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「医師参画・監修」なのに信頼できない例も 批判された各サイトの対応は?

美容整形情報サイト『ニコリー』は全記事非公開、ヘルスケア情報サイト『ヘルスケア大学』は「複数医師監修」を発表。

ヘルスケア情報サイト『ヘルスケア大学』を運営するリッチメディアが、複数医師による監修を導入することを、6月12日付で発表した

医療キュレーションサイトについては、『WELQ』問題で情報の信頼性が疑われた後も、検索エンジン対策(SEO)により多数の記事を検索上位に送り込み、ユーザーを獲得するサイトが相次いでいた。これらのサイトは、医師による「参画」「監修」を大々的に表明し、信頼性を高める手法を取っていた。

株式会社リッチメディアが運営するヘルスケア大学もそのひとつだ。一方で、掲載する健康・医療情報に誤りがあることが、複数の医師から指摘されていた。

また、5月29日時点では5155人の医師の「参画」を謳っていたが、実際には自分の名前が掲載されていることすら知らない医師が多数いることが、BuzzFeed Newsの取材で判明している。

リッチメディアが参画医登録の見直しを行った結果、6月12日17時現在で1242人まで参画医師数の表示が減少している。この中には名前が掲載されているだけで、監修はしていない医師もいる。

さらに、BuzzFeed Newsの調査によれば、この「医師」の中には少なくとも350人以上の「歯科医」が含まれていた。医師と歯科医師は法律上も別の資格だ。

なぜ、実態のない「参画医師」が多数登録しているかのように見せるのか。BuzzFeed Newsはリッチメディアの元従業員を取材し、以下の証言を得た。

「検索にヒットするキーワードを“全部”取ろうとか、“とにかく数が大きければ大きいほどいい”とか、非常にシンプルな思想で組織が動いている」

これらの問題を受けて、リッチメディアでは『医療・健康情報の信頼性向上プロジェクト(仮)』を発足していた。

今回の取り組みは、複数人での監修により情報の誤りを防ぐことが狙い。症例によっては複数でないケースも存在する予定だという。また、記事毎に改定や更新履歴がわかるように表示される。実施は「6月中を目処に順次」とした。

しかし、監修する医師が1人であろうと2人以上であろうと、結局問われるのは、その医師自身の信頼性だ。最新の知見を持つ、信頼にたる医師かどうかは、医師免許だけでは担保されない。

同社はこれまでに、「一部の記事で指摘の通り修正が必要であることを確認しております」と、内容に誤りがある記事が複数存在したことを認めているが、その記事も医師の監修を受けていたはずのものだ。

「順次」実施する方法にも問題は残る。誤りのある記事が掲載されている可能性があるのに、それが見つかるまで記事が公開され続ければ、不正確な情報が人の目に触れ、拡散される可能性があるためだ。また、一部の医師からは健康被害を心配する声も上がっていた。

6月10日には、株式会社ニコリー(旧ドウゲンザッカーバーグ)が運営する美容整形情報サイト『ニコリー』が全記事を非公開にした。

これは、9日に参画医師から「誤りが多数ある」と指摘されたことを受けた対応だった。現在、サイト上に閲覧できる記事はなく、下記のような説明がある。

2017年6月9日、ニコリーご参画医師から、ニコリーの医師監修記事の一部内容の信憑性についてご指摘を、医師が運営するブログにて公開されました。

ニコリーは記載された内容を真摯に受けとめ、2017年6月10日未明に全記事の非公開化、再発防止策の実施などの対応をいたしました。

『ニコリー』もヘルスケア大学同様、医師によるチェックを売りにする情報サイトだ。では、ヘルスケア大学は今後、どのように対応するのか。

BuzzFeed Newsは、リッチメディア社に記事公開を続ける理由について問い合わせた。同社広報担当者が回答した。

同担当者は、これまでの記事により誤った情報が拡散する可能性、健康被害が出る可能性については回答を避け、「すべての記事は、医師による監修の上、公開しております。今までと変わらず、皆さまがより安心・信頼できる情報を提供できるよう努めてまいります」とだけ述べた。

しかし、これまでに問題があったから、『医療・健康情報の信頼性向上プロジェクト(仮)』が発足したのではないのか。

監修医師を選出する基準は「専門性や経験上適したと考える医師を選出いたします」、医師と歯科医師が混在していることについては「今後『医療・健康情報の信頼性向上プロジェクト(仮)』にて検討する予定となっております」とした。


【お願い】

BuzzFeed Newsは、インターネット上の医療情報の信頼性について、引き続き取材します。記事の監修をしたことがある医師の方、信頼性が不確かだと思われる医療情報を見つけた方は、Twitter( @amanojerk )またはメール( japan-info@buzzfeed.com )などでご連絡ください。