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涙ながらに問いかけた。「私は私の家族を守りたい。それは特別な権利を求めることでしょうか?」

法律上、同性同士の結婚を認めないのは違憲だとして、日本各地の当事者が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、原告8人が追加提訴した訴訟の第1回口頭弁論が7月8日、東京地裁(飛澤知行裁判長)で開かれた。

法律上、同性同士の結婚を認めない現行の法制度は憲法違反だとして、日本各地の当事者が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟。

全国5カ所で裁判が続くなか、原告8人が今年3月に追加提訴した訴訟の第1回口頭弁論が7月8日、東京地裁(飛澤知行裁判長)で開かれた。

原告の中には、出生時に割り当てられた性別とは異なる性を自認するトランスジェンダーの男性もおり、同性婚を認めないことは性的指向に基づく差別であるだけでなく、性自認や性別による差別だと主張している。

国側は原告の請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

「性別や性自認に基づく差別」と主張

先行する各地の裁判で原告側は、同性婚を認めない現行の民法や戸籍法は「婚姻の平等」や「法の下の平等」を保障する憲法に反するなどと主張してきた。

今年3月には札幌地裁(武部知子裁判長)が、性的指向は「人の意思によって選択・変更できるものではない」と認め、同性愛者のみ婚姻制度から得られる法的効果を享受できないのは、「合理的根拠を欠く差別取り扱いに当たる」と明示する判決を下した

今回の裁判では、トランスジェンダー男性の一橋穂さんとパートナーの武田八重さん(いずれも40代、仮名)も原告に加わった。

ふたりは男女の「異性愛カップル」だが、一橋さんの戸籍上の性別が「女性」のままのため、法律上は同性同士とみなされ、結婚することができない。

そのため原告側は、これまでの主張に加えて、性自認も性的指向と同様に、本人の意思によって変更することができないもので、「法律上の性別が同じ」だという理由だけで結婚ができないのは、差別だと訴えている。

「私は私の大切な家族を守ることができません」

一橋さんと武田さんは6年以上、生活を共にし、武田さんの娘と3人家族で暮らしてきた。8日の審理で意見陳述した武田さんは、法廷で涙ながらにこう訴えた。

「家族3人、一緒に暮らし始めて6年以上が経ちましたが、娘と一橋とは法律上は赤の他人です。私たちには社会的な保障はどこにもありません」

「私に万が一のことがあったとき、娘の不安な気持ちや生活を支えてくれるのは一橋だと思います。でも娘が望んだとしても、それは叶わないかもしれません」

「今のままでは、私は私の大切な家族を守ることができません。娘の生活を守りたい。パートナーの生活を守りたい。そう思うことは特別な権利を求めることでしょうか?」

「みなさんが大切な人を守りたいと思うのと同じように、私も大切な人を守りたいと願っている。それだけなんです」

同じく意見陳述をした原告の藤井美由紀さん(46)は、パートナーの福田理恵さん(40代)が乳がんを患った際に、病院側に家族と認めてもらえないことを恐れ、「いとこ」だと偽って術後説明などを受けた経験を振り返った。

「もし私たちが結婚できていたら、法律上も『家族』となれるので、こんな心苦しい思いをせず、正直に話せたはずです」

「私たちが安心して、社会の一員として2人で暮らしていけるよう、 2人の関係性を社会的に承認してもらいたい」

「国会だけに委ねていたのでは…」

原告側の代理人による意見陳述では、先月、国会提出目前で頓挫した「LGBT理解増進法案」に触れる場面もあった。

同法案は与野党協議を経て、自民党内の承認さえ得られれば国会に提出できる段階まで、調整が進んでいた。

しかし、「性的指向や性自認を理由とする差別は許されない」との文言が追加されたことなどに、自民党の保守派議員が強く反発。二階俊博幹事長ら党三役の「預かり」とされたまま、国会は閉会した。

代理人は「(差別は許されないと示しただけの)最低限の内容の法律すら国会では決めることができないのが現状であり、法律上同性のカップルの婚姻制度の法制化を国会だけに委ねていたのでは、一体いつ実現することになるのか、見通しすらつきません」と指摘。

アメリカや台湾で同性婚が実現した際には、「人権の砦」とされる裁判所が、憲法に基づいた司法判断をしたことが契機になったと言い、「裁判所には人権保障という責務があります。目の前にいる原告みなさんの具体的な困難や不利益に目を向け、積極的な審理を行なっていただきたい」と述べた。

国側は原告の請求の棄却を求め、札幌地裁の違憲判決なども踏まえて、今後具体的な反論するという。次回期日は、9月2日15:00から予定されている。

原告の意見陳述全文や国の答弁書は、裁判資料をまとめたCALL4のページで確認することができる。

同性婚の実現を求めている #結婚の自由をすべての人に 裁判の第二次東京訴訟で、初弁論がありました。 「みんなが生きやすい世の中になれば」 「私たちは人生の折り返し地点に入っている。みんなが理解するのを待っている余裕はない」 この日、意見陳述をした原告らが思いを語りました。

Twitter: @HuffPostJapan