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「履歴書に写真や性別欄、いらなくない?」ある会社が踏み出した一歩

ユニリーバが、採用の際の履歴書・応募フォームで性別や証明写真、ファーストネームの欄をなくします。

履歴書に写真や性別欄って、本当に必要なのかーー?

日本で一般的に使われている履歴書などに必ずある、性別を書く欄や証明写真用の欄。

しかし「その人の個性や能力に焦点を」と、採用の際の応募フォームで性別や証明写真、ファーストネームの欄をなくした企業がある。

その背景には、どのような思いがあったのか。

日用品・食品大手のユニリーバ・ジャパン(東京都目黒区)は3月6日から、採用の際の応募フォームを一新し、選考の過程で性別に関する質問をなくした。

同社のウェブ上の応募フォームにも、これまで「Female(女性)・Male(男性)・Prefer not to say(答えたくない)」という性別欄があったが、今回それをなくし、紙の履歴書の場合も、性別欄などが無いものをダウンロードできるようにする。

「Prefer not to say(答えたくない)」という欄があったのは、「ジェンダーはグラデーション」とも言われ、まだ自身の性別を判断できていない人、トランスジェンダーの人など様々な人がいるからだ。性別欄廃止も、このような人たちのことを考えた結果でもあるという。

ファーストネームでも性別が分かる場合が多いために、氏名欄も苗字のみにするという。

性別に関係なく「その人がどんな人かを知りたい」

同社の取締役人事総務本部長の島田由香さんは「女だから、男だから、その他(のジェンダー)だから、ということではなく、その人がどんな人かを知りたいんです」「当然、日本を変えるつもりでやっています」と話す。

「一社でも多くの企業が同じことをすることを目指しています。『より良い社会が作られるように』という思いです」

企業では、女性職員の育休からの復帰や管理職になる人数など多くの課題があるが、「最初の採用のところで固定概念を取り除いていくことが必要」と、この取り組みに至った。

採用で「男女平等に扱われていない」26.6%

同社が1月24〜28日にインターネット上で実施したアンケート調査では、性別や証明写真が採用の過程で影響を及ぼしていたことが明らかになった。

「採用における、無意識に生じる性別への先入観の調査」は、企業で書類審査など採用を担当することがある会社員や会社経営者424人を対象に実施された。

回答者のうち、約4人に1人にあたる26.6%が、自分の会社の採用過程において「男性と女性が平等に扱われていない」と回答。

「どちらとも言えない・わからない」が23.6%で、「男性と女性は平等に扱われている」が49.8%だった。

また、履歴書のスクリーニングの段階では、44%が「履歴書の写真が合否に影響している」と答えた。

実際に、就活用に良い証明写真を用意しようと、写真スタジオなどで数千円〜1万円など支払い撮影する学生も少なくない。就活生用に証明写真ビジネスが存在しているのも事実だ。

さらに「採用における無意識に生じる性別への先入観」については、回答者の18%は、応募職種から「男性候補者を優先したことがある」と答えた。

このような調査結果を受けて、先出の島田さんは「やはり今の日本では、性別が『要素』となってしまっている」と話す。

「『こうあってほしい』という社会に向けて」

ユニリーバでは、「新卒採用」のほかに、エージェントや社員を通じた「中途採用」や「工場採用」などがある。

工場採用では、採用過程でハローワークなどを通すことが多いため、同社の採用担当に情報が来る前に性別などの情報を見えなくする仕組みをとったという。

中途採用についても、ユニリーバの採用パートナーで、転職サービス運営の「ビズリーチ」の賛同を受け、採用で性別欄などがなくなった。

ビズリーチ執行役員の古野了大さんは、「このような取り組みは、やりたくても実行するのがすごく大変です。ここまでしっかり構築して、実行されたことはすごいと思います」と語る。

ビズリーチの社員採用でも、「性別ではなくその人自身をみる」という趣旨で、応募フォームなどの性別欄をなくしているという。

「私にも、今月4歳になる娘がいます。子どもが大きくなったときに『こうあってほしい』という社会に向けて、一歩を踏み出されたことに、個人としても共感しています」

履歴書の性別欄 #なんであるの

こうした動きは徐々に広がりを見せている。署名オンラインサイトChange. orgでは3月1日の新卒大学生の就活解禁に合わせ、「履歴書から性別欄をなくそう」という署名が立ち上がった。

就職活動における男女差別やトランスジェンダーの人々への配慮などを理由に、日本で主に使われているJIS規格の履歴書などから、性別欄をなくしてと呼びかけている。

署名を始めたのは、労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」。トランスジェンダーの求職者などからの相談を受けたことがきっかけという。経産省や厚生省などにも署名を提出し、国として性別欄をなくすように働きかけをするよう求める。

POSSEの佐藤学さんはBuzzFeed Newsに「性別欄に書き込むことで、カミングアウトせざるを得ない人がいることも知ってほしい」と話した。

オンライン署名に賛同した人々は、コメント欄にこのように声を寄せている。

「私も性別欄の記入をするたびにモヤモヤしてました。そもそも仕事内容に男女の差が無いなら、わざわざ書かせる必要性を感じません。性別より人間性を見るべきだと思います」

「性自認が体の性と一致している人ばかりではありません。性別欄が2つしかないことで、どちらかを選べない人にとっては、その都度ストレスや苦痛を感じたり、社会の中で居場所がないと思わされたりすることになります。わざわざ、男、女と分けなくても、それをいちいち確認しなくても、問題にならないようにすることが、社会の目指すべき姿だと思います」

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【配信先】Twitter: BuzzFeed Japan News(@BFJNews

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