AIと人間がコラボした新作『ブラック・ジャック』に反響 ⇒「素直に凄い」「手塚治虫の凄さを再確認」

    「AI を活用した完全な機械の心臓」に血腫が発生。ブラック・ジャックはどうする?という内容になっています。

    故・手塚治虫さんの代表的な漫画の一つ『ブラック・ジャック』。その新作がAIと人間の共同作業で完成し、11月22日発売の「週刊少年チャンピオン52号」(秋田書店)に掲載されました。

    計32ページの新作のタイトルは「TEZUKA2023 ブラック・ジャック 機械の心臓-Heartbeat MarkII」。

    ピノコを連れて医療と AI の最先端技術が集まる企業を訪れたブラック・ジャックは、 CEOの川村天(たかし)から女性患者を診てほしいと依頼を受ける。患者には「AI を活用した完全な機械の心臓」が移植されていたが、 完全なはずの心臓に血種が発生していた……という内容です。

    SNS上では読者から「AIの力を借りてここまでのお話ができるのは素直に凄いと思った」「クリエイターが駆逐されるのも遠い未来じゃないかも」と驚く声が続出。その一方で、「予想してた以上に違和感が強かった」「手塚治虫の凄さを再確認するだけだった」とオリジナルにはかなわないと指摘する声も出ていました。

    ストーリーとキャラクターに2種類のAIを活用

    制作に使用したAIは主に2種類。物語のプロット作成は、OpenAI社の「GPT-4」が使用されました。

    はこだて未来大学の村井研究室と手塚プロが共同で、手塚治虫の各短編作品や『ブラック・ジャック』の各話を文字化して分析し、ストーリーの重要な要素から「手塚治虫らしさ」の構造を読み解きました。それを元に、慶應大学の栗原研究室のツールを使って「GPT-4」にプロット作成を指示したそうです。

    また、電気通信大学の稲葉研究室の協力で、画像生成AI「Stable Diffusion」も活用。手塚治虫風の画風を出力できるようにカスタマイズした上で「川村社長」と「マリア」という新キャラクターを生成。AIが出力した画像を参考にしつつ、人の手がコマ割りやペン入れしたそうです。

    「作家の感性を学習できるかが課題」総監督の手塚眞さん

    今回のプロジェクト「TEZUKA2023」の総合ディレクターを務めたのは、手塚治虫さんの長男である手塚眞(まこと)さんです。

    「興味深い結果を出せた」としつつも、「マンガはストーリーとキャラクターだけでできているものではなく、作家の感性が重要に働いています。それを AI が学習できるかが大きな課題」と振り返りました。

    また、5月のプロジェクト発足から発表まで半年かかったことを念頭に「手塚治虫はこれを毎週一作描いていたので、そのパワーと頭脳の凄さはとても現状のAIが敵うものではないと思いました」と亡き父の偉大さに脱帽していました。

    新作「ブラック・ジャック 機械の心臓」本編冒頭の1〜5P目