メキシコでトランスジェンダーの殺害事件が相次いでおり、今年に入ってから少なくとも4人が死亡したとみられている。
昨年11月、判事として初めてノンバイナリーを公表した国内有数のLGBTQ活動家、ヘスス・オシエル・バエナ・サウセド氏が遺体で発見されたこともあり、LGBTQコミュニティの抗議活動が広がっている。
1月11日、トランスジェンダー女性のミリアム・ノエミ・リオス氏が銃撃され死亡した。リオス氏はメキシコのミチョアカン州で政党「Movimiento Ciudadano」を率い、LGBTQの権利活動をしていた。
1月14日には、メキシコシティ南部のソチミルコで、トランスジェンダーの権利活動家で上院議員候補でもあったサマンサ・カロリーナ・ゴメス・フォンセカ氏が、車の中で撃たれ、死亡した。
刑務所で受刑者と面会した帰りの出来事だった。フォンセカ氏は、頻繁に刑務所でワークショップを開くなどし、受刑者を支援していたという。
メキシコシティ司法長官事務所(FGJ)は、事件が「フェミサイド(女性であることを理由に殺害すること)」の可能性があるとみて捜査している。
AP通信によると、ほかの2件は当局から即時的な発表がないものの、LGBTに対するヘイトクライム全国監視センター(the National Observatory of Hate Crimes against LGBT)や権利団体Letra S.が記録している。
ベラクルス州で 「イボンヌ」と呼ばれるトランスジェンダーの女性がパートナーとともに殺害され、イダルゴ州でもトランスジェンダーのギャビー・オルティス氏の遺体が道端で発見された。そばにあった段ボールには「脅迫的なメッセージ」が書かれていたという。
「『マッチョ』文化と宗教色の強いメキシコで、ゲイやトランスジェンダーの人々が定期的に攻撃され、殺されている。一部の残忍な襲撃は、クィアの人々を社会に歓迎しないというメッセージを発信している」とAP通信は報じている。
組織ぐるみの犯罪や政府・警察の汚職が横行しているメキシコでは、国内の犯罪の99%が未解決のまま終わる。
一連の事件はトランスジェンダーに対するヘイトクライムだと当局は認定していないが、LGBTQコミュニティーは事件の捜査遂行と正義を望んでいる。