自然体にこだわるYouTubeチャンネル「釣りよか」を変えた"視聴者の慣れ"と覚悟

    <インタビュー後編>釣りと料理をテーマにした『釣りよかでしょう。』のよーらいさんが語った「グループだからこその魅力や苦労」。そして、分岐点。

    釣りと料理を題材に、芸能人をはじめ幅広い層から支持される YouTubeチャンネル『釣りよかでしょう。』。

    メンバーは釣り好きな男性7人。そのリーダーであるよーらいさん(36)はこのチャンネルを立ち上げる時、1人で活動するのではなく、あえてグループを選んだ。

    その理由を「僕、嘘くさくなるのが嫌なんですよ。大嫌いなんです」とBuzzFeedに話す。どういう意味なのだろうか。

    グループだからこその魅力や苦労、そして、よーらいさんがYouTuberとして立った分岐点と、目指す先について聞いた。

    佐賀県を拠点にする『釣りよかでしょう。』は、「大自然で遊ぶ」をコンセプトに活動するチャンネルだ。

    九州を中心とした釣りや料理だけでなく、山菜採りやクワガタ採りなどをする様子を動画を配信し、都会にはない生活の魅力を伝える。

    登録者数は125万人以上(6月1日現在)で、芸能界のファンも多く、コラボした動画も数多く配信している。

    グループだからこその「嘘くささ」のなさ

    よーらいさんは、ニコニコ動画で数々の動画を投稿して人気を集めていた。

    視聴者に楽しんでもらう魅力的なコンテンツを継続して作り続けるため、収益を得られるYouTubeに移行したのは2014年10月のことだ。

    こうして、釣り経験がないよーらいさんを含む2人と、釣り経験者の1人の3人による「釣りよかでしょう。」が誕生した。

    しかし、収益だけを考えれば、1人で活動した方が有利だ。なぜそれを選ばなかったのか。

    「うーん、1人でやれと言われたら、成功する自信はあるんですけど、楽しくなさそうだな、と。最低2人でやりたかったですね。人数多い方が楽しいじゃないですか。人が大勢いる環境が好きなんですよ」

    「釣りに1人で行って喜怒哀楽の感情を出しても、単なる変なやつじゃないですか。そんな声に出して喜ぶかなって思ってしまうんです。僕は嘘くさくなるのが嫌いなので、1人でやるならば釣りというジャンルは選ばず、他の道を探していたと思います」

    かつて動画の視聴者だったメンバーらが加わり、いまは7人体制となった。みんなで心から自然を楽しむからこそ、映像から「嘘くささ」が消えるのだ。

    重視する「自然体」

    『釣りよかでしょう。』が配信する動画は、メンバー全員の「自然体」が大きな魅力の一つとなっている。

    魚が釣れればはしゃいで喜び、魚が逃げれば悔しがる。

    その場には、動画を撮影するカメラがあるだけだ。カメラを通じてグループで釣りを楽しむ男性たちのありのままの姿と、それぞれの個性が見える。

    「楽しそう」。釣りを趣味としない視聴者でも、そう思うはずだ。だから世代を問わず惹きつけるのかもしれない。

    「撮影中でいうと、僕は何も考えていないです。多分、ほとんどのメンバーもそうだと思います。たまに格好つけてるメンバーもいますけどね(笑)」

    なぜ、作り込まない自然体であることを重視するのか。

    「ニコニコ動画をやっているときは、おもしろいことを言えるって変な自信があったんですけど、今考えると全然おもしろくない」

    「それより、お笑い芸人さんの方がはるかにおもしろいじゃないですか。そこを求めたら終わるなと思ったんです」

    「僕は芸人さんが大好きで、その中でどんな人が好きだろうと考えれば、喜怒哀楽が激しい人なんですよ。例えば出川哲朗さん。素直なリアクションをする人が、人気であり続けているのかなと思うんです」

    だから、無理して「おもしろいこと」を考えず、自然体のままでいる。

    とはいえ、目の前にカメラがあり、視聴者がその先にいる。

    そのため、「普段より喜怒哀楽をちょっと多めに出す」。そして釣りは実際に楽しく、魚に逃げられれば誰でも悔しい。しばしばカメラを忘れるほど、喜怒哀楽は自然と豊かに出てくるという。

    よーらいさんは、芸能界の人が観ても「純粋に楽しんでいるな」と思ってもらえる理由は、そこにあるのではないかと分析する。

    グループならでは苦労も

    一方、グループで活動するがゆえに苦労することは多いという。

    一緒に活動しているからといって全員の価値観が同じなわけではない。それぞれに個性がある。だからケンカすることもあるし、問題が起きることだってある。

    「どんなグループ系のYouTuberに聞いても、『みんな仲良し』と言うと思うんですけど、そんなの絶対に無理です。どんな組織でも同じだと思います」

    「だから、うちは全員仲良しとは言いません。だって、気持ち悪いじゃないですか。いつも仲良しでいられるわけがないじゃないですか。これだけの人数がいたら」

    「でも、揉め事を含めて『青春』だと思うんです」

    一時的に仲違いすることはあっても、分裂するようなことにはならない。「仕事」という大きな絆で結ばれているからだ。

    「単なる友だち同士なら、嫌になったら離れていく。でも、『仕事』という縛りやルールがあるから離れないし、問題が解決すれば前よりも仲良くなれるのではないかと」

    仕事だからこそ、プライベートの友人とは違った結束が生まれ、絆が深まる。「良いですね」と投げかけると、すぐにこう返ってきた。

    「良いと思います。すごく良い関係だと思います」

    YouTuberとして立った分岐点

    さまざまなことがあるなか、切磋琢磨して動画制作に励む彼らにはYouTuberとしての分岐点があった。

    2017年に、100キロ級のクロマグロを釣った時のことだ。

    「僕たちは『もっと、もっと』を求めて、狙う魚のサイズを上げていく時期があった」と振り返る。

    「それってどんどん無理をして過激になり、あとに引けなくなって炎上してしまう人と似てると思うんです」

    なぜサイズを求めたのか。

    より大きな魚を釣れば釣るほど、動画の再生数が伸びたからだ。視聴者も釣果に慣れ、「もっと」を求めるのだという。

    「例えば堤防からブリを釣っても、もう視聴者が驚かなくなったんです。これは危険だなと思いました」

    より大きな魚を釣りたいとの気持ちも、もちろんあったという。しかし、クロマグロを釣った時点で踏みとどまった。

    そこで立ち止まって考え、選択したのが「原点回帰」だった。

    「自分たちの良さは、魚のサイズや種類で勝負することではない。近所の用水路でワカサギを網ですくったり、サワガニを捕まえたり、山菜を取ったり、自然を楽しめること自体が、持ち味なんじゃないかと思ったんです」

    「それで、方向転換しました」

    すると、再生数は一時、大きく落ち込み、ピークの半分くらいになった。それでも粘った。

    「サムネイルやタイトルで視聴者を集められないけれど、内容で勝負してクオリティの高い動画を作ったら、視聴者がついてきてくれて、いずれ逆転するんじゃないかと思いました。その方向でめっちゃ頑張ったら、ようやく最近、上向きになってくれました」

    「もしクロマグロを釣った後も、『より上を』と続けていたら、チャンネル登録者数が100万人を超えていても、10万回再生を切るようなチャンネルになっていたかもしれません」

    世界一になりたい

    「僕、何をやるにしても世界一になりたいんですよ」

    よーらいさんは言う。自身を「完璧主義者かもしれない」とも。

    完成した動画を見直した時、「気持ち悪さ」があれば迷わずカットする。コンテンツにこだわるのは、視聴者にこう思ってほしいからだという。 

    「完璧な動画を作りたいという思いがあるんです。視聴者がスキップボタンを押す瞬間を極力減らしたいんです。ちょっとでも気が抜けたり、他のものに目を向けたりする瞬間を作りたくなくて。ずっと画面を見ててほしいんです」

    2019年に入り、中古の一戸建てを購入した。敷地は約400坪と、驚くほど広い。

    それを活かした畑作業やDIYなど、コンテンツの幅はすでに広がりを見せている。「やりたいことだらけで、夢一杯です」と笑顔になると、最後に力強くこう言った。

    「今、楽しいですね。もちろん辛いこともたくさんありますけどね。でも、辛いことがいっぱいあるからこそ喜べるものもあるので、全部ひっくるめて楽しいです」