イングランドで開催された50マイル(約80キロ)のウルトラマラソンで3位に入賞した女性ランナーが、レース途中で車に乗っていたことが発覚した。英陸上競技連盟(UKA)は、1年の出場停止処分を科した。
ザクルシェフスキー選手は、スコットランド出身の47歳。大会出場歴・入賞歴の多い熟練ランナーだ。今年2月には、48時間で255マイル(411.5キロメートル)を走るという世界記録を樹立した(記録はその後、別選手が更新している)。
レースがあったのは4月7日、マンチェスターからリバプールまでのコースだった。中間地点あたりでコースに迷い、痛み始めた足を引きずるようになったと、ザクルシェフスキー選手はBBCに語った。
コース脇で友人を見かけ、友人の車に乗せてもらい次のチェックポイントに移動した。そこで、レースを棄権するとスタッフに告げたという。
「『ここでやめたら自分を嫌いになるよ』と言われ、競技を続行することにしました」
「前を走るランナーがいても、邪魔をしたくなかったので、追い越さないようにしていました」
そのままゴールすると、メダルと3位のトロフィーが授与された。レース前夜に、居住地のオーストラリアから到着したザクルシェフスキー選手は「疲労と時差ぼけ」で頭が真っ白になっており「トロフィーを受け取ったのは大きな間違いだった」と述べた。
車で移動したのは、2.5マイル(約4キロメートル)。ザクルシェフスキー選手はその区間を1マイル(約1.6キロメートル)1分40秒というありえないタイムで走っており、データから不正を疑った運営が調査し、ことの経緯が明らかになった。
ザクルシェフスキー選手はスタッフの関与を語ったが、実際にどのような会話があったか定かではない。記録にならずとも非公式で完走するよう勧められたというが、UKAの第三者委員会による報告書には、スタッフは車について聞かされていなかったと書いてある。
レースを主催するウェイン・ドリンクウォーター氏は、次のように指摘している。
「大会終了後、ザクルシェフスキー選手は私たちに何も知らせませんでした。(発覚するまでの)1週間で、結果を訂正したり、トロフィーを返却したりできたはずです」
UKAの報告書によるとザクルシェフスキー選手は1年間、UKAの管轄する大会への出場、英代表選手への選抜、コーチや審判、マネジャー業務も禁止される。通常の処分では2年だが、情状酌量で1年に軽減されたとニューヨーク・タイムズが報じた。
ザクルシェフスキー選手は不正を認めつつ、降車してから正式な参加者として走っていなかった点をスタッフに明確に伝えるべきだったと後悔を口にした。
ソーシャルメディアでは、ザクルシェフスキー選手に対する誹謗中傷や、より厳しい罰を求める声が見られ、動揺しているという。
「私は愚かでした。メル(・サイクス選手)に謝りたい。悪意があったわけではなく、ミスコミュニケーションの結果でした」