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医師国家試験の受験願書には、「職歴」を書く欄があった

今年度から医師国家試験を受け直します。

「お医者さん」になるための「医師国家試験」。どうやって受けるか、知っていますか?

医師国家試験(以下、国試)とは、文字どおり、医師になるための国家試験。基本的に医学部を卒業する予定の現役生か、卒業した既卒者のみが受験できます。

BuzzFeed Japan Medicalで医療記者をする私は、2014年3月に地方の医学部を卒業した既卒者です。今年度(第112回)から国試を再受験することにしました。

再受験の意向を母校の大学に報告し、11月初旬に国試の受験書類が届きました。これを書くのは4年ぶり、2回目です。

記入が必要なのは、「受験願書」と「受験写真用台紙」。後者は運営本部によるチェックのあと、試験当日の受験票になります。

現役生時代は、大学から書き方を丁寧に教えてもらった記憶がありますが、私はもう既卒者。おぼろげな記憶だけが頼りです。

もちろん、受験料もかかります。15300円を、収入印紙の形で願書に貼りつけます。ちなみに、合格すると医師としての登録に60000円かかるそうです。

証明写真は6cm×4cmの特殊なサイズ。そういえば現役生のときは、大学にカメラマンが来ていたっけ。仕方ないので大判サイズを切って使います。

さて、これらを記入・用意すれば、願書と台紙の完成です。不備がなければ、晴れて国試を再受験できることになります。

願書には「職歴」を書く欄がありました。現役生の頃には、気づかなかったのですが。

驚いたのは、願書に「学歴」以外に「職歴」を書く欄があったこと。フォーマットは現役生でも既卒者でも変わらないので、当時は気づかなかったのでしょう。

私は医学部に合格するために、二浪しています。これはトラウマで、未だに「今の自分は医学部に合格した夢を見ている」という悪夢を見るほどです。

何とか入れた念願の医学部だったのに、私はそこで抱いた違和感を拭えませんでした。今度は「こんな自分が医師になっていいのか」と悩みました。

人生を決めきれず、学生時代にしていたアルバイトの延長でライターになったのが2014年の春のことです。

やがてライター・編集者として食べていけるようになり、WELQ問題の追及に関わったことをきっかけに、2017年の今年から、報道機関の医療記者になりました。

医療記者とは、簡単にいえば、患者さんと医師の間を行ったり来たりしながら、情報の格差を埋める仕事です。

深刻な医療不信や、人手不足ーーまだまだ新米記者ながら、そこで見えてきたのは、決して明るいことばかりとはいえない医療の現状でした。

自分で担当しただけでも「抗がん剤やワクチン否定」や「医師の過労死」、「受動喫煙」「インチキ医療サイト・健康本」など、問題が山積しています。

取材を重ねる中で、患者さんも、医師も、それぞれに不安や葛藤があることがわかりました。

外の世界に出ることによって、医学部の中で自分の抱いた問題意識が、少しずつ言語化できるようになっていった、ともいえるかもしれません。

社会人になったばかりの頃は、「もう医師にはならない」などと意気がったこともありました。思い返すと恥ずかしい限りです。

でも、医療と向き合うことから逃げ出した負い目は、心の中でずっと、感じ続けていたように思います。

医療記者になったことで、あらためて医療現場に、自分のこれまでの経験を活かした形で、貢献できることがないかと考え始めました。

これからの時代、情報発信はますます重視されるようになるはず。医療現場にも、その分野のプロが必要ではないでしょうか。

現役生の頃は気づかなかった、というよりも、気づけなかった「職歴」の欄に、そんなことを考えながら、この数年の歩みを書き込みます。

国試を受け直すことは、その最初のステップ。とはいえ、既卒者には「狭き門」です。

国家資格の医療系職種には、他にも歯科医師や看護師、薬剤師などがあります。医師の国試は、その中でも合格率の高い試験です。

前回(第111回)の現役生の合格率は91.8%。歯科医師の国試の合格率が6〜7割であることを考えると、「受かりやすい」といえるでしょう。

現状、多くの医学部のカリキュラムが、国試を強く意識したものになっています。一部から医学部の「国試予備校化」が指摘されるほどです。

そのため、国試は本来「ほとんどの現役生が合格する」と言っても過言ではないものです。一方、既卒者の合格率は54.3%です。

事情はさまざまとはいえ、既卒者の合格率は明らかに低い。素直に現役生の頃に合格しておけばいいものを、自分で自分の首を絞めたようなものです。

そして、今回はちょうど国試の変わり目に当たってしまいました。これまでの試験は3日間で500問でしたが、これからは2日間で400問の試験になります。

変更の理由は「単に知識を問う問題ではなく」「臨床的な応用力を問う問題を出題するため」。臨床とは実際の診察・治療のことです。

これは要するに、医師になったときのためのより実践的な知識が、国試受験に求められるようになった、ともいえそうです。

現役生は2〜3年間の病院実習をしていますが、私が実習から離れてから、はや数年。既卒者を受け入れてくれる病院を探して、試験前に病院実習も行かないと。

実は、国試を受け直すことにしたのは夏前でした。準備不足をなるべくカバーできるように、仕事と勉強を両立しながら、引き続き受験対策をしていきます。

幸い、国試の受験に回数制限はありませんし、私は受かるまで受け続けます。そこで、今後も定期的に、国試について紹介していくことにしました。

みなさんが病院で会う「お医者さん」がどんな試験を経て、そこに立っているのかを知ることで、医療が少しでも身近になれば幸いです。