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医師国家試験の対策には、意外とお金がかかる

参考書と問題集で10万円以上。国試予備校をあわせると?

「お医者さん」になるための「医師国家試験」。対策にいくらかかるか、知っていますか?

前回の記事では、医学部出身の医療記者である私・朽木が、今年度から医師国家試験(国試)を再受験することを報告しました。

社会人になると、医師国試を見る視点が、現役生の頃とは少し変わります。その最たる例が「お金」です。

医師国試の受験料は1万5300円と紹介しました。このお金は、大学入試センター試験の1万8000円(3教科以上)と大差ありません。

しかし、医師国試受験にかかるお金は、これだけではないのです。まずは、参考書と問題集。

代表的な参考書はこの『イヤーノート』でしょう。毎年改定され、今年度で27版を数えます。

「内科・外科1700疾患を1冊に凝縮」と謳われていますが、その分、ページ数も3584ページとボリューミー。

画像集『イヤーノート・アトラス』などの付録も充実していますが、気になるお値段はというと……。

なんと2万5920円! 現役生のときはもちろん持っていたのですが、社会人になるとちょっと勇気のいる買い物です。

こちらも代表的な『レビューブック』シリーズ。イヤーノートよりも小さくて薄いので、白衣のポケットにも入ります。

シリーズと言うだけあって、複数あります。それぞれ「内科・外科」が5400円、「マイナー(眼科・耳鼻科・皮膚科・精神科など、専門性の高い科)」が6480円、「産婦人科」が3780円、「小児科」が4860円、「公衆衛生」が5400円。全て買うと2万5920円です。

あれ、お金に羽が生えたよう……。おわかりでしょうか。そう、医師国試対策にはお金がかかるのです(もちろん、このような参考書を必要とせず、合格される方もいらっしゃるのですが)。

ここまでは参考書ですが、まだまだ続きます。医師国試に必要なものと言えば、むしろこちらのイメージの方が強いかもしれません。

『クエスチョン・バンク』、通称「QB」「クエバン」です。「解説が充実しているから、QBを読み込めば国試の約8割が解ける」と謳うのは、圧倒的なシェアによる自信の現れか。長らく国試対策の決定版であり続けるQBですが、お値段も圧倒的です。

「vol.1」から「vol.7」まで発行されており、公衆衛生がテーマの「vol.6」(4644円)以外はすべて1万1880円。全て買うと7万5924円です。

QBには『QBオンライン』というサービスがあって、オンラインで演習できるしQB本体の解説も読めるし、という神サービスなのですが、憎らしいのが使用条件として「全てのQBを買ってシリアルナンバーを打ち込む」必要があること。

ちなみにQBや『イヤーノート』、『レビューブック』、そして国試に限らず人気の『病気が見える』シリーズは全て出版社が同じで、メディックメディアというところです。

もちろん、他にもたくさんの良い参考書・問題集がありますし、そもそも国試のためだけに勉強をするわけではないので、例えば別の記事で紹介した『ハリソン内科学』なんかを参考書として使う人もいるでしょう。

いずれにせよ、専門書である以上、どうしても高額になるのは事実。現役生の頃も全てそろえていたはずなのですが、今よりもお金がなかったはずなのに、どうして平気でいられたのやら。

「ぐぬぬ」と唇をかみしめながら、血と汗と涙の結晶の給料から、10万円以上分の参考書と問題集を買うのでした。

既卒者の頭を悩ませる「国試受験予備校問題」。現役生はスペシャルプライスなのに……。

さて、お金がかかるのは参考書や問題集だけではありません。今、現役生は全国的に、国立・私立を問わず、高学年になると国試受験予備校の講義を受講することが普通になっています。

もちろん、全国にこのような専門予備校があるわけではないので、基本はビデオ受講です。受験直前になると、カリスマ講師が全国の医学部を回って激励をしてくれる、なんてこともあるのですが。

このビデオ講義は、各予備校、現役生であれば大体35000円〜50000円くらいで受講できます(どのコースをいくつ受講するかにもよります)。しかし、これが既卒者になると、一気にハードモードに。

まず、TECOMのネット講座は「国試Basicセット」で最低価格が50万円(オプションにより増額)。メックのネット講座は「e-schoolコース」が一括で168万円です。た、高い……。

前回の記事で、既卒者の合格率が著しく低いことを紹介しましたが、一因として「モチベーションの維持」が挙げられます。

医学部在学中は、大学をあげて一丸となり、同期全員で国試対策に突き進むので、それがなくなってしまうと、そもそもやる気が出ない、というのは、実感としてよく理解できます。

その意味でも、このような国試受験予備校はありがたいわけです。ありがたいのですが、いかんせん高すぎるので、今年度は手を出せませんでした。

今の自分が折り合いのつけられる範囲で、どこまでやれるか。引き続き、医師国試の再受験に挑戦していきます!