米テキサス州オースティンに住むブリー・レバートンさん(31)とリンジー・レバートンさん(37)は、思い立ったら迷わず行動を起こすカップルです。
2人は2018年、マッチングサイトで出会ってから12時間もしないうちに初デート。その3日後、恋人同士になりました。
婚約した後、2人はグッドフライデー(聖金曜日)にあたる今年4月10日に、歴史あるホテルで挙式する予定でした。
しかし式までわずか数週間というとき、新型コロナウイルス感染拡大予防のために、オースティンで外出禁止令が出されました。
招待客のリストはどんどん短くなり、50人にまで減少。さらにわずか10人になったところで、2人は予定通り式は挙げられないことを悟りました。

リンジーさんはこう振り返ります。
「ありとあらゆることを細かく計画していました。グッドフライデーの今年4月10日に結婚するはずだったんです。レズビアンの結婚式として、復活祭ほど完ぺきな日って他にないから」
それでもブリーさんとリンジーさんは、一体いつ終息するか分からない状態で、結婚をいつまでも先延ばしにしたくはありませんでした。
ということで2人は……というよりむしろ、2人の式をプロデュースするウェディング・プランナーは、常識にとらわれずに考えることにしました。
「ウェディング・プランナーは、とんでもないアイデアを思いつきました。『ドライブインシアターで結婚したらどう?』って。『あなたたちにお似合いだと思うんだけど』って」
ドライブインシアターとは、車に乗ったまま映画鑑賞を楽しめる屋外型の映画館です。

残念ながら、地元のドライブインシアターは閉鎖中でした。しかし、オースティンのすぐ南に位置するテキサス州ビューダの近くにある、ドックス・ドライブインシアターは営業していました。
持ち帰り用の食べ物を提供しているため、生活に必要な店として、コロナウイルスのロックダウン(封鎖措置)中も営業が許可されていたのです。
ブリーさんによると、式についてドライブインシアターに聞いたところ「大歓迎」と返答があったそうです。

異例な状況の中、型破りな会場ではあるものの、2人の家族と友人は、練り直した結婚式にすぐに賛同しました。
「みんな口を揃えて、『ぴったりだね。ブリーとリンジーらしい』と言ってくれました」とリンジーさんは振り返ります。
紆余曲折を経て、記念すべき日となる4月28日がとうとうやってきました。
2人によると、ドライブインシアターの収容車両台数は90台でしたが、概算で85台ほどが参列していたそうです。参列者は式の間ずっと、各自の車内にとどまりました。

「着るものはパジャマでいいから、車を飾り付けるように頼みました。ストレート(異性愛者)の友達は、車に虹を付けて来てくれました」とリンジーさんは話します。
最初の結婚式でやろうと思っていたアイデアも、いくつか実行しました。
ビデオ・カメラマンに来てもらい、式の様子をドライブインシアターのスクリーンに映し出し、さらにはFacebook、Instagram、YouTubeでライブストリーミングするのを手伝ってもらいました。
おかげで、参列できなかった家族や友達も、結婚式に立ち会うことができました。

リンジーさんは双子の娘アナベルちゃんとオリビアちゃんに付き添われて、そしてブリーさんは妹に付き添われて、それぞれバージンロードを歩きました。
リンジーさんによると、「みんな6フィート(約1.8メートル)開けるというルールは守りましたよ」。
使用した備品はすべて消毒し、歌とポエムを披露したアナベルさんをはじめ、式でスピーチをしてくれた人には全員、自分専用のマイクを使ってもらいました。
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式の様子はYouTubeにも掲載されています。
当然ながら、すべてが通常の結婚式と同じというわけにはいきませんでした。
花嫁は2人とも、髪型のセットやメイク、ネイルを自分でする必要がありました。
着替えも「スターウォーズ」と「ハリーポッター」のテーマで飾りつけされた、ドライブインシアターの小さな部屋で準備しました。
ウェディングドレスは2人とも、別々に着ました。(「私がガードルに体を詰め込む姿なんて誰にも見せたくないから」とリンジーさん)。
もともと、ハイヒールに合わせてドレスの裾の長さを調整していました。しかしドライブインシアターの地面は砂利だったため、カウボーイブーツを履く必要がありました。結果、白いドレスの裾は埃の中で引きずるはめに。
さらに、明かりにたくさんの昆虫が集まってきて、リンジーさんのドレスにも1匹入り込んでしまいました。「カナブンにセクハラされた」とリンジーさんは笑います。
参列者は、クラクションやパッシング・ライトでハッピーな2人を祝福。中には、カウベルを鳴らす人もいました。
リンジーさんは、2009年にレズビアンだと公表するまで、キリスト教音楽業界で活躍するミュージシャンでした。式後、ブリーさんにオリジナルの曲を捧げました。
2人は、ディナーやウェディングケーキ、ブーケトスを諦めなくてはいけませんでしたが、それでもポップコーンとシャンパンをふるまうことはできました。ドライブインシアターのスタッフが、マスクと手袋をして提供してくれたのです。
ドライブインシアターでは映画『フライングハイ』を上演して参列者を楽しませてくれましたが、営業終了時間は厳しく守られていたため、午後11時には全員、会場を後にしました。
幸せな1日でしたが、ちょっぴり胸が痛くなる出来事も。
「両親をハグできなかったのは、つらかった」とリンジーさん。
「私はパパととっても仲良しなので、バージンロードをパパと一緒に歩き、父娘のダンスをするのをずっと夢見てきたんです。パパとママを車の中からエア・ハグするのは本当に、心からつらかったけど、少なくとも両親に参列してもらえたから」
ブリーさんの3歳半になる息子アトラスくんは、式に参列できませんでした。
アトラスくんの親権は共同親とブリーさんが一緒に持っているのですが、この共同親が、コロナウイルスへの懸念からアトラスくんは参列しない方がいいと判断したのです。
それでも2人は、思い付きで行った今回の結婚式について、想像以上だったと話します。
「想像していたよりずっと良かった。ああいう式ができて心から嬉しいです。私たちのモットーは、『腐り切ったレモンから、めちゃくちゃおいしいレモネードを作ろう』なんです」(訳注:『人生にレモン(苦難)があったら、それでレモネードを作ろう』ということわざで、逆境を前向きにとらえて乗り越えるという意味)
2人の元には、見知らぬ人から今もYouTubeやInstagramを通じてお祝いの言葉が届いているそうです。

リンジーさんはこう話します。
「これまでで一番、人との繋がりを感じたひと時でした。きっと切り離されたような感じになるだろうな、と思っていたのですが、私たちが会場を後にする時、参列者に手を振ることもできました」
「私たちが生きてきた中で、今は1番、人との物理的なつながりが断たれているときです。そんな中で、あれほどみんなの心が通い合い、つながり合えたと感じられたのは、夢のようでした」
リンジーさんとブリーさんはもともと、メキシコのトゥルムに10日間のハネムーンへ行く予定でした。かわりに、高級キャンピングカーの中で2日間の「ミニムーン」を過ごすことができました。
パンデミックが終わり、家族や友達と再び安全に集まれる時が来たら、「過去最大の大宴会」をしようと、今から計画を立てているそうです。
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この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan