外国人特派員協会で1月19日、長時間労働や過労死の現状に関する記者会見が開かれた。
電通の新入社員・高橋まつりさん(当時24)が2015年末に自殺した問題を受けたもの。会場となった記者室には多くの特派員らが詰めかけ、問題への関心の高さをうかがわせた。
解説をしたのは、企業の働き方をコンサルする「株式会社ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長たちだ。
小室社長は会見で、日本の長時間労働の歪さを指摘。「日本では1年のうち6ヶ月間、労使間で協定を結べば事実上、上限なく働かせることができる。名だたる大企業の大半が、時間外100時間以上の協定を結んでいる現状がある」などと語った。
参加者の外国人からは様々な疑問があがった。ある男性は「なぜ厳しい状況で働く社員が会社を辞めないのか」と質問。
これに対し、小室社長は「他社も同じくらい長時間労働だからです」と語り、こう実例をあげながら答えた。
「電通を辞めて博報堂にいっても、博報堂は同じレベルで長時間労働をしている。同じような企業にいくと同じ労働環境になってしまう。日本全体がそういう状況になっているという問題が大きいのではないでしょうか」
同じ男性の「過労死と日本の労働生産性が低いことの関係性は」という質問には、こう答えた。
「日本は労働にかけている時間は先進国で最も長く、生産性は先進国の中で最下位という状態が20年間続いている。これを『勤勉で頑張り屋』と日本人は捉えてきたが、管理職の評価基準に、部下の時間あたりの生産性をはかるという項目がない問題がある」
また、「大企業は残業時間を把握できていないのではないか」との質問には、その背景に「経営者が長時間労働を違法と感じていない」ことがあると指摘。
一方、ドイツの新聞記者は「労働時間を短くするとプレッシャーが増えるのでは。ゆっくりと長い時間をかけて働く方が良いのでは」と質問した。
小室社長は、日本の企業には「無駄が多い」との現状を紹介。
たとえば、自社がコンサルした運送業社では、朝の荷積のために前の晩からトラックが待つ「慣習」があったが、改善後はスマホから順番予約ができるようになったという。
「無駄なことに時間を使わないといけない状況が改善されると、生産性もあがる。プレッシャーが増えるというイメージもあるが、非合理でもやっていたものを排除することで、労働時間を短くできるのではないでしょうか」