黒人男性の背後から、警官が至近距離で複数発砲。米ケノーシャで抗議デモ

    銃撃を受けたジェイコブ・ブレークさんは、下半身にまひが残った。再び歩くのは不可能に近いという。事件を受け、現地では大規模なデモが起きており、参加者の一部は暴徒化した。

    米ウィスコンシン州ケノーシャで、8月23日夕(現地時間)、車に乗り込もうとした黒人男性を、警官が背後から複数回銃撃した。

    これに対する抗議運動が一夜で巻き起こり、ウィスコンシン州知事は24日、ケノーシャに州兵を出動させた。しかし運動は拡大を続け、参加者の一部が暴徒化したため、州知事はケノーシャ郡に非常事態宣言を出した。

    警官による銃撃を受けたのは、ジェイコブ・ブレークさん(29)。事件の様子は地元住民により撮影され、すぐにツイッターなどのSNSで拡散した

    動画では、警官らに止められたブレークさんが、警官らのもとを立ち去ろうとしている。ブレークさんが車のドアを開けると、警官1人がブレイクさんのシャツを掴み、背後から近距離で複数回発砲しているように見える。

    Twitter.com / @nolimitchrizi / Via Twitter: @nolimitchrizi

    SNSで拡散された動画の一部。車の背後に、白い服を着たブレークさんがいる。

    ケノーシャ警察署の発表によると、ブレークさんはミルウォーキーの病院に入院中で、重体だという。警官らは「家庭内暴力」の通報を受けて現場にいたとあるが、発砲の理由については明らかにしていない。

    ブレークさんの父親によるSNS投稿には、ブレイクさんは手術を終え容体は安定していると記されている。

    ブレークさんの代理人を務めるベン・クランプ弁護士は25日、ブレークさんの下半身にまひが残っていると発表した。ブレークさんが再び歩けるようになるのは「奇跡」に近い状態だという。

    また銃撃が起きた時、ブレークさんの息子3人は「わずか1メートルほどの距離」にいたと語った

    事件の様子を捉えた動画がSNSで拡散してから、事件に抗議する人々がケノーシャに集まり、デモが行われた。

    The scene currently in #Kenosha. Hundreds are marching in response to Kenosha police shooting and wounding 29-year-old Jacob Blake yesterday.

    「現在(25日)のケノーシャの様子。昨日、29歳のジェイコブ・ブレークがケノーシャ警察の警官によって銃撃され負傷した事件に対し、何百もの人が(抗議して)行進している」

    ブレークさんの従兄弟とみられる男性は事件当日、以下のようにツイートした。

    「ケノーシャ警察署の行動は容赦できないだが、(ブレークさんの)母親は皆が平穏に行動することを望んでいる」

    しかし、事件から2夜連続でデモ参加者の一部が暴徒化し、建物に火を放つ人も現れた。重装備の州兵が催涙ガスを使用し、デモの鎮圧を図った。

    ケノーシャ郡全域に発令された非常事態宣言により、24日の夜8時から25日の朝7時まで住民の外出は禁止されていたが、多くの人が深夜まで抗議運動に参加していた。

    Brandon Bell / Getty Images

    暴徒化したデモ参加者が火を放ち、燃えている建物。24日撮影。

    銃撃事件に関わった警官らは休職処分を受けているが、当局は氏名などの情報を公開していない。

    ウィスコンシン州検察局は、犯罪捜査部が事件の捜査を開始すると発表した

    民主党のジョー・バイデン大統領候補は「直ちに徹底的かつ透明性のある捜査」を開始し、警官らに責任を取らせるよう求め、以下のように声明で述べた。

    「ウィスコンシン州ケノーシャで、警官がジェイコブ・ブレークに背後から7発も銃弾を浴びせた。単に、車に乗り込むのを阻止するために」

    「ブレークの子供たちはその様子を車中から見ており、周囲の人々も驚愕した様子だった。今朝、全米は悲しみと憤りに再び包まれている。またアフリカ系アメリカ人が、権力濫用の犠牲となったのだ」

    「今回の銃撃は、アメリカの魂にも穴を開けた」

    Mike De Sisti / Reuters

    ケノーシャ警察署前、暴動鎮圧用装備を身に着けた州兵がデモ参加者と対峙する様子。

    今年5月、ミネアポリスで警官の拘束下で死亡したジョージ・フロイドさんの事件を皮切りに、全米各地では「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」運動が広がっている。人種差別と警察の暴力に抗議する多くの人々が、デモを行っている。

    抗議運動が拡大する中で再び起きた、警官による銃撃事件。ウィスコンシン州では、過去に警官による黒人の死亡事件が複数起きている。

    2019年6月、タイ・リーズ・ウェストさん(18)がケノーシャから約24キロメートル離れたマウントプレザントで、警官により射殺された。バイクのライトが点灯していなかったため、警官はウェストさんを追跡していた。事件の様子を撮影した動画はなく、警官が起訴されることはなかった。

    今年4月には、ミルウォーキーで非番の警官がジョエル・アセベドさん(25)の首を、背後から10分にわたり腕で絞めつけた。パーティーが終わった後の警官宅で、口論となった時のことだ。アセベドさんは、この時負った怪我が原因で数日後に亡くなった。警官は過失致死で起訴されたが、今でも給与が支払われている。

    アフリカ系アメリカ人やその他の有色人種コミュニティーにとって、同州が最も住みにくいと評価されることは多い。黒人と白人間での失業率、収入、自宅所有率、学業成績の差が大きいからだ。

    ウィスコンシン州の黒人住民の大多数が、ミルウォーキー、ラシーヌ、ケノーシャで暮らしている。

    ケノーシャにあるカーセージ大学のキャサリン・ヒルソン助教授は、同州の黒人住民の暮らしについてBuzzFeed Newsに語った。

    「ほとんどが黒人中心のコミュニティーで生活しており、そこには警官が重点配置されています」

    「多くの人々が、警官との接触を余儀なくされています。それは突然で、かつ繰り返し定期的に起こるのです。ジェイコブ・ブレークさんの事件は特に、地域住民が警察に不信感を抱く原因になります」

    ケノーシャで発生した抗議デモの原因は、ブレークさんの銃撃事件だけではないとヒルソン助教授は指摘する。

    「抗議デモや暴動のような騒動が発生する際、人々は実体験をもとに抗議しています。こういったものは、統制が全く効いておらず無分別に思われる、単なる騒乱とは区別すべきです」

    「事件そのものは悲惨ではありますが、人々は一時的に、今回の事件だけに抗議しているのではありません。非正規雇用、失業、劣悪な生活水準と学校教育、警官からの非人間的な扱い、そして定期的にこれが強いられる状況に対し、抗議の声を上げているのです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。