「もし私の好きな人が女の子だったら、ママはどうする……?」
これは21歳になる私が50歳の母に問いかけた質問だ。
電通ダイバーシティ・ラボによると、2018年に20~59歳の個人6万人を対象にした調査ではLGBTを含むセクシュアルマイノリティに該当する人は、調査対象の8.9%だったという。
つまり、およそ11人に1人という計算になる。
約30年のギャップがある私たち親子。今までたくさんの摩擦を繰り返してきた。心拍数を上げながら聞いてみた。
女子校出身の母。当時のことを尋ねると「実情はわかんない」。でも……
明日の朝起きたら、違う性別を好きになっているかもしれない。
以前、お会いした臨床心理士の方が「今日は男の子が好きでも、明日は女の子が好きになっているかもしれない」と言っていた。
そんな彼女は、もともとは男性と付き合っていたけれど、今は女性とお付き合いしている。
私だっていつ、どんな転機を迎えるか未知だ。人生は、なにが起きるか予測不能だ。
インタビュー後、母に「今のところ私は異性愛者だ」と告げた。
「ママはれおちゃんが幸せならなんでもいいよ」
と笑って言っていた。お互い落ち着いたなあ、とホッとした。
どうしても家族に言えないセクシュアリティ。悲しませたくないからこそ。
地元にいるときは隠していたセクシュアリティ。上京が大きな転機に。
「性はグラデーション」という言葉がある。10人の人間がいれば、10人それぞれにセクシュアリティがある。どうして彼女はレズビアン寄りのパンセクシュアルだと思うのだろうか。
「『男性』っていうのを好きになったことはないですが、『女性』だから好きってわけでもないんですよね。自分のタイプは、どんな人か考えていたんですが、好きになったから好きとしか思えず。その人間が好きだなあみたいな…」
「今まで付き合った女性も、女性だから付き合ったわけじゃなくて、人として本当に信頼、尊敬しているからです。となると、私は、相手の性別を気にしてないんじゃないかなあと…。バイセクシュアルは、相手の性別が関係するので」
最近、大切な人ができたというSさん。
将来、両親へカミングアウトすることがあったら、どうするのか尋ねた。
「親へのカムアウトは、パートナーと一生付き合う覚悟ができた時だと思います。もし相手とパートナーシップを申請したり、いつか実現するであろう同性婚をしたり、という大切な局面が訪れたら。すると、思います」
セクシュアルマイノリティの人たちにとってカミングアウトは決して簡単にできることではない。