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口唇ヘルペスが私の“あそこ”に… 性病になった女子がみんなに伝えたいこと

「ヘルペスの感染経路は?」「再発を繰り返すって本当?」「男性も女性もかかるの?」。口の周りに水ぶくれができる口唇ヘルペスですが、それが性器に移ったものを「性器ヘルペス」と言います。性病であるこの病気の原因から治し方、繰り返すと言われる再発についてお話を伺いました。

「今でも恨んでいないし、謝罪もいりません。そうなった事実は変わらないので」

20代の女性が、言葉を選びながら告白する。大学3年の頃、性器に痛みが走った。数日前のセックスを思うと、性病だとすぐに察しがついた。

婦人科に駆け込むと「珍しいことではないので、ショックを受けないでください」と言われた。でも、性病と診断された以上、ショックは消えなかった。

診断された病名は「性器ヘルペス」。

この病が、いかに身近なものか伝えたい、とBuzzFeed Newsの取材を受けてくれた。

彼女の表情が、少し暗くなる。患部に水ぶくれやただれができ、10日間ほど症状が続いた。擦れると痛み、シャワーもトイレも億劫なものだった。

WHO(世界保健機関)によれば、ヘルペスのウイルスの感染力はとても強く、人との接触によってうつる。症状が現れているときが特に危険だが、無症状のときにも感染する力があるのも特徴だ。

完治する治療法は、まだ見つかっていない。薬を使い、症状が早く消えるのを助けるしかない。ウイルスは一生体内に潜みつづけ、体力低下やストレスによって、再発を繰り返してしまう。症状や痛みは、人によって程度が異なる。

数年が経ち、彼女が再発を確認したのは2回。いずれも症状も痛みも軽かった。

厚生労働省は、全国で毎年9000人前後の性器ヘルペスの発症が新たに確認され、20代、30代の女性がとりわけ多いとしている。

ヘルペスといえば、多くの人が知るのは「口唇ヘルペス」ではないだろうか。

口のまわりにチクチクした違和感や痛みを覚えると、水ぶくれができる。数日経つと、かさぶたになり、やがて消える。そして、ふとした時に再発する。

誰でもうつる可能性があるし、その逆もある。不特定多数とキスや頰ずりをすれば、感染拡大にもつながってしまう。それは、性器ヘルペスと同じだ。

記者の私も、口唇ヘルペスに悩んでいる。今年は、3回発症しており、薬を常にカバンにしのばせている。

この口唇ヘルペスが、性器に感染すると知っていますか?

厚労省によると、性器同士の接触だけが性器ヘルペスになる原因ではない。口唇ヘルペスを持つ人の手やオーラルセックスを通して、相手の性器にウイルスがうつることもある。

また、経口感染する性感染症では、パートナーの口にうつると症状が現れない場合が多い。そのパートナーが、別の人とセックスをすれば、自覚がないままにその人の性器にうつす恐れだってある。

WHOは今年1月、こんなデータを報告した。

推定で、世界の50歳未満の67%が、主に口唇ヘルペスを引き起こすHSV-1に感染している。また、15歳から49歳までの11%が、性器ヘルペスをもたらすHSV-2を持っているという。

どんな人にも、決して遠い話ではない。

彼女もまた、セックスをした男性の口唇ヘルペスによって、性器ヘルペスになったのではないか、と考えている。

20代の男性「めっちゃケアったつもりでした」

「手さえ洗っていれば、うつらないと思っていました。こんな簡単にうつるなんて」

そう話すのは、パートナーの女性が性器ヘルペスと診断された20代の別の男性だ。自分の唇に口唇ヘルペスによるかさぶたが残っていたのに、セックスをしたという。

「性器にうつると知っていたので、めっちゃケアったつもりでした。それでも、うつってしまったんです」

ただ、互いに結婚を考えている以上、いつかはうつってしまうのでは、とも考えていた。両親も口唇ヘルペスを持っており、自分もおそらく家族内感染だったからだ。

「お互いリスクをちゃんと知っておいたほうがいい。症状が出ているときは、絶対にセックスをすべきではないです」

「誰にうつされたか調べられない」

感染すれば、現在のパートナーを疑ってしまうもの。

しかし、性病科のあおぞらクリニック新橋院の内田千秋院長は、「あなたの『うつされた』は間違いかも」と、原因特定の難しさを指摘する。

「それまで自覚症状がなく、たまたま現在のパートナーと交際中に発症することもあります。最後に性行為をした人が本当にうつしたのか、何が感染源だったのかは、調べられません」

そして、現実をこう話す。「予防といった予防はできません」と。つまり、セックスをする以上、感染を100%防ぐことはできない。

では、性器ヘルペスを持つ人は、セックスをしてはいけないのか。

できるだけ感染を防ぐのが賢明だ。内田院長は、無症状でも感染力があることを前提に、こう話す。

「最大の予防策といえば、症状が表に出ているときに”やらない”ことです」

それでも内田院長は、こう強く訴える。「性器ヘルペスになったら、性行為をしてはいけない、というのは間違っています」。

感染者がセックスをしてはいけないとするならば、口唇ヘルペスを持つ私をはじめ、多くの人だってキスもセックスもしてはいけないことになる。

だからこそ、パートナーと正しい知識を持ち、感染を防ぐようにするしかない。パートナーの理解する努力も求められる。妊娠を目的としたコンドームなしのセックスをするならばなおさらだ。

厚労省は、男性用コンドームを使い、女性の性器にラップなどをつけることで、感染リスクを下げられるとしている。睡眠不足やストレスを減らし、体力が落ちたときにはセックスを控えることも大切になる。

内田院長は、発症の有無にかかわらず、パートナーと互いに検査を受けることを勧める。早期発見・早期治療が、悪化させない鍵になる。

「人生が大きく変わるわけではありません」

感染するリスクは誰にでもある。うつっても、命にかかわるわけではない。だから、内田院長は「悲観的にならないように」と感染していない人にもそう呼びかける。

告白してくれた女性も、こんな気持ちを持つ。

「今でも恨んでいないし、謝罪もいりません。うつるときには、うつってしまうと思うし、どっちにも責任はないですよね」

性器ヘルペスはまだ、身近なものと思われておらず、理解が進んでいない。だから、「みんなに知ってもらいたかった」。

かつてのパートナーとは、セックスをする関係はやめた。これから出会う男性には、できればうつしたくない。でも、伝えるには、相当な勇気がいるのも事実だ。

「相手に話せるかまだわからない」と語っていた彼女。インタビューの最後、気持ちに変化があった。

「彼氏が新しくできたら、伝えたい、ちゃんと伝えられる、と思っています」

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