解散から投開票日まで17日間と、「戦後最短の選挙戦」となった今回の衆院選
選挙戦最終日の10月30日、各政党は何を訴えたのか?BuzzFeed Newsは与党・自民党の岸田文雄総裁と、野党第一党・立憲民主党の枝野幸男代表の街頭演説を取材した。
この記事では、JR新宿駅東南口で行われた立憲・枝野氏の演説の模様をリポートする。
コロナ禍「失われなくてもいい命あったのでは」
枝野氏はこの日、神奈川と東京の7カ所で候補者の応援や街頭演説を実施。地元・さいたま市のJR大宮駅前でマイク納めをする前に、JR新宿駅東南口でマイクを握った。
夕闇の中を人々が足早に通り過ぎる、駅前広場。枝野氏が壇上に立った6時半頃には、広場を見下ろす陸橋の歩道や階段も、足を止める人の姿でいっぱいになった。
「変えよう。そう訴えて、この選挙を戦ってきました」
枝野氏は約19分間の演説の冒頭を、コロナ禍で人々が直面した困難や、感染対策、補償についての説明に費やした。
感染対策では、入国者への水際対策や感染ルートの把握に加えて、PCR検査の拡充を特に強調。
「コロナの難しい点は、症状のない方からでも人にうつってしまう。だから感染ルートが追えない。症状のない感染者の方を見つけ出すには、PCR検査が必要なんです」
「私たちは(PCR検査の拡充を求める)法案まで出して提案してきました。検査が広がり、早く感染者を発見できていれば、こんな(流行の)広がりは止められたんじゃないか。失われなくてもいい命があったのではないか」
2020年12月に亡くなった立憲民主党の羽田雄一郎・参議院議員は(53)は、新型コロナウイルス感染症を発症した4日後、PCR検査を受けるために病院へ向かう道中で死亡した。
「検査も受けられず、検査へ向かう途中で命を落とした。その1人には、私たちの同僚だった羽田雄一郎参議院議員も含まれています。皆さんの周りにも、そういった方がいるんじゃないでしょうか」
「岸田さんも安倍さんと同じことを言っている」
立憲民主党は今回の選挙で「1億総中流社会の復活」を掲げ、個人の年収1000万円程度まで所得税を1年間、実質免除することなどを公約に盛り込んでいる。
演説では、安倍政権によるアベノミクスは「国際競争のための規制緩和、民営化や競争を煽り、自己責任を煽った」と指摘し、潤ったのは一部の富裕層のみだと批判。
「成長と分配」などの言葉を繰り返している岸田政権についても、「『成長したら分配する』と。岸田さんも安倍さんと同じことを言っている」と批判を重ねた。
「アベノミクスの9年で、日本の経済は年1%ずつしか成長しません。安倍政権からのこの9年で成長できなかったことが問題なんじゃないですか。日本を豊かにできていないから、多くの皆さんの暮らしが追い詰められているんじゃないですか」
「日本の国全体の豊かさが変わってないのに、(一部の富裕層や大企業だけが)豊かになっているというのは、あなたの犠牲の上に成り立ってるんですよ。いいんですか、みなさん? 変えましょうよ」と問いかけると、聴衆から「変えよう」という声が上がった。
政権選択の選択肢に
今回の選挙では「野党共闘」が実現し、全国の選挙区の3分の2に当たる217選挙区で、野党の候補者が一本化された。
約140の選挙区で与野党の候補者が激しい一騎打ちを繰り広げており、枝野氏も「政権選択の選択肢として、総選挙に臨む」と宣言してきた。
演説の終わりでは、森友・加計・桜を見る会問題などを抱えたこれまでの自民党政権を批判し、こう声を張り上げた。
「政権を選択できる選挙は、平均すると3年にいっぺんしかありません」
「あす10月31日を逃せば、隠す・ごまかす・改ざんする政治が、命と暮らしを守らない後手に回るコロナ対策が、一握りの人だけを豊かにし日本の経済を発展させない経済政策が、2年も3年も続くんです」
「日本の豊かさをしっかりとみんなで分かち合って、高齢化社会を、少子化社会をみんなで支え合って。1億総中流とかつて言われた、みんなが豊かさを実感でき、一定の希望を持つことができる、そんな当たり前の社会を」
「そのために、新しい政治へと、まっとうな政治へと変えようではありませんか。変えるのはあなたです」
立憲民主党の街頭演説に集った人々に「投票に行く理由」を聞いた記事はこちら。