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【アップデート】開会式前日に演出担当者解任 不祥事相次ぐ東京五輪の歩みを振り返る

東京五輪の開会式が7月23日に行われる。しかし、その前日に演出担当者が解任されるなど、2013年に五輪の東京開催が決まってから8年、様々な問題が続いてきた。

東京五輪開会式が、いよいよ7月23日に行われる。

2020年の五輪開催地が東京に決まってから8年。新国立競技場の設計見直しをはじめ、さまざまな問題が起きた。

開会式前日の7月22日には、開会式と閉幕式の演出を担当する小林賢太郎氏が、かつてユダヤ人の虐殺をコントのネタにしていたとして、解任された。

この8年を振り返る。

2015年7月:新国立競技場の計画「白紙に」

2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場。

当初、デザインを担当していたのは世界的建築家のザハ・ハティド氏だった。しかし、その特殊な構造が整備費を押し上げる要因になったとされ、2015年7月17日、安倍晋三首相(当時)は「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すと決断した」と発表した。

この時、ハティド氏のデザイン案は当初予算の1300億円を大きく上回る3000億円以上のコストがかかることが指摘されていた。

ザハ・ハティド氏の事務所はこの決定に反論する声明を発表。

事務所は価格高騰はデザインのせいではなく、東京における建築コストが増大したことなどにあるとし、コストを削減したデザインを日本スポーツ振興センター(JSC)提案していたが、受け入れられなかったとしている。

《設計プロセスをゼロからまた開始しても、新国立競技場の見積り増大の要因となった根本的な問題はいずれも解決されません。むしろ着工の大幅な遅延を招き、さらなる問題となる可能性があります》(声明より)

白紙撤回後、決定したのは1600億円規模のデザイン案だった。しかし、資材の高騰などをうけ、最終的には建設費は2520億円に達している。

2015年9月:エンブレムのデザインも白紙に

2015年8月、アートディレクターの佐野研二郎氏がデザインした東京五輪の公式エンブレムが発表された。

しかし、佐藤氏のデザインに対し、ベルギーのデザイナーが自作を盗作されたと主張。訴訟を起こした。

大会組織委員会は9月1日、ロゴの盗作疑惑は否定しつつも「放置できない問題」であると説明。

公式エンブレムのデザインを撤回し、改めて公募することを決定した。

2017年4月:新国立競技場の現場監督が自殺

新国立競技場のデザイン案の撤回、そして新たなデザイン案の決定により着工が当初予定よりも1年2ヶ月遅延。その影響から、建築現場では業務の負担が増加していた。

2017年4月には、当時、新国立競技場の建設現場で現場監督を務めていた20代の男性が自殺している。

朝日新聞の取材に対し、自殺した男性と同じ現場で働いていた別の現場監督は「新人なのに、通常の2倍以上の仕事を任されていた。いくら何でもさばききれるはずがない」などとコメントしている。

遺体のそばには、次のようなメモが残されていたという。

《身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした。家族、友人、会社の方、本当にすみませんでした。このような結果しか思い浮かばなかった私をどうかお許しください》

2019年1月:JOC会長の贈賄疑惑

日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(当時)が贈賄に関与した疑いがあるとして、フランス当局が捜査を開始したと報じられた。

疑惑は2016年春の段階から指摘されており、日本の五輪招致委員会がIOC委員を務めていたラミン・ディアク国際陸上競技連盟(IAAF)前会長の息子に2800万シンガポールドル(約2億2000万円)を支払ったとされるもの。

竹田会長は一連の報道に対し、「招致委員会は、ブラック・タイディング社とのコンサルタント契約に基づき正当な対価を支払ったものであり、贈賄にあたるような不正なことは何も行っていないことを私は説明いたしました」とコメントした。

その後、6月に竹田会長は任期満了をもってJOC会長を退任した。

2019年4月:当時の五輪相が問題発言で辞任

2019年4月10日、桜田義孝五輪相(当時)が辞任した。

桜田氏は自民党の高橋比奈子衆院議員の政治資金パーティーに出席した際、「復興以上に大事なのは高橋さん」などと発言したことが問題視されていた。

2019年2月にも競泳の池江璃花子選手の白血病公表に、「金メダル候補ですから。日本が本当に期待している選手ですから、本当にがっかり」とコメント。不適切との指摘を受けていた。

2019年10月:東京五輪のマラソン会場が札幌に

IOCは2019年10月16日、東京五輪のマラソン・競歩の会場を東京から札幌へ移す方針を表明した。

この方針は酷暑を懸念したものであると、説明されている。

小池百合子・東京都知事は「都として札幌開催には同意できないが、IOCの決定は妨げない。あえて申し上げるなら合意なき決定」とコメントしていた。

IOC、国、東京都、大会組織委員会の協議を経て、札幌への会場変更が正式に決定。

IOCのトーマス・バッハ会長はこの決定について記者会見で「日本の方々は少しも心配する必要はない。日本で開催されるのだから、とても喜ぶことができる」と述べた。

2020年3月:新型コロナで1年延期に

2020年夏の開催が目前に迫った3月24日、政府は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を理由に、東京五輪の1年延期を決定したと発表した。

五輪の124年間の歴史の中で、戦時中の1916年、1940年および1944年に大会が中止されたことはあったが、大会そのものが延期されるのは史上初。

安倍首相(当時)はIOCのバッハ会長と「遅くとも2021年夏までに開催する」ことで合意したと説明した。

2021年2月:女性蔑視発言で森喜朗会長が辞任

大会組織委員会の森喜朗会長(当時)は2021年2月、JOC評議員会で「女性がたくさんいる会議は長くなる」と発言し、批判が殺到した。

森氏は2月4日、自身の発言について「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であった」と謝罪し、撤回。

記者会見では記者に「おもしろおかしく書きたいだけだろ」と噛み付く場面もあった。

批判が収まることはなく、2月12日、森氏は大会組織委員会会長を辞任する意向を示した。

しかし、辞意を表明した場で自身の発言について「私はそういう意図でものを言ったわけじゃないんだが」とコメント。「意図的な報道があった」とも語り、反省した様子はなかった。

2021年3月:容姿を侮蔑する企画を提案、開閉会式の統括が辞任

東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の演出を統括するクリエイティブ・ディレクター佐々木宏氏(66)が、タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱する不適切な演出案を発案していたと週刊文春が報じたことを受け、辞意を表明した。

演出案は、豚の格好をした渡辺さんを「オリンピッグ」として登場させるというもので、演出チームのメンバーの反対で取り下げられた。文春オンラインは、その際のLINE上のやりとりを公開していた。

佐々木氏は「ご不快な思いをさせてしまった」「自分の意識の低さ、無神経さにあらためて、気づいた」などとする謝罪コメントを組織委員会を通じて発表した。

自身の容姿を侮蔑する演出案が出されていた中、タレントの渡辺直美さんは吉本興業を通じて「正直驚いています」「私自身はこの体型で幸せです」とコメントした

2021年3月:聖火リレーがスタート、辞退続出

東京五輪は開催できるのか、疑問の声も上がる中で3月25日、聖火リレーがスタートした。

しかし、スケジュールの都合などから著名人の参加自体が続出。

加山雄三さん、斎藤工さん、黒木瞳さん、TOKIO、広末涼子さん、香川照之さん、藤井聡太さんらが辞退した。

また、田村淳さんは組織委員会の森喜朗氏の「オリンピックはコロナがどんな形であっても開催するんだ」という発言を受け、聖火ランナーを辞退したことを発表している。

2021年6月:専門家「開催にともなうリスクかなりある」

26人の感染症対策の専門家らは6月18日、東京五輪を来月から開催した場合の感染拡大リスクに関する独自の提言を、政府と大会組織委員会に提出した。

提言は、「無観客での開催が最もリスクが少ない」とし、もし観客を入れる場合は、現在のイベント開催基準よりも厳しい基準を採用するべきだと説明。

首都圏の人の動きはすでに増加傾向であることや夏は旅行や帰省などで人の動きが活発化することを踏まえ、五輪がなかったとしても、感染が比較的落ち着いている地域においても急な感染拡大のリスクがあると分析した。

今夏の五輪開催をめぐっては、政府分科会の尾身茂会長は国会で「今の状況でやるというのは普通はない」「やるなら強い覚悟で」と答弁している。

感染拡大に伴い政府は東京都に対し、4度目の緊急事態宣言を発出。7月には首都圏や福島県などで五輪の無観客開催が決定した。

2021年7月19日:開会式の作曲担当、小山田圭吾さんが辞任

東京オリンピック・パラリンピックの開会式に作曲担当として参加していたミュージシャンの小山田圭吾さんが7月19日、辞任の意向を表明した。

小山田さんは音楽誌「ロッキング・オン・ジャパン」の1994年1月号に掲載されたインタビューで、中学時代に障害のあるクラスメイトなどをいじめていた経験について語っている。

性的な暴行も含む苛烈ないじめを「武勇伝」として披露したかのような内容に改めて注目が集まり、抗議の声が広がった。

小山田さんは7月16日、「学生時代、そしてインタビュー当時の私は、被害者である方々の気持ちを想像することができない非常に未熟な人間であったと思います」などと謝罪。

19日に組織委員会に辞任の申し出をしたことを明かした。

組織委員会は当初、「我々は現在は高い倫理観を持って創作活動するクリエーターと考えている。開会式準備における貢献は大きなもの」とし、留任する方針を示していた。

しかし、本人からの辞任の申し出を受け、この方針を撤回。辞任を受け入れた。

7月20日:関連プログラムに出演予定の絵本作家が出演辞退

東京五輪・パラリンピックの公式文化プログラム「東京2020 NIPPONフェスティバル」の1つに出演を予定していた絵本作家のぶみさんが、出演を辞退した。

中学生の時に教師に腐った牛乳を飲ませたことなどを自伝に記しており、SNSで批判が集まっていた。

『ママがおばけになっちゃった!』『このママにきーめた!』など、絵本の内容についても疑問視する声があがっていた。

公式サイトには「※のぶみさんご本人のご意思により出演は辞退されました」というメッセージが掲載された。

7月22日:開閉幕式の演出担当者、ユダヤ人虐殺をネタにしていたとして解任

組織委は開会式前日の7月22日、開会式と閉会式の演出を担当する元お笑い芸人の小林賢太郎氏を解任すると発表した。

小林氏はお笑いコンビ「ラーメンズ」時代の1998年に発売されたビデオ内のコントで「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」と発言していた動画がネットで拡散。

米国のユダヤ系人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは「だれであろうと、どんなにクリエイティブであろうと、ナチスの大量虐殺被害者をあざ笑う権利はない。この人物が東京五輪に関与することは、600万人のユダヤ人の記憶への侮辱であり、パラリンピックを冷酷にあざ笑うことを意味する」との声明を出していた。

組織委の橋本聖子会長は22日の会見で「開会式が目前に迫る中、多くの関係者、国民、都民にご心配をお掛けしたことを深くおわびする」と謝罪した。

UPDATE

組織委の小林賢太郎氏解任発表に合わせ、記事内容をアップデートしました。