「余白から生まれる爆発力」水溜りボンドが6年続けたYouTubeの毎日投稿をやめた理由。
毎日投稿の終了、YouTube界のNHK、今のYouTubeについてーー2020年いっぱいで6年間にわたる動画の毎日投稿を終えた水溜りボンドさんに取材しました。
大学時代の同級生で結成されたコンビYouTuber「水溜りボンド」。YouTubeのチャンネル登録者数は400万人を超え、最近ではラジオ番組「オールナイトニッポン0(ZERO)」、AbemaTV「水溜りボンドの青春動画荘」など、YouTube以外にも活躍の場を広げている。
そんな彼らは、6年間続けていた動画の毎日投稿を昨年いっぱいでやめた。「毎日投稿」は、水溜りボンドの代名詞とも言えるほどの代表的なポイントだ。
継続することよりも、やめることのほうが難しかったという毎日投稿。
一体、どうしてやめたのか。水溜りボンドの2人に聞いた。
近すぎるが故に生じた現象

ーー2020年いっぱいで、2015年から6年間続いた「毎日投稿」を終了しました。改めて理由を教えて下さい。
カンタ:もともと「毎日投稿」をやりたいからやっていたわけじゃなくて、僕ら2人だったら面白い動画が作れるよね、ということで活動していました。
そこに立ち返ったら必ずしも毎日投稿する必要はないよね、という話をして。
ーー毎日投稿の中では作れない動画、もっと時間をかけて動画を作りたい気持ちが湧いてきた。
トミー:今のYouTubeの流れとか自分たちが今後やっていきたいことを考えたときに、1つの動画を作るサイクルが24時間じゃないほうがいいんじゃないか、ということに近いですね。だから休みたい!ってわけではなかったです。
ーーYouTubeの流れはどのように見られてたんですか。
トミー:そもそも水溜りボンド以外はほぼ毎日投稿してないですし、他のグループが3日間かけて作った動画と僕らが1日で作った動画が比べられちゃう。
それはあんまりよくないのかなぁという感じがしました。
カンタ:まさしくそういう話し合いを2人でしました。僕らってこの6年間、本当にずっと一緒にいてYouTubeしかしてないんで、普段から同じような話ばっかりするようになっていったんですよね。
トミーに「昨日こういうことがあってさ〜」って話しても、昨日もずっと一緒にいたので知ってるという(笑)。本当はお互いにそれぞれの考え方とか人生があるはずなんですよね。ずっと一緒にいると、「そんなことあるわけねーじゃん」みたいな会話が生まれないんですね。
特にラジオをやらせてもらってから感じるようになりました。
ーー近すぎるが故にお互いの情報を知り尽くしている。
カンタ:本当に起きて企画考えて、撮影して編集してっていうYouTubeしかやってなかったんで。テレビやイベントがあるときも一緒ですし、映画観る時間とかもあまりなかったよね?
トミー:そうだね。YouTubeに全部映し出されてるんで、お互いに余白がないという弱みみたいなことは感じていましたね。1人で何かをする時間もなかなか取れなかったです。
余白から生まれる爆発力みたいなものは存在すると思うんですよね。そこがなかったのは、毎日投稿をやめる理由の1つだったと思います。
カンタ:なんかふとどこかに行ったときにアイディアが湧いて、それが仕事に良い影響を及ぼすこともあると思うんですよね。
なので週2で休んだらどうなるんだろうとか、その分、動画のクオリティが上がったらもっと喜んでもらえるかもしれないし、自分たちのためにもなります。
わかんないですけどね。僕らもやったことがないので、今は感じたことをどんどん反映させてる段階ですね。
毎日投稿をやめて変わったこと、YouTube界のNHKについて
YouTubeでこの動画を見る
ーー毎日投稿をやめられてから、なにか変化はありましたか。
トミー:犬飼いましたね。
カンタ:毎日投稿やってる時はなかなか飼えなかったもんね。
トミー:飼えなかった。散歩しながら考える時間ができたり、大きい企画を動かすことに時間が使えたり。思考や視野の幅が広がったような気はしますね。
カンタ:僕は地元の友達に会ったりするようになりました。今までの6年とか7年は、友達に会ってインプットしたこともすぐに動画でアウトプットするぐらいの状態でした。
でも、最近はそれをちゃんと蓄えられるようになりました。毎日投稿で培ってきたことと、犬と過ごすような日常生活から湧いてきたことを動画に落とし込んで世の中に発信できたら、より自分たちらしい動画が作れるようになるんじゃないかっていうのは考えますね。
YouTubeでこの動画を見る
ーー水溜りボンドさんの動画って、親と一緒でも観られる安心できる内容が多いことから「YouTube界のNHK」と表現されることもありますよね。
カンタ:そんなつもりはなかったですね、正直(笑)。まぁでも、僕の志向が若干強いのかなとは思います。人を傷つけるのは好きじゃないですし、下ネタとかも苦手だなって思うし、そういう感じでやっていたら、いつの間にかそう言われるようになっていました。
意外と逸脱してる動画もいっぱいありますからね。普通に考えて、罰ゲームで南極行ったりしないと思うんですよね(笑)。僕らの意識としては自由にやってるつもりではありますね。
トミー:僕はそういう人間だったことは1秒もないんで(笑)。カンタの編集のおかげでキレイに見えてるんだと思います。僕がNHKなんて言われる日がくるなんて、地元の友達が知ったら「嘘じゃん!」って言われると思います(笑)。
いまのYouTubeは総合格闘技

ーー先ほどYouTubeの流れのお話がでました。新型コロナウイルスの影響もあって、特にここ1年で急激に変化したと思います。お二人はYouTube全体の状況をどう見られていますか。
カンタ:なんか試されてるタイミングなのかなって思いますね。少し前までは、まだYouTuberを知らない人にたくさん知ってもらって、みんなでYouTubeを盛り上げていこうみたいな時代だったと思います。
今はもうある程度の人がYouTubeを観ていると思うので、そこを分け合っていくようになるというか。
トミー:僕は前から総合格闘技みたいになっていくとは考えていました。
純粋にYouTubeをやっている人だけの世界に、テレビの番組を作るプロとか芸人さんとか違う世界のプロが入ってきて、総合格闘技に近い状態。そこでふるいにかけられる時代がくるんじゃないかなとは思ってたんですけど、それがコロナによって早まった印象ですね。
僕はその場がYouTubeじゃない別のメディアになる可能性もあると思っていて。その意味では自分たちのホームグラウンドであるYouTubeになってよかったです。
ルール内だったらどんな技を使っても、なんでもやっていいぞみたいな。

ーーポジティブに捉えられていますか。
トミー:ポジティブな面もあると思います。僕らのような「YouTuber」と呼ばれる人のバブルは弾けたのかなと思いつつ、芸能人の最初の勢いも一旦落ち着き出してるのかなと。
で、本当にYouTubeに向いていた人が今も残ってる。たくさんのチャンネルがある中で、そこでもう一回ふるいにかけられて選抜されるタイミングが今なのかなと。
ーーその状況で水溜りボンドはどう活動されていくんですか。
カンタ:僕は変わらないのかなって思いますね。僕らを応援してくれてる人が「よかったね」って言ってくれるようなことを2人でやっていきたいなって思います。
トミー:変わらず2人でやりたいと思った企画をやっていく感じですね。逆に変に自分たちを変えて、売れることを意識すると多分苦しくなるんで。
昔と比べてこれからはもっとYouTubeがやりやすい時代になりそうだとも思います。
昔だったらYouTubeを観てるのは小学生が多いなんて言われてたんですけど、今はバイクとか釣り、キャンプ、格闘技もそうですし大人が好きなコンテンツもたくさんある。YouTubeに上の年代の人が観にきてるってことじゃないですか。
今後、自分たちも歳を重ねてそういうことがやりたくなったときでも、ちゃんと需要がついてくる可能性がある状態だと思うんですよね。
YouTubeをこれからも続けていくという意味では楽しそうな時代になりそうですし、素直に自分たちがやりたいことをやっていきたいと思います。

<水溜りボンド>
カンタとトミーによる二人組の動画クリエイター。ドッキリ、実験、検証、都市伝説、料理など、視聴者の皆さんに楽しんでいただけるように、2015年から2020年まで、一日も欠かさず毎日動画を投稿してきた。視聴者とのコミュニケーションを大事にし、ジャンルにこだわらず、限界を定めず、自然体でつくりあげていくスタイルの二人から、さまざまな"波形"が日々生まれている。
レギュラーラジオ番組「オールナイトニッポン0(ZERO)」のメモリアルBOOK「水溜り本―水溜りボンドのオールナイトニッポン0(ZERO)深夜のアミーゴ―」(扶桑社ムック)が発売中。
■YouTubeチャンネル