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2019年に「Netflixで人生が2回変わった」男の子の話

Netflixの人気番組「クィア・アイ in Japan!」に出演したカンさん。番組出演後、彼の人生はどう変わったのか。ファブ5の5人に教わったことを聞きました。

今年も色々あった2019年。特にある男性にとっては、「人生が2回変わった」1年だったそうです。

「最初に“ファブ5”と出会って、生活を変えてもらったときと、実際に番組が配信されて、世界中の人々から愛や応援のメッセージをもらったときで、2回ライフチェンジングな経験でした」

そう語るのは、Netflixの人気番組「クィア・アイ」日本編のエピソード2に登場したカンさん(27)です。

「クィア・アイ in Japan!」に出演

「クィア・アイ」は、フード&ワイン、インテリア、美容、カルチャー、ファッションという、それぞれの得意分野を持つファビュラスな5人組(通称“ファブ5”)が、様々な悩みを抱えた人の毎日を大改造する番組。

日本編の「クィア・アイ in Japan!」は今年頭に撮影され、11月にNetflixで配信が始まりました。

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エピソード2では、ゲイ男性のカンさんが幼い頃から「自分を受け入れてもらえるか」という不安を抱えてきた経験を語り、ファブ5と一緒に「自分らしさ」を取り戻して、家族に最愛のパートナーを紹介するまでの様子を辿ります。

別人のように生まれ変わったカンさんが、別れ際にファブ5へ「日本に来てくれてありがとうございました」と伝える場面は、涙なしには見られません…!

5人との出会いは、カンさんの人生をどう変えたのか。実際に本人にじっくり聞いてきました。

台本なしの「嵐のような4日間」

ーー「クィア・アイ」に出演されてから、その後はどのようにお過ごしですか?

本当に心から「自分は自分でいい」と思えるようになったので、すごく幸せな毎日を送っています。

ーー世界中で絶大な人気を誇る「クィア・アイ」。出演するにあたり、自分の暮らしが世界中の人々の目に触れることへの不安みたいなものはありましたか…?

撮影が決まった頃にはもう腹をくくっていたというか、「やるぞ!」って感じだったんですが、実際に配信された番組を見て、想像以上に隅々まで見られていたんだな…と思いました(笑)

僕自身も完成した番組は、実際にNetflixで配信が始まってから見たので、僕がお風呂場で脱いだ服をカラモとタンがいじってたのとか、空っぽの冷蔵庫を開けられてたのとかは、番組を見てから知りました(笑)

ーー番組内では「1日目」「2日目」という形で進行していきますが、実際に4日間程度で撮影しているんでしょうか?

本当に数日間で撮影しています!

初対面のシーンも本当に初対面で、撮影クルーの方に「いつも通りに自由にしてて」と言われたので、音楽聴きながら部屋を片付けていたら、5人が入ってきたのにも気が付かなかったんです。

最初に「こんにちわ〜」と言われて、5人の姿を見たときは「本当にいる!」って思いました(笑)

映像だと伝わらないんですけど、「みんなディフューザーなの?」ってくらい、いい匂いがするんですよ…フローラルないい匂いがするんです…!

撮影期間中は、次から次へとファブ5それぞれの方との「セッション」があって、目まぐるしい日々でした。

台本は一切なくて、何ならこの次どこにいくのかも、誰と会うのかも、何を話すのかもわかりませんでした。

クルーの方に「今から銀座のあたりに行きます」って言われて、「何をするんですか?」って聞いても、「それは内緒。でも楽しいよ!」って言われて、行ってみるとお店の前でアントニさんが待っている、みたいな。

本当に嵐のような数日間で、みんなが帰ってしまった後は「本当に現実だったんだろうか…」って思いました。めっちゃ寂しかったです。

ファブ5が帰っていくシーンも、帰るねバイバイって言って本当に帰っちゃうので、しばらくは家の中で見たことも使い方もわからないものが、ちょこちょこ出てきたりして…。

ある日は、キッチンで謎のひょうたん型のデキャンタを見つけて、これなんだろうって調べてみたらコーヒーを淹れるものだったり、ある日は、靴の戸棚の中に新しい靴が入ってるのを見つけて、こんな靴ももらってたんだと驚いたり。

しばらくは嬉しいびっくりの連続でした。

ビジョンボード「え、剥がしちゃうの?」

ーーカンさんのお家改造では、仕事や私生活における目標を書いた「ビジョンボード」をカラモが剥がすシーンが一番衝撃的でした。「こんなに一生懸命に書いてるのに、剥がしちゃうの?!」って。

僕も最初は「え?剥がしちゃうの…?」って思いました(笑)

内心、「え?本当に剥がすの?まあ剥がすって言ってるから、笑顔で剥がすぞ〜?1枚2000円したんだけどなあ〜?」って思いながら、剥がしていました(笑)

でも振り返ってみると、カラモさんの言う通りだったんですよね。

僕は小さい頃から、ああいう自分に課した目標を書くのが好きで、中学生の頃も部屋中に目標を書いて貼っていたし、留学先でもクローゼットの中の壁に消えるサインペンで、達成したいことをリストアップしていたんです。

でも僕の書いてた目標は、「あれができない今の自分はダメ」「ここまで達成できないと全然ダメじゃん」という内容ばかりで、どれも今の自分を否定することに繋がっていたと思います。

「今の自分が最高で、これをやったらもっと最高になっちゃう。まあ、やらなくても最高なんだけどね〜」という気持ちで書いた目標だったらいいけど、僕の目標はただただ現在の自分を無視していたことに気付かされたんです。

撮影中、ファブ5は本当にたくさんアドバイスをくれるので、言われている間はもう追いつくだけで必死なんですよね。

最初は半信半疑だけど、後から「あのとき言ってくれたのはそういう意味だったんだ」とわかるようになったこともたくさんあります。

かつてのビジョンボードも、目標ではなく、自分に対する暴言を書いてたことに気づいたし、「そんなボードは外してしまいましょう」というのも、そうやって自分を否定してきた過去を断ち切るという意味で、大事なことだったなと思っています。

「自分を受け入れてもらえるか」という不安

ーー番組内では、幼い頃から「自分を受け入れてもらえるか」という不安を抱えてきたことを打ち明けています。

いま振り返ると、自分のセクシュアリティに関することが大きかったと思うんですけど、5歳くらいから「環境に馴染めない。でもなぜ馴染めないのかもわからない」というつらさで、朝、幼稚園のバスが来ると、お腹が痛くなって外に出られなくなりました。

小・中学校の頃もほとんど学校には通えず、不登校に近い感じでした。

自分がゲイかもしれないということを意識し始めたのは、中3から高校に上がった頃でした。

最初は自分が「性的指向」で悩んでいるのか、それとも自らの「性自認」で悩んでいるのかもわかりませんでした。

「男性に惹かれている=自分は女性なんじゃないか」と悩み始めたら、「じゃあ自分の体ってなんなんだろう」とわからなくなり、プールの授業などで自分の水着姿を人に見られるのが耐えられなくなりました。

今でこそ、アップルCEOのティム・クックなど様々なゲイのロールモデルがいますが、当時は身近な同性愛者のイメージは、テレビに出ている「オネエタレント」しかいませんでした。

オネエタレントが登場する番組も、マジョリティの人々によってLGBTQの人が消費される、いじられるような番組ばかり。

僕も「自分はオネエにならないといけないのかな」と思ったし、消費される「オネエタレント」の姿に自分を投影して、苦しんでいました。

だから、最初に自分がゲイだと気付いた時は、「治したい」と思ったんです。高校も2年生の夏に、プール開きを迎える前に「もう無理だ」と思って、中退しました。

もっと自分らしく生きられる場所へ

ーーその後、通信制の高校に転入し、卒業後は東京の大学へ進学しました。地方から上京したのも、地元で「生きづらさ」を感じていたからなのでしょうか?

「とにかくもうこの場所から逃げ出したい」という気持ちと、「他に行けば良くなるんじゃないか」という思いがあったのかなと思います。

大学を休学してカナダへ留学したのも、同じように「もっと自分らしく生きられる場所があるんじゃないか」と思っていたのかもしれません。

カナダでは、街で手を繋いでる同性のカップルがいたり、ゲイのカップルが子どもを連れてたり、日本では出会うことのできなかったたくさんの「ロールモデル」に出会うことができました。

そのとき初めて、「マイノリティでも幸せに生きられるんだ」と知りました。

その後、大学院で留学したイギリスで、パートナーのトムちゃんに出会いました。

でも、日本に帰ってきてから再び、「トムちゃんとどこかに一緒に住んで幸せになりたいけど、それはどこなんだろう」「イギリスにいたいわけでも、日本を出たいわけでもないけど、ここには居場所がない」とモヤモヤしていた時に、クィア・アイと出会ったんです。

「片足が一歩外に出ている家」

ーー(インテリア担当の)ボビーには「この家は『片足が一歩外に出ている』家だ」と指摘されていました。上京したり、留学したりした時と同じように、どこかに自分らしく生きられる暮らしがあるはずだという思いが、部屋に映し出されていたのでしょうか。

普通に暮らしていたら、人に自分の家を見せたりとか、生活をさらけ出したりすることってほとんどないと思うんですけど、いざ「片足一歩出てるね」って言われたら、本当にその通りだなと思いました。

だから家に何もないし、着てる服もすごい適当。そのことを全く気にしていなかったことに、言われてから気付いてびっくりしました。

それくらい「こんな暮らしがしたい」「こういう服を着て楽しみたい」という感情を外に出せずに、「とりあえず今は我慢」と思っていたんだなと気付きました。

ファブ5に出会うまでの生き方って、自分の過去を悔いて、今を否定して、「これじゃダメだ」と思ってるから未来に過剰な期待をしてしまう、足りないものばかり数える「人生減点方式」になってたと思うんですよね。

それを「加点方式」でいいんだと教えてくれたのが、ファブ5でした。

新しく部屋に飾ってもらったビジョンボードに、「僕は自信に溢れてる」「僕はハンサム」「僕は優しい」と書いて、褒めて、褒めて、褒め倒すことで自分を肯定することに繋がるし、そこから生まれる幸せが周りの人にも伝わって、幸せな人に囲まれるようになるんだと思いました。

悩みを抱える自分も受け入れる

もう一つ、ファブ5のみんなに教えられたことがあります。それは、悩みを抱えている自分やネガティブな自分も受け入れることです。

僕にとったら、ファブ5の5人や(東京でのガイド役を務めた)水原希子さんは雲の上の存在。「悩みなんてないだろうし、自信に溢れてるんだろうな」と思っていたんです。

でも実際に一人ずつと話してみたら、みなさんがそれぞれまだ自分のセクシュアリティや、家族、友人のことで悩んでいるんですよね。

それでも前を向いて、頑張って生きていることを知った時に、「じゃあ悩みは一生なくならないんだ」「ファブ5や希子さんも自分らしく生きるために頑張ってるんだな」って思ったら、自分も頑張ろうと思えたんです。

今はすごく幸せです。

本当に「自分は自分でいい」と思えるようになったから、「月が綺麗」とか「社食が美味しい」とか「先輩優しいなあ」とか、本当に小さなことにも感謝できるようになったように思います。

家の環境が自分の心に影響する、自分の心は空間に影響するというのも本当で、部屋が変わってからは毎日家に帰るのが楽しいし、ちゃんと綺麗にしようとか、もっと自分らしい部屋にしよう、自分のことも褒めてあげてようと考えるようになりました。

子ども時代のカンヘ

ーー番組では、生まれ変わった自分は「日本の人々を鼓舞できる存在なれた」と、ビジョンボードに書いていました。番組を見た人にはどのようなことを感じてほしいと思いますか?

僕は本当に子どもの頃にロールモデルがいなかったので、すごく塞ぎ込んで、「自分には将来がない」とばかり思うつらい子ども時代を送っていました。

なので、番組を通じて何か伝えられるとしたら、まずは子どもの頃の自分に「大丈夫だよ」「セクシュアリティのことで悩んでも、今はすごく幸せだから」と伝えたいです。

そして、同じような境遇にある人が、僕と自分を重ね合わせて、「きっと大丈夫」「大丈夫どころか、幸せに生きていけるんだな」って思ってもらえたらすごく幸せです。


カンさんが出演したBuzzFeed Japanの番組「オトマリカイ」はこちら!

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