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「新型コロナはお湯で予防」デマに注意。あやしい情報の“共通点”とは

お湯を飲めば予防、太陽に当たると良いーー。「新型コロナウイルス対策の内容 、病院に勤めてる看護師さんから流れて来たの転送します」としてSNSなどを通じて拡散したこの情報は、なぜここまでの広がりを見せたのか?

感染が広がる新型コロナウイルスをめぐり、「耐熱性がなく、26-27度のお湯をたくさん飲めば、予防できる」という情報が拡散した。

温度については、「36-37度」や「56度」のバージョンもあった。「太陽に当たるとよい」という情報もあった。LINE上などで「チェーンメール」のように広がっているとみられる。

これは「誤り」だ。専門家も「エビデンスは全くない、民間信仰」という。いったいなぜ、そんな情報が拡散したのか。

拡散しているのは、研究者などを名乗る文章だ。いくつかのパターンがあるが、BuzzFeed Newsの複数の記者にも以下のような内容が回ってきた。

今回のウイルスは、熱に、弱いそうです。冷たい飲み物は、厳禁です。 いつも、温かい飲み物、ぬるま湯をもちあるいてください。

研究所からです。武漢研究所に派遣されるクァク·グヨンの米国友人の文です。 必ずたくさん伝達してください。

今回に武漢ウイルスは耐熱性がなく、26-27度の温度で死にます。そのため、お湯をたくさん飲む。 お湯を飲のば、予防できる。

陽射しの下に行ってください。 冷たい水、特に氷水を飲まないでください。 お湯を飲むことはすべてのウイルスに効果的です。ぜひ覚えてください。

文章は外国語を機械翻訳したような内容だが、「コロナウイルス対策の内容 、病院に勤めてる看護師さんから流れて来たの転送します」などという言葉が付記されているため、情報はチェーンメールのような形で広がっていた。

温度に関しては、「26-27度」以外にも「36-37度」「56度」という情報もあった。

さらに同様の情報はYouTubeやTwitter、FacebookなどのSNSでも拡散。検索キーワードを先回りして情報を切り貼りし、広告収入を稼ぐ「トレンドブログ」にも大量に掲載。著名人のブログやラジオでも発信されていることから、信じてしまう人も少なくなかったとみられる。

なお、「26-27度のお湯を飲むと予防できる」という同様の情報は2月上旬に台湾のFacebook上でも広がっていた。この時も、医療関係者を騙る内容だったという共通点がある。この際はFacebookを介して広がりを見せていたようだ。

ウイルスは熱には弱い、でも…

BuzzFeed Newsは、感染症のスペシャリストで、2009年の新型インフルエンザ発生時には国の対策を検討する委員会の副委員長も務めた川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんに話を聞いた。

このチェーンメールが自身の友人や家族の友人にも流れてきており、相談も受けていたという岡部さんはこう語った。

「ウイルスは一般に熱には弱いので、煮沸などで十分ウイルスを不活化できることはあります。26-27度では活性は低下しますが、失活はしません」

「36-37度はウイルスにとってはいいコンディションです。56度で失活します。お湯を飲んでも、呼吸器で増えるウイルスは飲んだお湯は鼻の中には届かずあまり意味はないと思います」

では、56度のお湯を飲めば、少なくとも喉の中のウイルスは失活するということなのだろうかーー?

「確実にするには、56度で30分。お湯をのどにとどめておかなくてはいけませんね」

一方、「太陽に当たる」という情報に関しても岡部さんはこう指摘する。

「太陽(紫外線)は確かにウイルスを失活させますが、これものどを大きく開けて陽にしばらくあたってないといけません。しかし、細胞の中に入ったウイルスまでは届かないでしょう」

「お湯を飲むこと、日に当たることは別に悪いことではないので、危険であるということはないのでやってみて気持ちがおさまるならいいでしょう。ただし、これでOKというエビデンスは全くなく、民間信仰と言ってよいと思います」

「権威づけ」と「善意」に注意

実際にこのメッセージを受け取った都内の50代女性は、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

「看護師とか武漢に派遣された専門家が出てきたり、同時期に2人の友人から送られてきたりすると、そんな訳ないとわかっていながら、まことしやかで信じてしまいそうでした」

今回のデマの特徴は、まさに「病院に勤めている看護師」「武漢研究所に派遣されている人物の友人」などという「情報源」が記されていたころや、チェーンメールとして親しい友人や家族を介して伝わってくることにある。

噂にはこうした「権威づけ」や「又聞き」が伴うことが多い。噂の専門家である中央大教授の松田美佐さんは、BuzzFeed Newsの以前の取材(2019年3月)にこう語っている。

「役人や社長から聞いた、マスコミの知り合いが言っていた……など。もしくは親しいネットワークを強調することもありますね。友達が言っていた、などもその典型です」

逆にいえば、そうしたデマを見抜くひとつの要素でもあると言える。さらに拡散の多くは「善意」によって引き起こされていることにも注意が必要だ。松田さんは当時の取材で、こうも語っていた。

「善意が必ずしも良い結果をもたらさない。事態をより混乱させたり、社会を不安にさせたり、誰かを傷つけるおそれだってある。そういう『善意の恐ろしさ』を、忘れないようにしてほしい」

新型コロナウイルスをめぐっては、大量のデマや真偽不明の情報が拡散しており、WHOも「パンデミック(感染症の爆発的な流行)」ならぬ「インフォデミック」だとして警鐘を鳴らしている。


新型コロナウイルスをめぐる厚生労働省のQ&Aサイトはこちらから。世界中で広がる「あやしい情報」のファクトチェック一覧はNPO法人「ファクト・チェック・イニシアチブ」(FIJ)の特設サイトで見ることができる。

また、BuzzFeed Newsでも新型コロナウイルス関連のコンテンツを配信しています。一覧はこちらから。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

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  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。

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