佐川氏の証人喚問でわかったこと、わからなかったこと

    10のポイントにまとめた。

    3月27日、参議院予算員会で証人喚問に臨んだ佐川宣寿・前国税庁長官。

    安倍首相夫妻の関与や影響に関しては「一切ない」と否定を続けた一方で、文書改ざんについての詳しい経緯に関しては、刑事訴追を理由に証言拒否する姿勢を貫いた。

    この日、一体何が明らかになり、そして何が”明らかにならなかった”のか。

    明らかになったこと

    この日、佐川氏が明らかにしたのは、主に4つのポイントだ。ただ、これまでの答弁と被っているものも多い。

    1. 文書改ざんに、安倍晋三首相や官邸、昭恵夫人、麻生太郎財務相らの改ざんへの指示、関与、さらには影響はなかった
    2. 土地取引には、昭恵夫人が名誉校長だったということも、影響もなかった
    3. 決裁文書にあった「特例」とは、3年貸し付け後の売り払いが原則の国有地を、10年貸し付けで売り払う契約をしたことを指している
    4. 安倍首相の「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」という答弁は、佐川氏の答弁には影響を及ばさなかった

    そのほかにもこれまでの答弁どおり、土地取引は適正である、ということも何度も繰り返している。

    明らかにならなかったこと

    一方で佐川氏は「刑事訴追」を理由に計49回(BuzzFeed Newsがカウント)の証言拒否をしている。たとえば、それは以下のような内容だ。

    1. 改ざんの一切の経緯(誰の指示か、動機など)
    2. 改ざんを知っていたかどうか
    3. 自身が改ざんに関わっていたかどうか
    4. 改ざん前の時期は何を根拠に答弁をしたのか、答弁は虚偽だったのではないのか
    5. 改ざん前の文書を見たか、見ていないか
    6. 昭恵夫人の名前の記載を見ていたとしたら、どう感じたのか

    ここからもわかる通り、佐川氏は経緯などの証言は拒否する一方で、政治家らによるの改ざんの指示、関与、さらには影響について、はっきりと否定している。

    このコントラストは印象的だ。実際、野党からは「ダブルスタンダード」「都合に合わせて答弁拒否」などという批判も相次いだ。

    ただ、佐川氏は「個別案件の話を官房や官邸に報告することはない」「指示があったとすれば局長だった私に必ず報告が上がってくると思う」との一般論を持ち出して反論している。

    最後は司法の判断?

    佐川氏は証人喚問の間、「当時の担当理財局長として大変重い責任がある」「責任はひとえに私にございます」などとお詫びを繰り返したが、結局改ざんの経緯は何もわからなかった。

    実際、日本維新の会・丸山穂高議員の「国民は納得していると思うか、解明できていると思うか」という質問に、佐川氏自らもこう答えている。

    「どういう経緯で、誰が具体的に指示していたをお答えできておりませんので、その点については明らかになっていない。各委員にそういうお叱りを受けているとおり、ご満足できていないんだろうと思います」

    その答弁を聞いた丸山議員は、「(真相を)解明できてない、と思われているということですね」と確認。それに対し、佐川氏は「最後は司法の判断だと思う」と述べた。