9月23日、ニューヨークで開催された国連気候行動サミットにグレタ・トゥーンベリが登壇した。

スウェーデン出身、16歳のグレタは、1年前にたった1人である運動を始めた。名前は「Fridays For Future」。
気候変動への緊急対策を求め、毎週金曜日に学校を休み国会議事堂の前に座り込んだ。
現在、この運動は世界中の若者へと広がり、金曜に学校へ行く代わりにデモに参加する学生が増え続けている。
世界中の若者を巻き込んだストライキ運動を率いた高校生は、スピーチで "How dare you!"(よくもそんなことを!)という表現を繰り返し用いて、各国の首脳らに温暖化対策の行動に出るよう強く訴えた。
以下、スピーチ全文。

全てが間違っています。
本来なら私は海の向こう側で、学校にいるべきなのです。それなのにまだ、あなたたちは私たちの元に来ている。若者に希望を見出そうと。
よく、そんなことができますね。
あなたたちは空っぽなことばで、私の夢を、私の子ども時代を奪ったのです。
それでも、私は幸運な者の1人です。人々は苦しんでいます。人々は死んでいます。生態系全体が崩壊しています。
私たちは、まさに大量絶滅の始まりにさしかかっているのです。
そしてあなたたちが語り合うのは、お金や、途絶えることのない経済成長のおとぎ話だけ。
よく、そんなことができますね。
30年以上前から、科学がもたらす答えはとても明確でした。よく、見ないふりをし続けて、ここで「十分やっている」と言えますね。必要とされる政策や解決策の目処すら立っていないのに。
あなたたちは言います。私たちの声は聞こえている、緊急性を理解していると。しかし、どんなに私が悲しくても、怒っていても、それを信じたくはないのです。
もしあなたたちが本当に事態を把握していながら行動に移さないのであれば、それは邪悪でしかありません。だから、私は信じません。
今後10年で(温室効果ガスの)放出を半分に減らす案がありますが、それでも気温が1.5度下がる可能性は50%しかありません。人間の手中にはおさまらないような、決して後戻りのできない連鎖反応が起きるリスクがあります。
きっとあなたたちにとって、50%という数字は受け入れられるものなのかもしれません。
しかしこの数字には含まれていないことがあります。
「ティッピング・ポイント」(氷床や熱帯雨林の現象など、地球の気候を構成する要素に急激な変化が生じる転換点)や、「フィードバック効果」の連鎖(温暖化によって生じる現象が新たな温暖化を引き起こすこと)、有害大気汚染に隠されたさらなる温暖化、「気候正義」や「気候の公平性」の問題(少数の国・人々がエネルギーを大量消費して温暖化を進める一方で、多くの貧しい国・人々がその被害を被っており、その不公平さを正すべきだという考え)についてなどです。
加えてこの数字は、私たちや私たちの子どもの世代が、何千億トンもの二酸化炭素を空気中から吸収してくれるだろうという予測に頼っています。その技術は存在すらしていません。
こうなると、50%という数字は、私たちにとっては受け入れ難いものになります。その結果と生きていくのは、私たちなのですから。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が出した最高値を見ても、地球全体の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は67%です。とすると、2018年1月1日に遡っても、世界が放出できる二酸化炭素量はあと420ギガトンです。
今日ではその値があと350ギガトンまで減っています。
それなのによく、この問題が解決できるかのようなふりができますね。変わりばえのないやり方で、技術に頼って。
今の放出レベルでは、8年半以内に二酸化炭素の許容放出量を超えてしまいます。この値に沿った解決策や計画は、未だ提示されていません。
なぜなら、この値はあなたたちにとって不都合すぎるからです。あなたたちが未熟なゆえ、現状をありのままには伝えられないのです。
あなたたちは、私たちを失望させています。しかし、若者たちはその裏切りに気づきつつあります。未来の世代の目は、全てあなたたちに向けられているのです。
それでもなお私たちを裏切る選択をするのであれば、言わせてください。
「私たちは決してあなたたちを許しません」。今、ここで、線を引きます。
世界は目を覚まし始めています。変化も訪れ始めています。たとえあなたたちが気に入ろうと、なかろうと。
国連で気候危機を強く訴えた16歳の活動家、グレタ・トゥーンベリさん。 「人々は苦しんでいます。人々が死んでいます。生態系が崩壊しつつあります。私たちは大量絶滅の始まりにいるのです」 「それなのに、あなたたちが話すのはお金や永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よくもそんなことを」
グレタの力強いスピーチは、気候サミットに出席した多くの政治家の胸に響いたようだ。
ナイジェリアのムハンマド・アブバカル環境大臣は「彼女の主張にとても感動した。彼女が述べたこと全てに賛成だ」とBuzzFeed Newsに語り、「世界中で起きているストライキは、今後起こることのテストでしかない。もし何も手が打たれなければ、もっと大きな運動が起きるかもしれない」と続けた。
バルセロナ市長のアダ・クラウ氏は「彼女のことばと、ここまでの経緯はとても力強いものだ」と話し、少年や少女が「本当の大人の前で、大人らしく振舞わなければならない」という現状に難色を示した。
スピーチのあと、グレタは国連のロビーで到着したばかりのトランプ大統領と鉢合わせた。彼女が向けたた厳しい視線を、報道陣のカメラは捉えていた。
Sommet de l'ONU: Greta Thunberg croise Donald Trump...et son regard en dit long
2人が言葉を交わすことはなかったが、この一瞬の共演はツイッターで拡散された。
A video is worth a thousand words
「この映像、何千ものことばに値する」
ホワイトハウスの報告によると、トランプ大統領はわずか14分しか気候サミットに出席せず、公式な発言もなかった。
アメリカと並び二酸化炭素を多く放出している中国も新たな目標は掲げていない。
しかし、Climate Home Newsによると、その他の国は解決に向けて一歩踏み出した。
ロシア政府は、ついにパリ協定を批准すると発表。批准手続きに進む最後の国となった。スロバキアのズザナ・チャプトバ大統領は炭鉱開発への補助金の給付を2023年に終わらせると宣言した。ドイツのメルケル首相も、2038年までに石炭火力発電での電力供給を段階的に廃止すると述べた。
一方、日本の小泉大臣は「京都議定書」に触れながら「我々は強いアクションも、十分なリーダーシップも取っていなかった」と言及。
共同通信によると「私たちは今日から変わる。私たちの都市、国、世界の脱炭素化を一緒に達成したい」とも述べたという。また、記者会見では「気候変動問題にはセクシーに取り組まないといけない」とも発言し波紋を呼んだ。
他にも60カ国以上が、2050年までの実質排出ゼロ(ネットゼロエミッション)を達成すると誓約している。
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子
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