションは、無限にある。

「この考え方だと、人ってそもそも、それぞれに異なると確認しやすくなりました」と中島さんは語る。

「本当に人によって(回答が)違うし、同じ人の中でも気分によって変わりますよね」

誰もが、多様な中のどこかに位置づいている。しかし、それぞれのあり方が同じように尊重されているかというと、「今の状況はそうとは言い難い」と中島さんは考える。

「LGBTQを受け入れよう」「LGBTQに配慮しよう」ではなく…

Rikako Takahashi / BuzzFeed

講演会が行われた最明寺の本堂。

LGBTQの認知度は、年々着実に高まっている。しかし、認知度が高まったからこそ、社会的にひとつ次の認識へと移行する必要がある。

例えば、子どもや若者を取り巻く教育現場。先生や周囲の大人がLGBTQについて「知っている」のは、無知であるよりも良い段階だと中島さんは話す。しかし、一方で注意すべきことがあるという。

「『LGBTQだとわかったら配慮する』『LGBTQに対してのみ、特別な配慮をする』という形になってしまうと、変わらず生きづらい子どもがいるだろうなとは思っています」

制服を選択できる高校や中学校が少しずつ増えているものの、「なぜ選べる必要があるのか」を一度立ち止まって考えてほしいと、中島さんは語る。

「それが『LGBTQの子もいるから、制服選べるようにしないとね』と思われていた場合。選択できる仕組みになっても、風土としては選択できない状況があるかもしれません」

「『トランスジェンダーです。だから制服変えます』と表明することになってしまいますよね。そもそも、『トランスジェンダーだから』という理由だけで、スカートを履きたくないとは限りません」

「全ての子どもが学校で勉強する時、装いたいものを自由に選べる状態か」という包括的な視点で問題意識を持ち、制度を変える必要があるという。

「これはLGBTQに限らず、子どもたちの人権や選択肢を、大人がどう保障していくのかという問題です。『LGBTQのために』『LGBTQの子どもに対して』だけではない形で、子どもたち全体の人権を考える動きが行われていくことが重要です」

だからこそ、中島さんは「LGBTQを受け入れよう」とはあまり言いたくないそうだ。

「『全ての人の性の人権、多様な性のあり方を尊重するには?』と考えてみてください。そうすればLGBTQだけに配慮する形ではなくても、当たり前って変えられると思います」


中島さんの講演内容は、こちらの記事にも掲載しています。