不正確なGoogleマップで遺体発見に至らず 自治体の正確な地図を使っていれば

    検死官は、警察がGoogleマップより「はるかに正確」な自治体の地図データを参照していれば、ダレル・サイモン氏の遺体は何カ月も前に見つかっていただろう、と話した。

    46歳のダレル・ジーン・サイモン氏が自転車でオーストラリアのクイーンズランド州郊外にあるレイドリー・クリーク・ウェストの所有地へ向かったのは、2014年11月16日のことだった。

    結局、サイモン氏は生きて帰らなかった。遺体は約18カ月後の2016年5月になって、奥地でその土地の新たな所有者に発見されたのだ。

    ここにきて、クイーンズランド州検死官代理のジョーン・ロック氏は、ある事実を認めた。サイモン氏が行方不明になった当時、所有地の半分しか捜索されかったのだ。

    そして、警察が捜索時に参照したGoogleマップは土地の境界情報が不正確で、もっと正確な自治体の地図を使っていれば早い段階で発見できていただろう、と語った。

    ロック氏が作成した2018年12月19日付けの調書によると、サイモン氏は2014年11月16日の現地到着直後、自転車を近くのダムへ投げ捨てて、自ら命を絶ったという。

    サイモン氏と交際していたシャロン・ローランド氏は事情聴取に対し、クイーンズランド州プレインランド近郊で借りていた家から普段通り朝のサイクリングに出かけるサイモン氏をキスで見送ったのが最後になった、と答えた。

    ローランド氏によると、サイモン氏は所有地内の改装した小屋へ行ってしばらく1人で過ごすことがよくあるため、数日戻らなくても気にしなかったそうだ。

    サイモン氏の捜索願いが11月22日に出された翌日、オーストラリアの防災組織であるState Emergency Service(SES)に参加しているボランティアたちは、GPSデータと、警察から提供された所有地の境界線が記されたGoogleマップを頼りに捜索を実施した。しかし、サイモン氏の足取りは見つけられなかった。

    ロック氏によると、SESの捜索活動を指揮したある人物は、捜索の取りまとめ役である巡査部長のアンソニー・ハーム氏から提供された地図にもとづき、地図上で示されたエリアに「絞って」探した、と証言している。

    18カ月後にサイモン氏の遺骨が発見されると、警察の検証がすぐに実施され、GPSのデータから、捜索は所有地の東半分しかカバーしていなかったとの結論が下された。

    ロック氏は、別の警察関係者2名が後日、地元自治体から現地の航空写真地図を入手した、としている。警察はこの地図を無料で取得できた。

    「自治体から入手した地図の画像は、捜索で使ったGoogleマップに比べはるかに精密だと一目で分かった。ハーム巡査部長が自治体の地図を持っていたら、所有地の半分しか捜索しないという誤りは起こさなかったかもしれない」とロック氏。

    捜索エリアが半分にとどまったことを「残念」だとし、「あってはならない事だった」と述べた。

    所有地の一部地域に設けられていた境界を示すフェンスが捜査ミスの原因、とする警察の検証結果にロック氏は異議を唱えている。同氏によると、問題のフェンスは「重要でなく」、所有地全体を区切っているわけでないそうだ。

    「捜索を取り仕切る複数の担当者が実施前に何度も地図を確認し、対象エリアを間違えないようにするべきだった」

    さらにロック氏は、遺体発見が遅れたことが、サイモン氏の家族や友人、特に父親の「悲しみを深めてしまった」と指摘した。

    「遺体が発見されないなか、殺人や凶悪犯罪、事故に絡む出来事だったと匂わせる出所不明のうわさや憶測が流れていたらしい。ところが、そうした情報が正しいことを示す信頼性のある証拠は1つも存在しない」

    ロック氏は、証拠からは死因が自殺だったという結論しか出ない、と付け加えた。

    「警察が2014年11月23日に実施した最初の捜索でサイモンさんの遺体を発見していたら、役に立たない、場合によっては中傷になる真実からかけ離れた憶測など、出回らなかったのではないだろうか」

    ただしロック氏は、サイモン氏の所有地をくまなく探しても、遺体は見つけられなかったかもしれない、とも話している。

    「地形と植物のせいで捜索は難しかった。しかも、サイモンさんは発見されにくくしようと考えたらしく、自転車をダムに落とし、ヘルメットやおそらく衣服も小屋などあちこちに捨てていた」

    そのうえでロック氏は、捜索失敗がサイモン氏の死亡理由でないという考えも示した。

    ロック氏は、警察の捜索時にこれまでより早い段階で「精度の高い地図サービス」とGPSデータを利用できるよう、クイーンズランド州警察に対応方針の見直しを求めた。

    サイモン氏の父親は事情聴取の際、彼には大きな経済的問題があり、自殺当時「所有している土地を手放すことになると認識していた」と答えた。

    「知人や近い人は、サイモン氏が死を選ぶことなど予想もしなかった。これは意外でないし、同様のケースは多い」とロック氏が説明した。

    「後から考えてみると、そのころ抱えていた経済的面のストレスが徐々に自殺へと導いていた、という状況が見てとれる」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan