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五輪開催で住まいを失った人々が、ホテルを追い出される? “路上生活者排除”も… 支援団体が危惧する「最悪の事態」

五輪開催の影響が生活困窮者支援の現場にも出ている。観客を入れて開催する場合の需要増加に備え、ビジネスホテルの部屋を確保することが困難になっていると支援団体は警鐘を鳴らす。

東京五輪の開催期間中、生活困窮者が路上に追いやられる可能性が浮上している。

これまで東京都では各区市が中心となり、生活保護申請者や生活困窮者に一時宿泊場所としてビジネスホテルの部屋を提供してきた。しかし、五輪開催の影響で宿泊場所を7月22日までしか確保できないケースが増えているためだ。

反貧困ネットワークはじめ生活困窮者支援を実施する団体は7月7日、東京都に対し緊急の要望書を提出した。支援団体は実態把握とともに、住まいを失った人々へ適切な支援を行うよう求めている。

五輪の開催でホテル確保が困難に

Nurphoto / NurPhoto via Getty Images

東京都において住まいを失った人々は、国の制度である「生活保護」、もしくは東京都独自の仕組みである「TOKYOチャレンジネット」を利用し、ビジネスホテルに一時的に宿泊している場合が多い。

しかし、こうした宿泊場所の確保が五輪開催の影響で困難になりつつあるという。

ビジネスホテルが利用できない場合、自治体の福祉事務所は簡易宿泊所(ドヤ)や相部屋が基本の無料低額宿泊所を案内する。だが、こうした環境はビジネスホテルに比べ劣悪な環境となるため、入居することを望まない人が多いのが実状だ。

また、昨年4月には厚労省がコロナ禍においては、住まいを失った人への一時宿泊場所は原則個室とするよう求める通知が出されており、改善が進みつつある。

しかし、ホテルの部屋が確保できなければ感染リスクの高い環境での生活を余儀なくされる人が増えるおそれがある。

支援団体は五輪期間中、宿泊場所の確保が難しい場合でも、住まいを失った人々がビジネスホテルの個室に滞在できるよう図るよう要望。

生活保護申請に伴う一時宿泊場所をあらかじめ一定数確保することや、「TOKYOチャレンジネット」を利用する人が住まいを失わないようにすること、そして一時宿泊場所からできる限り早く住居の確保へ移行できるよう求めている。

現場では「五輪が無観客開催になる可能性にかける」という声も

Yuto Chiba / BuzzFeed

反貧困ネットワークの瀬戸大作さん(中央)

東京都を中心に生活困窮者への相談対応を行う反貧困ネットワークの瀬戸大作さんは「ビジネスホテルを利用することになった場合、基本的には1カ月提供される。しかし、先週から7月22日の朝には退去してほしいと言われる事例が増えた」とコメント。

こうした現象は1つの区市に限った話ではなく、すでに都内の7つの自治体で確認されているという。

一時宿泊場所として提供されるホテルは事前に区市や都が確保しているものではなく、あくまで利用の希望があった際に福祉事務所がホテルの空室状況を確認した上で用意される。

7月23日に東京五輪が始まることが予定されているが、もしも観客を入れて開催するとなった場合、ホテルの需要が増える。そうした需要増加を考慮し、7月22日以降の宿泊予約を受け付けないホテルが増えているという。

「『五輪が無観客開催になる可能性にかける』と語る福祉事務所の担当者もいます。もしも22日朝に多くの生活困窮者が一斉退去することになった場合、どうするのか。対応を聞きましたが、今の時点ではわからないと言われてしまいました」

「新型コロナによる影響が長期化する中で、日々、生活保護を申請する人々は増えています。しかし、数日以内に都内では宿泊可能なビジネスホテルがなくなるかもしれません。代わりに案内される無料低額宿泊所なども余裕がある状態ではなく、埋まってしまう可能性もあります」

池袋で長年、路上生活者を支援するNPO法人TENOHASIの清野賢司さんも次のように懸念を示した。

「コロナでなければ就職してくださいという話になるかもしれないが、仕事もない。住み込みで生活することもできない中では、生活保護を申請するしかない。しかし、このままでは泊まれるホテルもなくなる。住まいを失った人々が安定した生活につながるための道のりが遠くなります」

「国が場当たり的な中で、都の対応も場当たり的」

Yuto Chiba / BuzzFeed

一般社団法人つくろい東京ファンド代表の稲葉剛さん

五輪を有観客で開催した場合、ホテルの需要が増加し、生活困窮者支援に影響を及ぼすことは事前に想定できたはずだ。

支援者らは都の対応が場当たり的なために混乱が生じており、コロナ禍で生活困窮者を取り巻く環境は一貫して見通しの見えない状態だと指摘する。

支援団体と都の話し合いでは、担当部署である福祉保健局生活福祉部の保護課長から「五輪が無観客になるかどうかを見極めてから判断したい」との発言があったとした。

一般社団法人つくろい東京ファンド代表の稲葉剛さんは「そもそも国の対応が場当たり的、開催についての方針がこの段階で決まっていないこと自体信じられません。国が場当たり的な中で、都の対応も場当たり的になっている」と苦言を呈す。

「個人的には感染が拡大している中で、コロナの影響が長期化し、貧困が深刻化している。支援現場は野戦病院のような状態が続く中で、五輪開催には反対です。そうした中で開催が強行されることで、こうした影響が出ることはあってはならない事態だと感じています」

あわせて都内では路上生活者の荷物に張り紙が貼られるケースなどが増えているという。

稲葉さんは「普段から一方的に排除するのではなく、支援すべきと伝えている。このままでは、五輪期間中にホテルから追い出されることで新たにホームレス状態に陥る方が続出する可能性がある。しかし、路上からも排除されてしまうという最悪な事態も想定される」と、強い危機感を示した。

Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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