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オンラインポルノの見すぎで「勃起障害」に悩む若者たち

「ポルノを見すぎたことで、彼らの性的な物語は、ほかの誰かのものになってしまいました。自分自身の幻想を作れなくなってしまったのです」

ドミニクが初めてオンラインポルノを見て自慰を経験したのは、12歳のときだった。

現在28歳で、オーストラリアのシドニー西部に住むドミニクはBuzzFeed Newsに対して、「2カ月前まで、1日最低2時間は(ポルノを)見ていました」と語る。

「ハードコアポルノを数えきれないほど見てきました。普通の人の想像をはるかに超える、いかがわしい映像の数々を」

「レイプ系や幼児性愛以外は、もう何でも。それらを見ながら自慰にふけっていました」

ドミニクは20代前半のときに実際のセックスを初めて体験したが、それまでに彼がオンラインで視聴したポルノは、本人の推定では6000時間を超えるという。

「これは問題だと認識したのは、憧れの女の子とセックスするようになった時でした。とにかく、行為の最中にうまくできなかったんです」

性的興奮を掻き立てるのが難しかったし、早漏でもあったという。

「ひどい恥ずかしさと困惑に襲われた僕は、インターネットで情報収集しました。そして、同じような問題を抱えているほかの人たちに出会いました」と彼は語る。

ドミニクは、ほかの若者たちと掲示板サイト「Reddit」でつながりを持つようになり、ポルノを見ながらの自慰行為をやめようと「互いに励まし合った」という。

「2カ月ぐらい前から、ポルノを一切見ないようにしようと本気で努力しています」と彼は語る。

「ポルノ誘発性勃起障害(PIED:ポルノED)」と呼ばれるこの性機能障害は、ポルノの見すぎが原因で、性行為中に勃起できなくなる、あるいはそれを維持できなくなる状態のことだ。

オーストラリア、ビクトリア州在住の15~29歳を対象とした研究から、調査に参加した男性のおよそ70パーセントが13歳以下でポルノを初体験していることがわかった。また、若い男性の大半(84パーセント)と若い女性の一部(19パーセント)は週1回以上、ポルノを見ていることもわかった。

シドニーで関係性カウンセラー及びセックスセラピストとして活動するアリンダ・スモールはBuzzFeed Newsに対して、「11~17歳の人たちは、平均で週に2~4時間ポルノを見ています。17歳で初体験を迎えているとすると、彼らは初体験に挑む前に、ポルノの学士号を取得しているのです」と語る。

「ポルノ中毒に悩む若い男性たちと日々向き合っていますが、彼らは家からほとんど出ることができないんです。毎日5~6時間、ときにはスクリーンを2~3面同時に開きながら、ポルノを見ているからです」

「勃起障害(ED)に悩んでいると私に訴えてくる20代前半のクライアントが大勢いますが、その問題に関係しているのがポルノの鑑賞です」

ポルノは、おもに2通りの方法で、パートナーとの性行為中に男性の性機能を妨げるとスモールは言う。

「男性もしくは女性のパートナーと親密になることはできるかもしれませんが、いざ挿入という段になると、彼らのペニスは萎えてしまいます。その一因は彼らがポルノで、ペニスを大きく勃起させてその状態を長時間維持することへの非現実的な期待を見ているからです」

「男性の自尊心は、性的な意味においてとても壊れやすいものなのです」

ポルノ中毒に関連するもうひとつの問題は、「特異なマスターベーションテクニック」の開発だ。

「ペニスに強い力を加えることに慣れてしまうと、膣や、あるいは肛門でさえも、その種の摩擦や強度の代役を果たせないでしょう」

スモールが「あなたのセクシャルファンタジー(性的空想)はどういうものですか?」と尋ねると、クライアントの多くは黙り込んでしまうという。

「何世代か前なら、『PLAYBOY』を見ながら自分で物語をつくったものです。でも、いまはもうそれができなくなりました。とくに男性は」と彼女は語る。

「ポルノを見すぎたことで、彼らの性的な物語は、ほかの誰かのものになってしまいました。自分自身のファンタジーをつくれなくなってしまったのです」

スモールは一部のクライアントに、代わりに写真を使ったマスターベーションをすすめている。マスターベーションを完全にやめるのは「悲しいし、その必要もない」ので、3日に一度ぐらいの頻度でマスターベーションするのが健康的だという。

ポルノはまた、若い女性が自分自身に対して抱く期待もゆがめているとスモールは言う。

「彼女たちにとっては、アンダーヘアを処理した完璧な陰唇の写真が、ノーマルさのお手本になっています。それがノーマルだと思い込んでいるせいで、彼女たちはそれを必死で求めるようになっているのです」

*アンガスが初めてオンラインポルノで自慰を経験したのは13歳のときだった。

「中毒がピークのときには、一日に4~8回、PMO(ポルノ=P、マスターベーション=M、オーガズム=O)セッションにふけっていました」と、現在27歳のアンガスはBuzzFeed Newsに語る。

そして彼は、その後の10年間で、自分の「好み」が変わったことに気づいたという。

「最初は、つまらない普通の男女ものや、レズものでした」と彼は語る。

「徐々にそれが、フェドム(嗜虐的なプレイのうち、女性が支配的な役割を果たすもの)や、トランスセクシャル、ゲイの方向へと変化していきました」

16歳で実際のセックスを体験したアンガスだったが、その行為からオーガズムを得るのには困難を感じていた。

「ポルノでマスターベーションしていた僕は、実際のセックスをほとんどまったく楽しめませんでした。セックスはポルノほどハードコアではないからです」と彼は語る。

「ジェットコースターのあとにブランコに乗るようなものです」

研究論文をいくつかオンラインで読んだのち、アンガスは25歳のときに、ポルノへの異常なまでの執着が、自身の「精神と性生活」に影響を与えていると確信した。

アンガスはこの20日間、ポルノを見ていない。

「今年に入って170日間我慢したのですが、その後で元に戻りました」

「ポルノは中毒性がとても高く、やめてからというもの、離脱症状に襲われるようになりました」

「ばかげた発言に聞こえると思いますが、ポルノを見ながら自慰にふけるぐらいなら、タバコを吸うことをおすすめします」

ポルノを見ないマスターベーションに切り替えてからのアンガスは、自身の勃起に「大きさと硬さの向上」を自覚するようになった。

「ポルノを見るのをやめてからは、本物の女性を見て触れるという行為がはるかに刺激的になりました」

臨床性科学者のタニア・クーンズは、ポルノを見ながらマスターベーションを定期的に行うせいで引き起こされる、さまざまな性機能障害に悩む患者を何人も診てきたと言う。

「ポルノはとても簡単に見ることができるため、こうした男性はその深みにますますはまってしまいます。ポルノを立て続けに何本も見るので、性的に興奮した状態で長時間を過ごすことになるのです。この習慣を断ち切るには長い時間がかかります」とクーンズはBuzzFeed Newsに語る。

彼女によれば、「柔らかくて温かい、湿り気を帯びた人間」ではその代わりにならない「特異なマスターベーションスタイル」を持っている患者たちがいるという。「もしそれを実際のセックスで試そうものなら、パートナーはベッドのヘッドボードに頭を何度も打ちつけられることになるでしょう」

「基本的には彼らに、立ち上がった状態でマスターベーションを行うよう指導しています。そして、1分間ポルノを見るごとに、10秒間はスクリーンから目をそらして自分の体のことを考えるように、と」と彼女は語る。

「これは、身体化テクニックの一種です。こうすることで彼らの意識を、頭のなかから、性的な楽しみが宿る体へと移すのです」

クーンズはクライアントに対して、「逆の手を使ったマスターベーション」や、タントラ(シバ神妃の性力=シャクティを崇拝する、ヒンドゥー教シャクティ派の聖典)の原理に基づく「呼吸と動き」のエクササイズを勧めることもある。

クーンズによると、「極度に野蛮な性的イメージ」を含むポルノは、「女性の体のあり方」に対する男性の理解をゆがめているという。

「彼らは、ポルノ俳優のようにやらないといけないと考えるようになっています。そんなことをしたら、まず間違いなく、よいセックスは体験できません」と彼女は語る。

「ペニス中心主義の自分勝手なセックスは、健全ではありませんし、そのようなセックスがガールフレンドの興味を3カ月以上引くことはないでしょう」

患者の女性パートナーの多くは、患者の性機能障害を個人的に受け止め、「自分は愛されていない、性的魅力に乏しいんだ」という感覚にさいなまれている、とクーンズは語る。

ポルノはセックスの代わりにはなりえないと彼女は言う。「彼らは自分のガールフレンドを、ポルノに登場する女性のイメージと比較しているのではありません。ポルノは、彼らがいま送っている性生活の代わりになるものでも、比較対象でもないのです」

シドニー・カウンセラー&サイコロジスト協会(Associated Counsellors and Psychologists Sydney)の心理療法士で、関係性カウンセラーでもあるダン・アワーバックはBuzzFeed Newsに対して、ポルノ依存から「パートナーのもとへと戻る方法が見つけられない」人もいると語る。

「性的なエネルギーが失われてしまうと、冷淡な停戦はそのうち、お互いが無言のうちに距離を保つことにつながります。セックスがきわめて機械的なものになり、それが当たり前になる場合もあります」と彼は言う。

「ポルノ中毒は、ギャンブルと多くの共通点を持っている可能性があります。インターネットポルノは、非常に多様な刺激を無制限に提供します。俳優の表情や音、かたち、色、サイズなどなど、さまざまな異なった刺激があるのです。ギャンブルのマシンも、報酬が徐々に増えていくようにつくられています。プレイヤーは報酬を待ち構え、ひたすらそれを追い求めます」

「さらにポルノは、薬物セックスのように、すばやい満足をもたらし、多くの欲求不満を解消することができます。しかし、少量で非常に大きな刺激を与えてくれるものすべてがそうであるように、我々はそうしたものに対して次第に鈍感になります。そしてそれが、大事なことを台無しにしてしまうのです」

*この記事の執筆にあたって取材に協力してくれた各男性の実名は、プライバシーへの配慮から仮名に置き換えています。

この記事は英語から翻訳されました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

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