手に乗車券を埋め込んだ彼は自称「サイボーグ」 法律が技術へ追いついていないと問題提起を行なった

    昨年、この男性はピアスの穴あけ業者に依頼し、乗車券のチップを自分の手に挿入させた。

    シドニー在住の男性の弁護士は、この男性は乗車券なしに電車に乗車したからといって、有罪判決を受けるべきではないと主張する。

    その理由はこの男性が「法律に先行している」というもの。依頼人の男性は自称「サイボーグ」。自分の手に電車の乗車券のチップを埋め込んでいるのだ。

    しかし、地方裁判所の判事はこのバイオハッキング(医療技術や電子技術などと身体、生体の組み合わせを駆使してシステムを操ること)の議論につながる弁護側の主張を認めなかった。

    そしてすべての人は現時点での法律を遵守しなければならないと話し、男性に有罪判決と220ドルの罰金を言い渡した。

    ミャオ=ルド・ディスコ・ガンマ・ミャオミャオ氏(33)はシドニーのニュータウン地方裁判所に3月上旬に出頭した。起訴内容は、有効な乗車券を持たずに乗車し、検札時に乗車券を見せることができなかったというものだ。ミャオミャオ氏はその罪については認めている。

    「ミャオミャオ氏は、自己確認型のバイオハッカーなのです。彼は自身をしばしば『サイボーグ』と表現します。機械を埋め込んだり、機械の構成要素を持つ人という意味です」と弁護士のミコラス・ブロードベンド氏はマーガレット・クイン判事に伝えた。

    2017年4月、ミャオミャオ氏はチャージ式IC乗車券オパール・カードの未登録のチップを、ピアスの穴あけ業者に依頼して自身の手に埋め込んだ。この結果、彼は単に手をカードリーダーにかざすだけで電車に乗り降りすることが可能になった。

    しかし、2017年8月、14.07ドル分のチャージがあるそのチップでカードリーダーをタップして電車に乗車したとき、係員によって止められた。そして、有効な乗車券なしで乗車したとして罰金のチケットを渡されたのだ。

    弁護士のブロードベンド氏は裁判所で「少なくとも電車賃を払うつもりはありました」と話した。ミャオミャオ氏の手のチップには目的地までの支払いに十分な金額がチャージされていたという主張だ。

    ブロードベンド氏は、「オパール・カードのチップを自分自身に埋め込む」ということが一部の人にとっては「奇妙に見える」だろうということは認めている。ブロードベンド氏はまた、バイオ・ハッキングの目的の一つに、人間とコンピューターの間を介在するもの、つまりユーザーインターフェースを減らすということがあると説明した。

    彼は「人生を円滑にするため」にチップを埋め込んだと明かす。「ミャオミャオ氏は法律の成立に先行しているのです。その結果、法律が追いつかず、法律違反とみなされてしまうのが現状です」とブロードベンド氏。

    シドニー交通側の検事のアンドリュー・ウォズニアック氏は、「有効なチケットを持っている」ということは、州政府が発行したオパール・カードを持っていることを意味すると裁判で語った。

    「被告の手にあった何かは、明らかにカードではありませんでした」とウォズニアック氏。

    ウォズニアック氏は「非常にシンプルなことです」と話す。

    オパール・カードの使用規約には「オパール・カードを誤用、破損、改変、改ざん、または意図的に傷つけたり破壊したりしてはならない」とある。また、オパール・カードがニューサウスウェールズ州鉄道局の財産であるという記載もあるのだ。

    ミャオミャオ氏の弁護士は無罪を求めたがクイン判事は認めず、次のような判決を言い渡した。

    有効な切符を持たずに乗車したことについては、判事は有罪判決とし、220ドルの罰金。検札時に乗車券を見せなかった件については、判事は無罪である。

    彼はまた、1,000ドルの裁判費用を支払うよう命令された。

    クイン判事はミャオミャオ氏が係員に乗車券やカードを手渡すことができなかったことを指摘した。「あなたはバイオハッカーであり、チップを手に埋め込んでいたため、と私は理解しています」

    技術が法律に先行しているという主張に関して、判事は「残念ながらそのように捉えることはできる」と述べた上で、電車で移動する人は誰でも「今日の法律に従わなければならない」と結論づけた。

    裁判所の外でミャオミャオ氏は、決定を尊重するが、「信念上の問題」としては、別の結果を期待していたと述べた。

    「これは法律が技術に追いついていないことを示す事例だった」と語る。

    オパール・カードのシステムでは、クレジットカードやスマートフォンを使用して乗車することが可能だ。それは、手に埋め込まれたチップとそれほど変わらないとミャオミャオ氏は主張する。

    「人々が腰を落ち着けて、この技術がどこに向かうのか考え、賢く法律を制定をすることを願っています。立法が実状に基づいて行われていないケースの1つです。罪を犯していなくても、人々を罰することにつながると危惧しています」と彼は語った。

    2018年末までに、彼は手の中のチップの性能を高め、クレジットカードとして機能させることを計画している。そうすれば公共交通機関で乗車賃を払うだけでなく、ショッピングも可能となる。

    アノニマス・マスクを着用した複数の支持者もこの裁判を傍聴していた。

    ミャオミャオ氏が裁判所の外で取材に答えた際、通りすがった男が「なぜ、チップを手に埋め込んだのか?」と声をかけると、そのアノニマス・マスクの女性は「あなたはサイボーグを差別している」と反論を行なっている。

    ミャオミャオ氏は、元副首相のバーナビー・ジョイス氏がニュージーランドとの二重国籍の問題で短期間で辞職した際に、ニューイングランドから選挙へ出馬し、落選した経歴の持ち主でもある。


    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:フェリックス清香 / 編集:BuzzFeed Japan

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