イランメディアの「ミサイル攻撃で米兵80人死亡」は誤報か 米イラン沈静化の背景

    イラン革命防衛隊がイラク駐留米軍をミサイル攻撃したが、トランプ氏は「イランは身を引いているようだ」と報復を控える考えを示した。なぜ両国の対立が起き、正面衝突を避けたのか。

    日本でも一時「ミサイル攻撃で米兵ら80人が死亡」という情報が流れた。出元はイラン国営メディアだ。

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    米軍がイラン革命防衛隊幹部のソレイマニ司令官を殺害した報復として、イラン革命防衛隊は1月8日未明、イラク西部にあり、米軍が駐留するアイン・アルアサド空軍基地に向けて10数発のミサイルを発射した。

    この攻撃について、イラン国営放送の国際版Press TVは「断固たる報復」というハッシュタグをつけ、この攻撃で米兵ら80人が死亡したと伝えた。メヘル通信など複数の国営メディアが、ペルシャ語や英語などで同じ内容を伝えた。

    一方でトランプ大統領は、米軍にもイラク軍兵士にも死傷者はなかった、と発表した。「イランは身を引いているようだ」と語り、イランに対し軍事作戦をエスカレートすることを避ける考えを示した。

    イランの複数の国営メディアの報道は「誤報」のはずだ。しかし、9日現在、削除や訂正は行われていない。

    なぜ、イラン国内ではこう報じられたのか。そしてなぜ、両国は拍子抜けするほどあっさりと引き、緊張は解けたのか。

    攻撃で死傷者が出なかった理由

    攻撃に込めたイランのメッセージ

    Iran took & concluded proportionate measures in self-defense under Article 51 of UN Charter targeting base from which cowardly armed attack against our citizens & senior officials were launched. We do not seek escalation or war, but will defend ourselves against any aggression.

    アイン・アルアサド基地は、イラク西部アンバル州にある。イラクの東隣に位置するイランから見て、もっと近い米軍駐留地は、ほかにもある。

    それでも、この基地を選んだ理由がある。

    イランのザリーフ外相は「イランは国連憲章51条に基づく自衛策として、我々の市民や高官に向けた卑怯な攻撃が発進された基地を攻撃した。我々は戦争のエスカレーションを望まないが、いかなる攻撃からも自衛する」とツイート()した。

    米軍は1月3日にイラク・バグダッドで、無人機からの爆撃でソレイマニ司令官を殺害した。

    ザリーフ外相のツイートは、米軍の無人機が、この基地から発進したということを示唆している。

    こうした状況や事前通告を行ったことなどを総合すると、今回のミサイル攻撃に、イランは次のようなメッセージを込めていたと推測できる。

    ・これはソレイマニ司令官の殺害への報復であり、我々は米軍が司令官を攻撃した手段を把握している。

    ・我々は遠方にもミサイルを正確に発射する能力がある。

    ・米軍に死傷者を出すつもりはない。

    そのうえで、共同通信によるとイランはミサイル攻撃直後「米国がイランに反撃しなければ、対米攻撃を続けない」という内容の書簡を米国に送っていた。

    国家としてのメンツを保つためにも「報復」はする。しかし死傷者は出さない。エスカレートも望まない。ということだ。

    最初から全面戦争を避けようとしていた両国

    司令官殺害とミサイル攻撃の背景にある二つのデモ

    イランでも起きていた政府への抗議

    این ویدیو که مربوط به تهران خیابان ستارخان است امروز به دست بی‌بی‌سی فارسی رسیده. زمان این ویدیو برای بی‌بی‌سی فارسی مشخص نیست اما مربوط به اعتراضات اخیر در پی گران شدن #بنزین است.

    もう一つの伏線は、イラン国内でのデモだ。

    イランでは2019年秋から、ガソリン値上げを発端に政府に対する抗議デモが各地で相次ぐようになった。

    国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、少なくとも304人が治安部隊の発砲などで死亡し、大勢の市民が拘束されて拷問の危機にある、と発表している。

    この状況に、イラン政府は11月に一時、インターネットを遮断して、デモの情報が国外に流出するのを防ごうとした。

    しかし、スマートフォンなどで撮影した、治安部隊が市民を弾圧する映像が、BBCペルシャ語版のTwitterなどに取り上げられ、拡散した。

    最高指導者ハメネイ師は国営テレビで「破壊行為や放火はわが国民ではなく、反革命者とイランの敵の仕業だ」と演説し、デモを批判する強硬姿勢を取った。

    イランが現在の政治体制となった1979年以降で、最大の反政府デモとなったとみられ、イラン政府は対応に苦慮していた。

    ハメネイ師は1月1日、「人々は経済的要求を持っている。そのほとんどは正しいものだ。しかし11月に起きたのは、人々を誘惑する手先を敵が準備していたということであり、国に害をなそうとした」と改めてツイートし、改めてデモを「外敵の仕業」とし、沈静化を求めていた。

    「当て馬」を選んだトランプ氏、米軍に衝撃

    イランは一定の成果を得た

    トランプ氏は手を引く考えを示した

    全面対決を避けても、「戦争」は昔から続いている

    BuzzFeed Newsではイランと米国の対立の背景をさまざまな角度から報じています。

    イランの軍事力と戦略の特徴
    米国とイランの対立の歴史とその理由
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