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「“普通”ではない自分」が怖くて仕方がなかった。だから、同世代のあなたに伝えたいこと

「”普通”とは一体誰が決めるものなのでしょう。誰の視点からみた世界が、世の中の”普通”になるのでしょう」

「”普通”とは一体誰が決めるものなのでしょう。誰の視点からみた世界が、世の中の”普通”になるのでしょう」

BuzzFeed Japanは3月6・7日にかけて、オンラインイベント「私たちは2021年の日本をどう生きる?」をYouTubeで配信しました。

イベント2日目のキーノートスピーチに登壇したのは、女子サッカー選手の下山田志帆さん。2019年に女性のパートナーと交際していることを公表し、スポーツのフィールドから多様性について発信しています。

「女子サッカー選手やってます。そして、彼女がいます。」 やっと、自分の10割をさらけ出して自己紹介できる嬉しさ。 家族の前でも、友達の前でも、どこでだって等身大でいたかったから。カミングアウト、手伝ってもらいました。 https://t.co/xE65a53iSt

Twitter: @smymd125

幼い頃から「男性はこうあるべき・女性はこうあるべき」という社会のジェンダーバイアスに押しつぶされ、どちらにもうまく当てはまらない「普通ではない自分」が怖かったという下山田さん。

それぞれが自分らしく生きられる社会に向けて、下山田さんが呼びかけることとは。スピーチの全文を掲載します。


BuzzFeed Japan オンラインイベント「私たちは2021年の日本をどう生きる?」をご覧の皆様、こんにちは。下山田志帆です。

今回、このようなメッセージを通して、ミレニアル世代&Z世代の皆さんと交流する機会をいただけてとても光栄です。

まず、簡単に自己紹介をさせていただくと、私は女子サッカー選手です。

現在、なでしこリーグ1部のスフィーダ世田谷FCというチームに所属しています。

2年間、ドイツでプロサッカー選手をしていたこともあります。

1994年生まれのミレニアル世代で、茨城県結城市という田舎町で生まれ育ちました。

同性のパートナーと同棲中で、東京都世田谷区在住です。

私を構成する要素をいくつかピックアップしながら、自己紹介をしました。 今日、私がこの場でメッセージを伝えることになった理由は、さっきの自己紹介の要素の1つでもあった「同性のパートナーがいる」ことが関係しています。

私にとっては、「同性のパートナーがいること/女性が好きであること」は、自分を構成する要素の1つでしかありません。

ですが、残念なことに今もなお、いわゆる異性愛者であり・割り当てられた身体の性と性自認が一致している人以外は、普通ではないという偏見があると感じずにはいられないのです。

私自身、自分が女性が好きだとはっきりと認識したのは、高校1年生の時でした。

中学生の時、友達がみんな彼氏の話で持ちきりなのに全く共感できず、自分は人を好きになれないんだ、普通じゃないんだと思っていました。

でも、高校は女子校に進学し、女子生徒同士の恋愛が当たり前のように行われている環境を目の当たりにした時、こんな恋愛の仕方もあっていいんだとホッとしたのを覚えています。

高校1年生の時、自分が女性が好きだということに気がついた一方で、自認する性については長い期間揺らぎ続けていました。

自分が女性であることは理解していて、でも女性として扱われることは生理的に嫌で。でも男性になりたいのかは微妙…。男性になりたいかわからないと思っている時点でトランスジェンダーではないのでは…?など、男女どこにも定まらない性のあり方に葛藤していました。

そのように、高校1年生の頃から女性が好きで自認する性が定まらない自分にずっと葛藤していた私ですが、そのことを自分ではない誰かに話せるようになるまで3年、現在のようにフルオープンになるまでに9年の歳月がかかっています。

なぜ、そんなにも葛藤し続けてきたのかといえば、「男性はこうあるべき・女性はこうあるべき」という社会のジェンダーバイアスが私を押しつぶしていたのだと思います。そして、そのどちらにもうまく当てはまらない「普通ではない自分」が怖くて仕方なかったのだと思っています。

高校生の頃、付き合っていた彼女に「ナヨナヨしないで」「重い荷物をもって」と言われるたびに、男らしくなければならないと思っていました。

同性と付き合っている先輩を指導者が別れさせていたり、「ここは女子チームなんだから髪の毛伸ばせよ」といじられたるたびに、チームにとっては何が問題なのかが理解できずにいました。

同じチームの先輩から「男性っぽくしてる人って、女の子からかっこいいって言われて勘違いしてるだけだと思う」と言われ、「しもみたいに見た目は男っぽいけど普通の人もいるじゃん」と勝手に決めつけられた時も、みんなの普通には当てはまらない自分が良くないんだとネガティブな気持ちを飲み込んできました。

私が大学生の頃、LGBTなんて言葉はまだまだ認知度が低くて、図書館にいっても2.3冊しか関連する本が置いてなかった。

でも、時代は進み、LGBTQというワードの認知度は一気に高まりました。そして、もはやLGBTQというワードでは表せないくらい、様々な性のあり方があることも認識され始めています。一説では、性のあり方には2000通りあるとまで言われているくらいです。

そうやって、皆それぞれが違う性のあり方だと認識され始めている今、”普通”とは一体誰が決めるものなのでしょうか。誰の視点からみた世界が世の中の”普通”になるのでしょうか。

現在付き合っている彼女は、大学4年生の頃に付き合い始め、今年で付き合いは5年目になります。

彼女はいつも「髪が長い方が似合うよ」「柔らかい色の洋服が似合うね」「私の方が力持ちだから荷物持つよ」(←おい笑)と、男女の枠ではなく人と人の付き合いとして接してくれます。

下山田志帆という人を見てくれる、そんな彼女と一緒にいると自分を好きになれるように感じています。

ドイツでサッカーをしていた時、女性・男性という枠組みの中にもたくさんの性のあり方があることに驚きました。

むしろ、女性・男性という箱があることすらみんな気にしていなくてようにすらも感じました。みんなが自分の選択に誇りを持っていて、あくまでもその選択の積み重ねが自分を作っているような空気感。

1人ひとりが違うことは当たり前で、そこに普通と特別の区別は何もありませんでした。とても生きやすかった。

2月のはじめ、オリンピック組織委員会元会長の森さんの発言が物議を醸しました。私があの発言から強く感じたのは、無意識なジェンダーバイアスです。

今回の件に現れるように、社会の中で苦しんでいる人の多くは、社会に存在する無意識なバイアスによって苦しんでいる。誰かがつくった”普通”を押し付けられて苦しんでいる、そう確信しています。

私は現在、スポーツというフィールドから、多様な性のあり方について声を上げていますが、ジェンダー・セクシュアリティに関する問題はスポーツの分野に限らず、社会に存在する様々なフィールドでも起きていることです。

だからこそ、フィールドを超えた協力が絶対に必要で、みんなで上げた声は絶対に社会を動かす大きなパワーになると信じています。

同じ世代を生きるみなさんと、誰をも排除しない社会を作るために、フィールドを超えて繋がりたい。お互いの選択を尊重し、自分の選択を大切にできる社会を一緒に作っていきたい。そう強く思っています。


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LGBTQをはじめとする性的マイノリティの存在を社会に広め、“性”と“生”の多様性を祝福するイベント「東京レインボープライド」。BuzzFeed Japanは2021年4月23日(金)〜5月1日(土)にかけて、性的マイノリティに焦点をあてたコンテンツを集中的に発信する特集を実施します。

【4月23日 19:30からライブ配信🏳️‍🌈】 東京レインボープライド2021の開催前夜に、BuzzFeed Newsで番組を生配信! 「恋人のことを『友達』だと嘘ついたことある?」などなど、恋愛や暮らしに関する”あるあるな質問”について、わいわい話し合います🙋‍♀️ #おうちでプライド2021 https://t.co/xNIG7ajaGP

Twitter: @BFJNews

特集期間中、Twitterではハッシュタグ「#待ってろ未来の私たち」を使って、同性婚やパートナーシップ制度などのトピックをはじめ、家族のかたちに関する記事や動画コンテンツを発信します。

同性婚の実現を求めて全国のカップルが国を訴えた裁判や、各地でのパートナーシップ制度の広がりなど、少しずつ社会が変わり始めている今だからこそ、「より良い未来に生きる私たち」に向けて、「2021年の私たち」からのメッセージを届けます。