「ブタの腎臓」移植手術を受けた男性が退院。ドナー不足改善に前進か

    遺伝子を改変したブタの腎臓の移植手術を受けた患者が、米東部マサチューセッツ総合病院(MGH)から退院した。脳死状態ではない患者で、世界で初めての成功例となる。

    末期の腎臓病を患っていた男性が、遺伝子を改変したブタの腎臓を移植する手術を受け、4月3日に退院した。脳死状態ではない患者で、世界で初めての成功例となる。

    術後の経過は良好だという。手術を行なった米東部マサチューセッツ総合病院(MGH)が発表した。

    We are happy to share that today, Rick Slayman, our first patient to ever receive a genetically edited pig kidney transplant, has been discharged from the hospital. He is recovering well and will continue to recuperate at home with his family. pic.twitter.com/26a9f9T85N

    — MassGeneral News (@MassGeneralNews) April 3, 2024
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    ブタの腎臓移植手術を受けたリチャード・スレイマンさん(左)と、手術にあたった医師ら(右)

    末期の腎臓病を患っていたスレイマンさんは、2018年に死亡したドナー患者から腎移植手術を受けたが、腎機能が低下していたという。

    4時間にわたる手術を行なったのは、腎移植分野が専門のレオナルド・V・リエラ医学博士、河合達郎夫医学博士、ナエル・エリアス医学博士だ。

    河合氏は発表で、次のように述べた。

    「今回の成功は、数十年にわたる何千人もの科学者と医師たちの努力の集大成です。この画期的な出来事で重要な役割を果たせたことを、光栄に思います。この移植法により、腎不全に苦しむ世界中の何百万人もの患者に、命綱を提供できればと願っています」

    全米臓器分配ネットワーク(UNOS)の統計では、アメリカで10万人以上が臓器移植を待ち望んでおり、毎日17人が移植を受けられず亡くなっている。

    米国腎臓学会誌に掲載された論文によると、腎臓は移植が必要とされる最も一般的な臓器であり、アメリカにおける腎臓病の末期患者は2030年までにで29~68%増加すると推定されている。

    スレイマンさんの主治医、ウィンフレッド・ウィリアムズ氏は「極端なドナー不足」と「少数民族にとって腎臓移植の機会が少ないシステム上の障壁」を指摘した。

    「腎臓移植の進歩によって臓器を豊富に供給できるようになれば、やがて健康の公平性を達成できます。移植分野の先駆者となったスレイマンさんの勇気を称えたいです」