日本代表にどうして外国人が?トライで何点入るの? 日本はなぜ強くなった? いまさら聞けないラグビー入門

    日本の快進撃で盛り上がっているラグビーW杯。こっそり知りたいこと、実はいっぱいありますよね。

    ラグビーは1チーム15人。前後半それぞれ40分です。

    時事通信

    15人のうち、8人はフォワード。主にスクラムを組んだり、相手にタックルして進撃を止めたりするのが役割です。だから大柄な選手が選ばれます。

    7人はバックス。フォワードが押し込んで運んだボールを受け、走って相手のディフェンスをかき乱しながらパスを回し、トライにつなげます。俊敏でボールのハンドリングやキックが上手い選手が主体です。

    試合時間は前後半それぞれ40分。今回のW杯では、40分が過ぎると「ジャーン」というドラの音が鳴ります。その後、ボールがフィールドから出ると試合終了(=ノーサイド)です。

    だから、ボールを懸命に繋ぎ続けて試合を続行させ、逆転を狙うチームもあります。

    先発の15人に加えて8人がベンチ入りし、先発の選手と交代することができます。

    基本は3つ

    時事通信

    ラグビーの基本は3つです。

    ・ボールを前に投げてはいけない(スローフォワード)
    ・ボールを前に落としてはいけない(ノックオン)
    ・ボールよりも前でプレーしてはいけない(オフサイド)

    スローフォワード

    ボールはすべて、自分より後ろにいる仲間にパスします。ボールを前に進めたい時は、投げるのではなくキックします。

    ノックオン

    ボールを自分の前に落としてはいけない。ラグビーで最も特徴的なルールの一つです。ボールをキャッチする時は、落としても身体の後ろ側にこぼれるよう、半身で構えるのが基本です。

    オフサイド

    ボールよりも前(敵陣側)にいる人は、一度ボールよりも自陣側に戻らないと、プレーに参加できません。

    密集状態になったとき、ボールよりも前にいた選手が一度、密集の最後尾まで戻って再び突っ込んでいくのは、この反則を避けるためです。

    プレー中にボールを大きく前方にキックした場合も、キッカーよりも前にいた選手はオフサイド。後ろから来たボールを直接取ることはできません。

    高く蹴り上がったボールを追って、キッカー本人や、キッカーより後ろにいた選手(オンサイドの選手)が全速力で走る場面があるのは、この理由からです。

    ラグビーのポジションと背番号

    Yoshihiro Kando/BuzzFeed

    背番号は個人に与えられるのではなく、先発のポジションで決まっています。ある試合で先発した選手が次の試合で控えになると、背番号も変わります。

    5点>3点>2点 得点のパターンは3種類

    トライ=5点

    時事通信

    敵陣のゴールラインから先でボールを接地させるのが、ラグビーの華、トライです。

    一挙に5点入ります。

    10月5日現在、初戦のロシア戦で日本W杯史上初のハットトリック(3トライ)を決めた松島幸太朗選手(写真中央)が計4トライ(20得点)。出場全選手中で同率1位。福岡堅樹選手(写真右)も2トライ(10得点)を決めています。

    2人とも、最大の武器はその俊足。主なポジションは左右のウイングで、敵陣を切り裂いてトライを狙う役回りです、

    アイルランド戦での日本の見事なトライ

    #JPNvIRE 福岡堅樹 @kenki11 🌸のトライに繋がった、素晴らしいブレークダウンと素早い球出し🏉 #RWC2019 #RWC静岡

    Via Twitter: @rugbyworldcupjp

    キックでの得点には3種類

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    トライすると、その地点から見て縦の延長線上の好きな位置から、キックでゴールを狙う権利が与えられます。

    これがコンバージョン。決めると2点です。トライして、コンバージョンも決めれば計7点が一気に入ります。

    あと2種類のキックゴールは、それぞれ3点

    キックによるゴールには、コンバージョンのほか、ペナルティーゴールと、ドロップゴールがあります。

    ペナルティゴールは、相手が重い反則した時に、反則が起きた地点からゴールポストを狙って蹴る権利が与えられます。決めると3点入ります。

    ドロップゴールとは、プレー中にボールを地面にワンバウンドさせてからゴールポストを直接狙って蹴り、決めるゴール。これも3点です。

    パスでボールを回していた選手が相手の隙を突いて突然ドロップゴールを狙い、見事に決まるとスタジアムは興奮のるつぼとなります。

    日本代表でキックの名手と言えば

    時事通信“, 時事通信

    日本代表でキックの名手といえば、前回2015年大会で、「ルーチン」と呼ばれる精神統一のための独特のポーズで沸かせたフルバックの五郎丸歩選手(写真)。

    そして今回の大会で五郎丸選手に代わりキッカーを務める田村優選手()です。

    田村選手はサモア戦までの3試合でコンバージョンとペナルティで計15本のゴールを決め、40得点。10月5日現在で各国得点ランキングのトップの座にあります。

    このまま日本が勝ち進めば、W杯得点王も狙えるという素晴らしい成績を上げています。

    ポジションはスタンドオフ(背番号10)。バックスの司令塔役でもあります。

    スクラムはいつ組むの

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    スクラムは、双方8人のフォワードが組み合い、背番号9のスクラムハーフというバックスの選手がボールを転がし入れて押し合うプレー。

    相手が一定の種類の反則した時、自分のボールでスクラムを組んで、プレーを有利に再開することができます。

    そのまま相手を押し込んで前進することも、スクラムハーフがボールをすぐ取り出してバックスに回すこともあります。

    スクラムになるとフォワードもバックスもそれぞれ陣形を整えます。どうやって攻撃をするかを決め、密かにサインを交わすこともあります。

    ラグビーは一見、力任せなスポーツに見えますが、さまざまな動きのパターンを事前に練習して身体にしみこませたうえ、状況に合わせてどれで行くかを瞬時に決め、チーム全体で意思統一しているのです。

    タックルって危なくないの?

    時事通信

    豪快なタックルは、ラグビーの魅力の一つです。一方で鍛え上げた選手にとっても危険を伴うプレーです。

    だから安全を確保するためプレーの基本を守り、さらにさまざまなルールに従う必要があります。

    例えば相手の正面からタックルに入る時は、膝で顔を蹴り上げられないよう頭を右か左に寄せてやや斜めから入り(=写真)、両腕で相手の足を引き寄せてバランスを崩し、倒します。

    首から上をタックルするのは極めて危険なため、重大な反則です。相手を持ち上げてからたたき落とすことも禁止です。

    悪質と判断されれば、イエローカード(10分間の一時退場)や、レッドカードで一発退場となります。

    タックルした選手は、一度立ち上がる義務があります。寝転がったままボールを抱え込んだり、相手のプレーを妨害したりすると反則です。

    自分がタックルされても、ボールを速やかに仲間に渡すか地面に置いて手放さなければ、反則となります。

    平手で相手を吹っ飛ばすのはOK。でもグーパンチは厳禁

    AFP=時事

    自分がボールを持って走っている時、タックルしようと迫ってくる相手選手を平手で払いのけることは「ハンドオフ」と呼ばれ、OK。防衛策の一つです。

    ただし、握りこぶしで殴るようなことは厳禁。危険な行為としてイエローカードかレッドカードが出る可能性もあります。

    必ず手のひらを開いてプレーする必要があります。

    ラインアウトって?

    時事通信

    ボールが左右のフィールド外に出ると、双方が並び、ボールを外に出した側ではないチームがボールを投げ入れ、プレーが再開されます。これがラインアウトです。

    ただし、相手の反則でペナルティキックを得て直接蹴り出した場合は、蹴った方のボールとなります。

    ラインアウトは、ボールを前に運ぶ大きなチャンス。この時も事前に、だれがボールを取ってどう動くかを決め、サインで伝えています。

    外国籍の選手も日本代表でプレーできるのはなぜ?

    時事通信

    ラグビーでは、国籍が異なる選手も、一定の条件を満たせば代表チームに入ることができます。

    今回の日本代表に選出された31人のうち、15人が外国籍、あるいは外国出身で日本国籍を取得している選手です。日本のほか、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、韓国、トンガ、サモアの6ヵ国から集まっています。

    国際ルールでは、代表チーム入りの資格は

    ①その国・地域で出生

    ②両親または祖父母のうち1人がその国・地域生まれ

    ③直前の3年間続けてその国・地域に住む

    ④通算10年居住する

    のうち、一つを満たすこと。

    主将のリーチマイケル選手(写真)は、ニュージーランド生まれ。15歳で留学生として来日し、2013年に日本国籍を取得しました。

    一方、ピーター・ラブスカフニ選手()は南アフリカ出身。2016年に来日して③の条件を満たしたため、南ア国籍のまま日本代表に選出され、チームに欠かせない選手となりました。

    日本ラグビー協会は、リーチ選手のように日本国籍を取得した選手は姓名の順で続けて表記。外国籍の選手は名と姓の順で間に「・」を付けて表記しています。

    そして、外国出身選手が活躍しているのは日本代表だけではありません。各国・地域の代表で、多くの選手がプレーしています。

    ラグビーの代表は「国家」の代表ではない

    AFP=時事

    オリンピックと違い、15人制ラグビーの代表チームは、「国家」の代表ではありません。それぞれの地域のラグビー協会を代表しています。

    日本をはじめ多くの国は一国に一つのラグビー協会がありますが、そうではない国もあります。

    たとえばW杯に「英国代表」は存在しません。

    英国にはイングランド、スコットランド、ウエールズのそれぞれに独立したラグビー協会があり、今回のW杯に代表チームを送り出しています。このあたりは、元々同じスポーツから枝分かれしたサッカーと似ています。

    残念ながらW杯に出場したことはありませんが、香港にも中国大陸からは独立した協会があり、「香港代表」が存在します。

    逆に、日本と対戦した強豪アイルランド代表(写真)には、アイルランド共和国の選手だけでなく、アイルランド島北部の英領北アイルランドの選手が含まれています。

    独立運動と宗派対立からアイルランドが南北に分裂する以前から、アイルランド・ラグビー協会はアイルランド島全体を統括し、帰属を巡り北アイルランド紛争が起きた時代にも、アイルランド統一チームを結成する伝統が守られてきました。

    W杯でアイルランド代表戦の前に演奏されるのは、アイルランドや英国の国歌ではなく、統一チームの歌「Ireland's Call(アイルランドの叫び)」です。

    日本代表のジョセフ監督はNZと日本で代表選手となった。

    時事通信

    日本代表のジェイミー・ジョセフ監督(ヘッドコーチ)はニュージーランド出身。1995年W杯に「オールブラックス」の愛称で知られる世界最強レベルのチーム、ニュージーランド代表の選手として出場し、準優勝しています。

    その後来日して「3年居住」の条件を満たし、次の99年W杯では日本代表として出場しました。

    当時は複数国・地域の代表に選ばれることに制約はなかったからです。

    現在では、ある国・地域の代表に選ばれて国際試合に出場した経験がある選手は、原則として別の国・地域の代表選手になることはできません。

    そのルールができるきっかけの一つは、ジョセフ氏がオールブラックスから日本代表に転じたことにあります。

    なお、ピーター・ラブスカフニ選手は南ア代表に選ばれたことがありますが、国際試合でプレーしたことはないので、日本代表入りすることができました。

    監督は試合中ベンチにいない。大切なのは自主性。それが日本に伝説の勝利をもたらした。

    AFP=時事

    ラグビーのヘッドコーチは、ベンチ入りすることはできません。

    スタンドの観客席から戦況を見守り、トランシーバーなどを使ってベンチにいるスタッフに作戦や選手交代を伝えていますが、試合の行方の多くは選手に委ねられています。

    ラグビーでは、選手たちの自主性と団結力が重視される伝統があるからです。

    前回の2015年W杯で、日本代表が優勝候補の南アを破り、世界に衝撃を与えました。

    その背景に、選手の自主性の発揮があったのです。

    試合終了間際、南アが自陣の深い位置で反則をおかしました。3点差を南アを追う日本に残された時間は、ラスト1プレーだけ。

    この時、日本には二つの選択肢がありました。

    ①ペナルティゴール(3点)を蹴って引き分けに持ち込み、試合を終える。

    ②スクラムを組み、そこからトライ(5点)を奪い逆転勝利を収める。

    この日のキッカー五郎丸選手は絶好調で、蹴れば決まることは確実。一方でトライを奪う難易度は、遙かに上。まして相手は巨漢揃いの南アです。

    引き分けか、逆転勝利かー。

    スタンドにいる日本のエディー・ジョーンズ監督(現イングランド代表監督=写真)は、引き分け狙いの「ショット(ペナルティーゴールを蹴れ)」という指示を出しました。

    しかし、ピッチにいた日本の選手らは、南アの選手らの疲労を実感し、自分たちが力負けしていないと感じていました。そこで、指示に従わず、スクラムから逆転トライを取ることにしたのです。そして狙い通りにトライを決め、勝利しました。

    ジョーンズ氏はスクラムを選んだ選手らに激怒し、ヘッドセットを投げ捨てました。しかしその後、自分に従わなかった選手らを批判することはありませんでした。

    「引き分けでいい」という弱気な判断をした自らを反省し、最後まで勝利を諦めず自主的にリスクを冒した選手たちを讃えたのです。

    ジョーンズ氏は著書「ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング」(講談社)で、こうつづっています。

    「本当の成功は、部下がリーダーを超えた時に起こる」

    そのうえでジョーンズ氏は、ひたすら指示を守ることを重視しがちな日本社会に対し、自分で判断することの大切さを訴えています。

    「スポーツ史上最大の番狂わせ」といわれた南ア戦の勝利まで、日本のW杯通算成績は7大会で計1勝21敗2分。屈辱を重ねてきた歴史があったのです。

    しかし、あの勝利をきっかけに、日本の快進撃が始まりました。現在の世界ランクは8位(10月4日現在)にまで上り詰めています。

    日本人、外国人。国籍や人種、民族の壁を越え、日本に栄光をもたらすことを目指して集まり、団結した選手たち。

    早朝から連日、選手らを徹底的に鍛え上げた世界的名将ジョーンズ氏。

    そして、ついに師を超え、リスクを背負って自主的な判断をしてもぎ取った勝利と自信。

    日本代表の姿には、これからの日本社会のあり方に対する、大いなるヒントがあるのかもしれません。

    UPDATE

    リーグ戦の進展に合わせ、選手の成績などを更新しました。

    Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

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