• lgbtjpnews badge
  • lgbtjapan badge

「オリンピック開催国として責任がある」 差別を禁止する「LGBT平等法」を求めて国際署名キャンペーンを開始

「あまねく国内において安心してスポーツができる、性的指向や性自認によって差別がされないという状況を保証するために平等法が必要で、開催国の責任」

開催が2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックを前に、日本で性的マイノリティに対する差別を禁じる「LGBT平等法」の制定を求める、国際署名キャンペーンが始まった。

署名は主にキャンペーンの公式サイトで集め、五輪開幕前に議員立法での成立を目指すため、来年1、2月ごろに各政党へ提出するという。

「LGBT平等法」の制定を求める

今回始まった「Equality Act Japan」キャンペーンは、全国100以上の団体が加盟する「LGBT法連合会」、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」、スポーツをより多様性にあふれたものにするため活動しているアメリカの非営利団体「アスリート・アライ」の3団体が連携して主催する。

五輪開催国として日本が注目を集める中、日本国内だけでなく、海外にも署名を呼びかける予定だ。

IOCのオリンピック憲章には「性別や性的指向に基づく差別」を禁じると書かれている。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が掲げているヴィジョンの一つにも「多様性と調和」として、「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合う社会は進歩」する…などと書かれている。

「Equality Act Japan」キャンペーンによると、性的指向による雇用差別を禁止している国は、2019年時点で80カ国以上にのぼるという。

一方、日本国内で、性的マイノリティに対する差別を禁止する条例がある自治体は、東京都と茨城県のみ。

同性婚の実現を求める一斉訴訟が全国各地の地裁で進んでいるが、国政レベルで同性カップルの権利を認める「パートナーシップ制度」や同性婚の法整備は進んでいない。

G7で同性婚やそれに準ずる権利を同性カップルに与える法律が整備されていないのは、日本だけだ。

そのため、OECDが今年6月に発表した、各国のLGBTに関する法整備の状況などを比べた調査において、日本は35カ国中34位という厳しい評価を受けた。

「五輪開催国として責任がある」

10月15日に文部科学省で開いた会見で、LGBT法連合会・共同代表の五十嵐ゆりさんは「オリンピック・パラリンピックの開催が迫る中、世界中の国々が日本に注目しています」と訴えた。

「差別禁止条例がある自治体が東京都と茨城県に限られる中、五輪で競技が開催されるのはこの二つの都県だけではありません」

「あまねく国内において安心してスポーツができる、性的指向や性自認によって差別がされないという状況を保証するために平等法が必要で、開催国の責任であると指摘したいと思います」

さらに、オリンピック・パラリンピックが大会後、開催地にどのようなポジティブな効果を「レガシー」として残すかも注目されていると指摘。

「競技施設や経済効果だけではない、社会的・文化的影響も重要。東京大会のレガシーとして、LGBTの人もそうでない人も守るための平等法を制定することを目指していきたい」と語った。

「選手が安心してプレーし、SOSが出せるように」

会見では、元フェンシング女子日本代表選手で、東京レインボープライド共同代表の杉山文野さんと、なでしこリーグ2部スフィーダ世田谷FC所属で、現役選手の下山田志帆さんが、アスリートの立場から日本のスポーツ界の現状について語った。

杉山さんは過去に、オリンピックでメダルを獲得したこともある選手から、「カミングアウトしてしまうと、ファンや家族を失望させてしまうのではないかという恐怖感があり、やっぱり言えない」と、相談を受けた経験を明かした。

自分自身も現役時代は、「おかまやホモという言葉が飛び交う競技場で、自分のことがバレたら居場所がなくなるのではないか、いじめられたらどうしようと、ビクビクしながら競技生活を送っていた」。

今もそうした選手は多いのではないかと言う。

下山田選手は昨年春、同性のパートナーと交際していることを公表した。日本の現役アスリートで、性的マイノリティであることをカミングアウトしている選手は、下山田さん以外にいないと言われている。

「今までの人生を振り返って思うのは、スポーツの場で当事者に対する差別的な発言を見る機会がすごく多かったということです」と下山田さんは言う。

「短髪の選手に対して、指導者が『女子チームなのにそれはおかしいだろ』と言ったり、チーム内で付き合っているカップルに対して、キャプテンなどが『気持ち悪いから別れろ』と言ったり。そんな話を、周りで度々見聞きしてきました」

「そうした現状は現在進行形だと思っていて、競技は好きなのに、チームメイトや指導者との関係が嫌で引退した選手もいたし、チームを離れてしまった選手もいました」

そうした差別的な言動や取り扱いが多いため、当事者自身もそうした環境が「当たり前」になってしまい、「自分が悪い」と感じてSOSが出せない状況にもあると、下山田さんは指摘。

「平等法が制定されることで、安心してプレーできる選手が増えるし、差別的な取扱いを受けた時も、SOSが出せるようになる。そうした環境が当たり前になることを、私は望んでいます」と訴えた。

署名はEquality Act Japanのホームページ(https://equalityactjapan.org/index.html)から。