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「同性婚を認めて8年、社会は崩壊していません」ニュージーランド元議員が日本の政治家に問いかけること

世界中で話題を呼んだスピーチから8年。ニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン元議員が、日本の政治家に問いかけることとは。

今からおよそ8年前、ニュージーランド議会で行われたあるスピーチが、日本で改めて大きな注目を集めている。

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通称「ビッグ・ゲイ・レインボー・スピーチ」と呼ばれたそのスピーチは、ニュージーランドで同性婚を認める法案が採択された際に、賛成票を投じたモーリス・ウィリアムソン元議員がしたものだ。

私たちはこの法案を通して、愛し合う2人の愛を結婚というかたちで認める。ただそれだけです。…この法案は、関係のある人にとっては素晴らしいものです。一方、そうでない人にとっては、いつも通りの生活が続くだけなのです。

この法案を通しても、反対する人々が懸念するあらゆる災厄は起こらない。愛し合う人々の幸せを実現するだけで、それ以外の人々の毎日は何も変わらず続いていくーー。

ユーモアを交えて理路整然と語られたスピーチは、日本で同性婚や性的マイノリティの権利に関する法案をめぐって議論が高まるたびに、繰り返しSNSで拡散されてきた。日本語字幕がつけられた動画の再生数は、1000万回を超える

Hagen Hopkins / Getty Images

ウィリアムソン元議員は保守派とされるニュージーランド国民党に所属し、1987年に初当選。30年間にわたる議員生活で、税関や統計などの担当大臣を歴任したのち、直近まで同国の在ロサンゼルス総領事を務めた。

今月6日にはTwitterで、スピーチから8年が経ったニュージーランドの状況を伝えたいと、日本語で呼びかけた。

日本の報道機関の取材を希望しています。 ここニュージーランドの同性婚法が私たちの社会に害を及ぼすことはなく、影響を受けた人々に大きな喜びをもたらしたことを説明する機会があれば幸いです。 日本のすべての政治家がこのような結果に満足してくれることを願っています。 本当に明らかです。

Twitter: @williamson_nz

「スピーチでも話した通り、当時反対派の人が懸念した災厄は何も起きていません。やっぱり同性婚は廃止しようという議論が起きることもない。私たちはただ前に進んできただけです」

そう語るウィリアムソン元議員は、いま同性婚に反対する日本の国会議員に「同性婚を認めた世界のどの国を見ても、あなたたちが懸念するようなことは起きていない。日本だけが例外になるほど、日本は特別なのか。あなたたちは何を恐れているのか」と問いかける。

BuzzFeed Newsは6月15日、ビデオ通話でウィリアムソン元議員に取材した。

「何が問題なんですか?」

BuzzFeed

ビデオ通話で取材に応じるウィリアムソン元議員

ーーニュージーランド議会で同性婚を認める法案が採択された際のスピーチがいま、日本でとても注目されています。当時の状況を教えてください。

まずニュージーランドにはかつて、男性同士の同性愛が犯罪とされ、ゲイだとわかれば刑務所に入れられる時代がありました。

しかし1986年の法改正で非犯罪化され、1993年には性的指向や性別・性自認に基づく差別を禁じる法改正が行われました。

同性婚を認める法律が採択されたのは、2013年のことです。当時は高齢者層やキリスト教信者を中心に反対が根強くあり、私の選挙区の有権者にも「同性婚を認めることで『普通の結婚』が損なわれるのではないか」などと懸念する人が少なくありませんでした。

そうした声があるたびに、私は必ず「なぜ?」と問い返しました。「もし今日、同性婚が認められたら、40年近く連れ添った私の妻も急に『荷物をまとめて出て行け』と言い始めるのですか?」と。

すると彼らは私を見て、「いや、そんなバカなことあるわけない」と言うわけです。「では、何が問題なんですか?」と改めて問い返すと、「何となく間違っている気がする」と言うのです。

Phil Walter / Getty Images

ニュージーランドで同性婚が認められ、結婚したカップル(2013年撮影)

「何となく間違っている気がする」という漠然とした不安は、これまで私たちが経験してきたすべての変革において、多かれ少なかれ人々が抱いてきたものです。

例えばニュージーランドでは1945年から1980年まで、土曜日と日曜日に商業施設が営業することが法律で禁じられていました。ニュージーランドの街並みは、週末になると死んだように静まり返っていたのです。

法改正が行われた際には、「週末の時間を守るべきだ」と抗議活動が盛んに行われましたが、今では多くの市民が週末も買い物や食事を楽しみ、素晴らしい時間を過ごしています。

この法改正であれ、同性婚を認める法律であれ、変化には必ず不安が付きまとうものなんです。

しかし、時代が進むにつれて訪れる変化は、避けることができません。私たちはただ前に進むだけなのです。

Fiona Goodall / Getty Images

2018年にニュージーランド・オークランドで開催されたプライドパレードに参加するジャシンダ・アーダーン首相(右)。現役の首相の参加は初めてだった

同性婚が議論されていた時も、反対派は「認めたら社会が崩壊する」などと恐ろしい「未来予測」を唱えていました。

もちろん私は、そんなことは起こらないとわかっていました。どれも人々に恐怖を与えることで、何とか言い負かそうとしていただけなんです。

法案が採択されて8年経ちましたが、こうした「未来予測」は何も現実になっていません。やっぱり同性婚を廃止するべきだという議論が起きたこともありません。

愛する人と結婚できるようになる人が増えただけで、それ以外の人には変わらぬ毎日が続いています。私たちはもう前に進んだのです。

反対した議員「私が間違っていた」

So many new followers from Japan who liked my Gay Marriage speech in parliament back in 2013. What’s really interesting is several MP’s who campaigned and voted against it then, now say they would vote YES. Interesting not one MP who voted YES have said they’d now change to a NO.

Twitter: @williamson_nz

ーー同性婚に反対していた議員たちも、今では賛成しているとツイートしていましたね。

つい先日も当時、同性婚に反対票を投じた議員が、31年間の議員生活を終える引退スピーチで、「私は間違っていた」と正式にLGBTQコミュニティに謝罪をしました

彼は数年前に自分の長男がゲイだと知り、法案を提出した議員に向けて「私の息子をはじめ、何千人ものニュージーランド国民の生活を改善してくれた、そのリーダーシップに敬意を表したい」と語りました。

他にも複数の議員が、当時の決断は間違いだったと認め、謝罪しています。

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6月10日の議会で、引退スピーチをしたニック・スミス元議員

しかし、当時から多くの議員が裏では「本当は同性婚を認めるべきだと思っているんだけど、議席を失いたくない」と言っていたんです。

ーー日本でも、保守派の議員がLGBTQに対して否定的な発言を繰り返しているのは、次期選挙を見据えたアピールではないかと指摘する声があります。

私も同性婚への賛成を表明した際には、支持者から「次の選挙では絶対に落選するぞ」「お前はもう終わりだ」と脅されました。しかし実際には、次の選挙で私の得票率は上がりました。

選挙では、国の経済や教育、気候危機、外交問題など、多くの重要な課題が争点となります。

有権者が何百票と持っていて、課題ごとに個別に投票することができるなら別ですが、実際には自分の生活を大きく左右する重要な政策をもとに投票先を決めることになります。

時事通信

同性婚は当事者以外の人の生活を変えるものではない。同性婚に反対はしても、それだけを理由に投票先を決める人はいないのです。

なので日本の政治家に伝えたいのは、自分の議席を守るためという理由で反対しているのであれば、それは杞憂だということです。

そして、政治家の責務とは、社会全体のための決断を重ねていくことです。「世論の51%がこう考えているから、自分もこうしよう」と動くことではありません。

だから日本の議員には、政治家の仕事はマジョリティの代弁者になることではない。正しいことをすることだと伝えたいです。

ニュージーランドだったら「政治生命の終わり」

Saori Ibuki / BuzzFeed

5月30日、自民党本部前で議員の差別発言に抗議する人々

ーー日本では、与党の国会議員が「LGBTは種の保存に反する」という趣旨の発言をして、強い批判を浴びました。もし今、ニュージーランド議会で同様の発言をする議員がいたとしたら、何が起きるでしょうか?

もう間違いなく、その議員の政治生命は終わるでしょうね。所属政党に辞任を迫られるか、そんな恐竜時代のような発言をする議員なんてと、次の選挙で確実に落選するでしょう。

でもそれ以前に、そんな発言をする議員が出てくること自体が、考えにくいです。メディアで批判され、馬鹿げていると散々笑われることがわかっているので、そんなバカなことをする議員はいないと思います。

ーーウィリアムソンさんだったら、この発言に対してどのように反論しますか?

まず彼の発言が間違っているのは、まるで同性愛が選択できるものであるかのような前提を示唆していることです。

様々な科学的根拠を参照してみても、異性を愛する人も、同性を愛する人もみな、性的指向は生れながらに決まっているものです。「そういう気分だから今週末はゲイになろう」なんてものではありません。

かつて私も同様の議論をしたことがあって、異性愛の人に対して「あなたは今から同性と愛し合えと言われたらできますか?」と聞きました。すると彼は「そんなこと想像もできない」と答えました。

私が「同性愛者の人も、異性愛について全く同じように感じていますよ」と答えたら、相手は沈黙していました。

Saori Ibuki / BuzzFeed

「種の保存に反する」と発言した議員の人に言いたいのは、確かに同性同士で子どもを産むことはできないかもしれません。でもそれは、同性婚を禁じても認めても同じことです。

「同性婚が禁止されているから、じゃあ今日から異性愛者になろう」と選択できるわけではありません。

あなたがしていることは、当事者を陰に追いやり、閉じ込め、蓋をしているだけです。かつてアメリカなどでは、同性愛を「治療」するという考えもありましたが、それも間違っていたと証明されています。

一方で、同性婚が認められたことによって、結婚し、子どもを養子に迎え、素敵な家族を築くことができたゲイカップルは数多く存在します。それこそ素晴らしいことではないですか?

コロナ禍でなければ「すぐにでも日本へ」

BuzzFeed

ーーウィリアムソンさんもスピーチで、ご自身のお子さんが養子であることについて触れていましたね。

私は3人の子どもがいますが、3人とも養子です。実は30歳の長男の実母は、日本人なんです。

実の母親のミチコさんは今は日本にいますが、出産当時はニュージランドに暮らしていて、私たちは出産にも立ち会いました。今も時折、メールや電話で連絡を取り合っています。

息子のミドルネームは、健やかで強くという意味を込めた「健太」という名前です。なので、私も日本には個人的なつながりを強く感じています。

ーー今回スピーチが話題になったことによって、日本からも多くのメッセージが寄せられたのではないでしょうか?

本当にたくさんの声をもらいました。コロナ禍でなければ、すぐにでも日本へ行って、集会で話したり、日本の国会議員と議論したりしたいと思っているのですが、この状況だと難しいですね。

日本の議員に言いたいことは2つ。「あなたは何を恐れているのですか?」、そして「もし議席を失うことを恐れているのであれば、そんなことは起きませんよ」ということです。

繰り返しますが、「こんな悪いことが起きるかもしれない」という仮説を証明することはできませんが、私が伝えているのは「実際にこういうことが起きた」という事実です。

同性婚を認めることで災厄が訪れるというのであれば、それが起きた国を一つでもあげてみてください。

ニュージーランドでも、オーストラリアでも、カナダでも、オランダでも、ドイツでも、イギリスでも、そんなことは起きていません。社会は崩壊などしていません。

では、なぜ日本ではそれが起きると言えるのでしょうか? 日本だけが例外になるほど、特別な理由などあるのでしょうか?

Phil Walter / Getty Images

ーー最後に同性婚を求めて声を上げている日本の人々に向けて、メッセージはありますか?

私が言えることは、いずれ変化は起きるということです。ありえないことを恐れるバカな政治家のせいで今回は実現できなかったとしても、変化は必ず起きます。

なので、心を強く持ってください。愛するパートナーと結婚できることがどれだけ喜ばしいものか、私は理解しています。

若い世代が議会を掌握することができるようになれば、必ず変化は起きます。訪れるべき変化を避け続けることはできないのですから。

ニュージーランドで同性婚が認められて8年。賛成票を投じた際のスピーチが世界中で注目を浴びたウィリアムソン元議員はいま、日本の反対派の議員にこう問いかけています。 「同性婚を認めた世界のどの国を見ても、あなたが懸念するようなことは起きていない。なぜ日本だけが例外になると言えるのか」

Twitter: @BFJNews

ウィリアムソン元議員の「ビッグ・ゲイ・レインボー・スピーチ」の日本語訳はこちら

Contact Saori Ibuki at saori.ibuki@buzzfeed.com.

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