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#MeToo と声をあげられなくても、あなたはベストを尽くしたのです

#MeTooの動きから1年、何が変わったのかを考えた。

性暴力被害の経験がある人たちが声をあげ、連帯する「#MeToo」の動きがハリウッドで起きてから1年あまり。 その間、何が変わったのか。11月3日、ハラスメントがない社会づくりを考えるイベントが東京都内であり、約70人が参加した。

セクハラを含むすべての暴力やハラスメントを許さない社会を作るためのプラットフォーム「#WeToo Japan」が主催した。BuzzFeed Japanは #WeToo Japan のメディアパートナーとなっており、客観的な立場からこの動きを報じている。イベントでは古田大輔・創刊編集長が、パネルディスカッションのモデレーターをつとめた。

何をすればいいかわからなかった

「#WeToo Japan」オーガナイザーの福原桃似花さんは2017年11月、Change.orgで署名キャンペーンをはじめたことが設立につながった、とあいさつ。

福原さんは2017年5月、伊藤詩織さんがレイプ事件で検察審査会に不服申し立てをしたときの記者会見を見て、何かできないかと、ひとりで署名活動を始めた。

「1年前は私自身、性暴力への怒りはあっても、何をすればいいのかわかりませんでした。あのときもっと頑張っていたら今の状況は変わっていたんじゃないかと思うときもあるけれど、1年前と今とを比べてみると、着実に変わっているとは感じています」

日本でも多くの声があがり、BuzzFeed Japanは2017年10月に、性暴力に関する国内外の情報を発信するキャンペーン「#metoo」を始めた。

法律が変わりはじめた

2017年7月、110年ぶりの刑法改正によって、性犯罪は厳罰化された。その際に署名活動などをしたちゃぶ台返し女子アクションの代表理事、大澤祥子さんはこう振り返る。

「暴行脅迫要件は残ったため、合意があったかどうかではなく、どれだけ抵抗したかが問われる状況は変わっていません。ただ、ハラスメントがすべての人に関わるものだということは認知されてきたと実感します」

財務省の前事務次官による女性記者へのセクハラ問題を受けて2018年5月1日に発足した、女性ジャーナリストたちによる「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)」の林美子さんは、「昨年は刑法が改正され、今年は男女雇用機会均等法の改正議論が進んでいます。セクハラをなくすために実効性のある法整備に向け、関心を持ってもらいたい」と話した。

マレーシア在住で、広告会社マッキャンエリクソンのプロジェクト「McCANN MILLENNIALS」の創設者の松坂俊さんは、性暴力被害者の心のケアをさまざまな手法で進めるプロジェクトに取り組んでおり、その動画を紹介。

「友人、妻、娘たちのことを思うと、男性にとっても他人事ではない。変えなければいけない。#MeTooで作り上げられた空気のうえで、動き出せています」

伊藤さんはスウェーデン、台湾、韓国などを取材した経験から、被害者を支援する法整備の必要性を訴えた。

声をあげることを強いるのではない

林さんは「メディアで働く女性ネットワーク」の会員の中でも、実名で声をあげられる人が少ない点について、「どんな圧力がくるかが容易に想像がつくからです。被害当事者はなおさら言えません」と語った。

「被害者に名乗り出ることを強いるのではなく、名乗り出た人を支えるような社会を目指したい。そんな社会なら、安心して名乗り出ることができるはずです」

ちゃぶ台返し女子アクションは大学などで性的同意について啓発する活動をしているが、就職活動に影響するのではないかと心配する学生もいる。

大澤さんも「性やジェンダーの問題がタブー視されていることと、そもそも声をあげることやアクティビズムに関わることへの圧力と、両方のハードルがあります」と指摘した。

伊藤さんは、顔を出して記者会見した2017年5月当時と比べ、メディアで性暴力が取り上げられるようになり、講演やイベントで話せるようになったと実感しているという。

「あのとき声をあげたのはそれしか方法がなかったからですが、公の場でこの話がオープンにできるようになったのは、大きく変わったということです」

サバイブしている途中

伊藤さんはこうも語った。

「表情が明るくなったと言われ、1年前にどんな表情をしていたのかと思い返しました。1年前は、ひとりで這いずり回らなければいけなかったけれど、一緒に動いてくれる人が増え、どんどん楽になってきました。それは#MeTooが生んでくれた連帯でした」

2018年のノーベル平和賞は、紛争下での女性への性暴力に関わっている2人に贈られた。伊藤さんはジャーナリストとして、シエラレオネなど世界各地の性暴力について取材を続けている。

「なぜ性暴力がここまで人の人生を変えてしまうのか、ずっと考えてきました。例えば、自分を家にたとえると、知らない間に誰かが勝手に入ってきて、自分のクローゼットや引き出しをぐちゃぐちゃにされて、朝起きたらそれまでどうやって生活していたのかわからなくなってしまう。どうやってコーヒーを入れていたのかさえわからなくなるようなことが起こるのです」

「土台が壊されるということは、本人だけでなく、家族やコミュニティの人たちをも苦しめることなんです。私は自分をサバイバーだと言ってきましたが、まだサバイブしている途中なのだと感じています」

すぐにできることは

会場からは、自分たちに日常的にできることは何か、という質問があった。

飲み会などでセクハラを目撃したときにさりげなく介入すること、自分ひとりで抱え込まず相談機関にアクセスすることなどがあげられた。

大澤さんは「個人が影響できる範囲は、会社、友達、コミュニティとそれぞれ違いますが、ひとりひとりに力があります」と訴えた。松坂さんは「いかに自分ごとにするかが大事」と、さまざまな発信方法を提案した。

財務省のセクハラ問題が起きたとき、「自分が声をあげなかったせいで、後輩たちが同じ目に遭ってしまった」という女性記者たちがいた。BuzzFeed Newsの取材に応じ、経験とともに後悔を語った人もいた。

「それでもその人は、当時は沈黙したことで生き延びたわけです」と林さん。

「自分を責めて後悔する気持ちはわかるけれど、あのとき自分は頑張ったのだと褒めてほしい。声をあげられなかったのは、自分が悪いわけではなく、声をあげられない構造があるからです」

伊藤さんは自身の経験から「あなたは悪くない、とよく声をかけられてきましたが、あの時、あなたの行動はベストだったと言われたことも力になりました。エンパワーする言葉をかけてほしい」と話した。

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