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10万人以上の格差なくす「聞こえる」選挙サイト、2017衆院選前に公開間に合う

「急な解散」で「時間の制約」があり、掲載できなかった情報も。

ヤフー株式会社は10月18日、視覚障害者向けの選挙情報サイト『聞こえる選挙』を公開した。

これは10月22日に投開票が予定されている、衆議院議員選挙のためのもの。なんとか公開が間に合った形だ。この試みは、7月2日におこなわれた都議会議員選挙用に続き、2回目。国政選挙では初となる。

なぜ、視覚障害者にこのようなサイトが必要なのか。そして、どうして公開が直前になったのか。背景にはこれまで知られていなかった視覚障害者の「情報格差」がある。

全国に10万以上いる視覚障害1級の人たちは、事実上、選挙に参加しにくい状況が続いていた。

視覚障害1級では、目が全く見えないか、見えてもごくわずか。それでも、2012年に発表された総務省の調査結果では、91.7%がインターネットを利用している。

このような人たちが頼りにしているのが、「読み上げソフト」だ。利用者がウェブサイト上でカーソルを合わせた場所のテキスト情報を、文字どおり「読み上げ」てくれる。

しかし、このソフトが使えない、それでいて重要な情報がある。それが選挙公報だ。選挙に立候補したすべての候補者や政党の政見などを記載した文書で、公費で有権者に配布される。

この選挙公報は「紙の選挙公報をそのまま画像化したPDFファイル」を掲載することが求められている。画像化されたPDF ファイルは「読み上げソフト」で読み上げられない。

つまり、視覚障害者にとっては「ネットで選挙情報を取得しにくい」という課題があった。そこで、ヤフー株式会社が都議選前の6月22日に公開したのが、読み上げソフトに対応した「聞こえる選挙」だった。

同社の独自調査では、視覚障害者から「立候補者の情報や投票会場がわからなかったことがある」「選挙立候補者の情報がないので、投票意欲がわかない」などの声が上がったという。

「手作業で入力」する現状、「急な解散」だと「時間の制約」があるという課題も。

こちらのサイトにアクセスするか、Yahoo!検索で「聞こえる選挙」と検索すると、衆院選の立候補者のプロフィールをはじめ、東京都小選挙区の立候補者の政策、各政党のマニフェスト、開票結果を確認できる。

読み上げソフトはカーソルを合わせた場所のテキストをとにかく読み上げるので、情報量が多すぎるサイトでは使いにくい。そのため、情報が伝わりやすい構成を意識したという。

情報提供とともに、この課題の啓発も目的としている。「聞こえる選挙とは」のメニュー内にある「このサイトはどう使われるのか」では、健常者向けに、実際にソフトを使った読み上げも疑似体験できる。

しかし、投開票まではあと4日。都議選と比べると「ギリギリ」感は拭えない。同社の広報担当者はBuzzFeed News Medicalの取材に、「急な解散」で「時間の制約」があったと認めた。

選挙公報は画像化されたPDFで公開されるため、基本的に文章は手作業で入力される。今回も都議選に続き、日本最大級の選挙情報サイト『選挙ドットコム』の協力を得たが、選挙公報のすべての情報を掲載することはできなかった。

「都議選では全候補者の政策をサイト上に掲載しましたが、今回は政策の掲載は東京都の小選挙区に留まりました。手作業で入力になるため、伝える側の工数が多くかかるという課題があります」

「視覚障害者の方にご利用いただくとともに、未だにこのような課題があること自体、世の中にまだまだ知られていないため、健常者の方にも、この機会にぜひ、興味を持っていただければと思います」

BuzzFeed Japan Medicalが、都議選前に視覚障害者の当事者の声を取材した記事はこちら