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インドではWhatsApp依存症が問題になってます

インドの若者たちは、FacebookやInstagram、YouTubeに夢中だ。しかし、彼らの親の世代にとって、究極のソーシャルメディアはWhatsAppだ。

私の母はWhatsApp依存症になった。そのきっかけは2013年冬、彼女の母が他界したことだ。彼女によれば、WhatsAppグループで交わされる雑談によって悲しみを紛らわせ、「むなしさを埋める」ことが目的だったという。ミームや陳腐なユーモア、話題の動画、「おはよう!」のGIF、つくり話を延々と送受信することに、彼女は慰めを見いだしたのだ。

WhatsAppへの関心が執着に変わるのに時間はかからなかった。母は、埃をかぶった人間関係を復活させ、家族、同僚、同級生、有機栽培農家、環境保護主義者など、10以上のグループに参加した。間もなく彼女は、スマートフォンに毎日6時間もかじりつき、トークに上がったGIFや動画のほぼすべてを見るようになった。

母が受信したコンテンツの多くは私のWhatsAppにも転送された。同じコンテンツを2度受け取ることもあった。共通のグループが複数あったためだ。最初のころは、ざっと目を通し、すぐに返信した。しかし、転送されるコンテンツが急激に増えたため、私はすぐ、全く返信しないことを選択せざるを得なくなった。とにかく多過ぎたのだ。数カ月後、父から電話がかかってきた。「おかあさんがふてくされているよ」と彼は言った。「おかあさんがWhatsAppで転送したコンテンツをお前は読んでないか、読んでいても返信しないそうじゃないか」。私は驚いた。母親と私は週2日以上、電話で話していた。それにもかかわらず母親は、WhatsAppで無視されることを侮辱と受け止めていたのだ。

私が謝罪の電話をかけたとき、「私はWhatsAppに思い入れがあるのよ」と母は説明した。「そこであなたは私を無視したから、私は傷ついたの」

WhatsAppは今や、インド社会の切り離せない一部と化している。ユーザー数は2億人を超え、Facebookにも迫る勢いだ。ミレニアル世代も広く利用しているが、驚くほどの情熱と真剣さを持って受け入れているのは、私の母、その友人、さらにその友人といった年配者だ。

ムンバイに住む25歳のライター、デバン・パサックは、「私の両親にとって、WhatsAppは単なるメッセンジャーアプリではありません」と話す。「むしろソーシャルネットワークそのものです。彼らはそこで家族や友人と情報交換し、ニュースを仕入れ、大量の動画を鑑賞しています。恐ろしいほどに愛用しています」

デジタルに精通したインドのミレニアル世代は、Instagramにストーリーを投稿し、Facebookでミームを共有し、YouTubeで動画を鑑賞し、Twitterで最新情報を追い、Facebook Messengerでチャットする。一方、インドの年配の人たちは、こうしたプラットフォームが持つ魅力的な機能のほとんどをWhatsAppに集約させている。休暇の写真がFacebookやInstagram、動画がYouTube、冗談や皮肉がTwitterに行くことはない。彼らにとってWhatsAppは究極のソーシャルメディアだ。

「正直に言うと、私にはFacebookは少し複雑過ぎるの」と母は言った。「それに、WhatsAppのグループと違って、私が大切に思っているすべての人とすぐ連絡を取ることができないでしょ。プライベートでもないし」

約6カ月前にWhatsAppを使い始めた60代後半の叔母は、今では悪名高い連続転送者だ。ただし、彼女がWhatsAppを気に入っている理由はほかにもある。「WhatsAppは私の音楽プレーヤーなのよ」と彼女は話す。「知り合いがいろいろなミュージックビデオを送ってくれるの。私はスマートフォンで音楽を再生するやり方がわからないし」

50代半ばの別のおばは、「私の世代は、何十年も身近な人たちとしか交流しておらず、それ以外の人々と触れ合う機会があまりなかったの」と話す。「私がWhatsAppに夢中になったのは、20年くらい会っていない友人たちの今を見ることが楽しかったからよ」

インドの都会に暮らす裕福なミレニアル世代の一部は、デスクトップコンピューターとインターネットがある環境で育った。一方、年配の人たちの大部分は、デスクトップコンピューターを経由せず、約10年前に、初めてのコンピューターとしてスマートフォンを手にした。

デリーでメディア関係の仕事をしている33歳のショブハ・S・Vは「私たちと違い、彼らはデジタルネイティブではありません」と話す。「そのため、彼らはまだ、テクノロジーに対して子供のような好奇心を持っているのです」

ムンバイに住む32歳のユーザーエクスペリエンス(UX)デザイナー、ジェイマン・パンディヤは、60歳になる父親のWhatsApp利用時間を減らそうと必死に努力している最中だ。ジェイマンはインドの年配の人たちが夢中になる理由として、インターネット上で社交するという体験を初めて味わう場所だからだと分析している。「父は最近、車を運転しようとしません。四六時中スマートフォンをのぞき込んでいるのです」

GIFや動画、メッセージから成るWhatsAppの世界は、インドの年配者たちに自由と力を与えた。ただし、とりわけデジタルエチケットに関しては、まだ学習過程にある。制約されたSMSの世界から解放された年配の人たちたちは、WhatsAppのシンプルなインターフェースに後押しされ、来る日も来る日も、所属するグループに数十のコンテンツを送り続けている。そして、一部の若者はこうした行為にいら立ちを感じている。

匿名希望のある人物は、「家族とWhatsAppをする目的は、もはや会話ではありません」と話す。「絶え間なく送られてくるコンテンツをただ懸命に読んでいるだけです。両親と話したいときは、電話をかけています」

私はTwitterで次のような質問を投げかけたことがある。「あなたは両親がWhatsAppで送ってくるコンテンツの多さに腹を立てている若者ですか?」。すると、多くの若者が反応し、ダイレクトメッセージ(DM)を送ってきた。

「いつもスマートフォンの通知音が鳴っていて、本当にイライラします」とショブハは話す。「チェーンメールを覚えていますか? 今WhatsAppで起きていることは、かつてのチェーンメールと同じです」

チェンナイで接客の仕事をしている22歳のロハン・デシュパンデは、WhatsAppを使っている年配の親類たちの問題点として、スパムの概念をあまり理解していない点を挙げている。「私はインターネットに囲まれて育ったため、理解しています。しかし、彼らは違います」

こうした問題点を指摘されても、年配者たちは動じていないように見える。「私が共有するのは、どう感じ、どう考えているかを人々に伝える最高の手段だと思うからよ」と母は言う。「私が共有するのは、それによって自分を表現できるから」

バンガロール在住で、2人の孫を持つ匿名希望の男性(62歳)は、「私の仕事は良いコンテンツを転送することです」と話す。「反応や返信がなくても構いません」

もちろん、「良いコンテンツ」というのは主観的なものだ。インドのWhatsAppグループでは、ジョークや性差別的なユーモア、話題の動画が飛び交っている。しかも、WhatsAppで送られてくるつくり話や誤報は、インド独自のフェイクニュース危機の原動力にもなっている。つい先日も、年配の親類が偽の陰謀説を転送してきた。アメリカのドナルド・トランプ大統領とインドのナレンドラ・モディ首相、インド第一の富豪ムケシュ・アンバニが手を組み、急落しているインドのGDPを押し上げるという内容だ。数日前には、父が有益な助言を送ってきた。ココナッツオイルでへそをマッサージすると、視力が良くなるという内容だ。この助言について複数の人に質問すると、同じ答えが返ってきた。「もちろん本当だよ。WhatsAppで見たから間違いない」

バンガロールに拠点を置く「Check4Spam」の共同創業者シャマス・オリヤスは、「一般的に、年配者は若者と比べてニュースや公開情報を信じる傾向があると思います」と述べる。Check4Spamは、主にWhatsAppでインドに広がっているつくり話や都市伝説を摘発するウェブサイトだ。「彼らは従来のメディアをある程度信じることに慣れており、新しいメディアでも同じことをしているのだと思います。さらに彼らは、写真や動画の編集ソフトや、クリックベイトのような概念にあまり精通していません」

ムンバイに住む20歳のジャーナリスト、シャシュワット・モハンティーは、WhatsAppの家族グループでやり取りされている偽のコンテンツにうんざりし、偽の見出しのみで構成される新聞の第一面を転送してみることにした。「彼らはすべてを完全に信じました!」とシャシュワットは振り返る。「私は本当に心配しています」

プネーの教育機関で働く51歳のアナガ・パサックは、WhatsAppで流れてくるコンテンツが正確ではないかもしれない、事実に基づいていないかもしれないと思っていたら、転送することにもっと慎重になっていたと話す。「私がコンテンツを転送する主な理由は、大切な人たちに警告を発することです。けれども残念なことに、多くのコンテンツは結局つくり話でした」

WhatsAppで容易にフェイクニュースが広まるのはまさにこのような理由からだと、専門家たちは考えている。事実確認を専門に行う組織「アフリカ・チェック」の上級研究員ケイト・ウィルキンソンは2017年、「Poynter」の取材に対して次のように述べている。「WhatsAppはとても私的なコミュニケーション手段です。危険にさらされていると信じさせるような情報が送られてきたら、あなたはおそらく、共有した場合としなかった場合の結果を想像し、天秤に掛けるでしょう。そして、誰かが傷つく可能性があれば、おそらく転送するはずです」

パサックは今でもコンテンツを転送しているが、「そのまま転送しています」という注意書きを付けることにした。

一方、デリーの弁護士で、60代後半のジャヤスリー・ムキルマルスールなどは、WhatsAppにおけるフェイクニュースや誤報の転送はあまりに広範な問題で、もはや誰にも止められないと考えている。「(たとえ私が転送をやめたとしても、)私にはコントロールできません。人々の転送をやめさせることはできないのです」と彼女は話す。「私が意見を述べたところで、違いがあるとはまったく思えません」(27歳の娘ドゥルガ・セングプタも「私ももちろんそう思います」と話している)。

「私たちの両親が子供だったころ、ニュースはニュースでした」と、チェンナイに住むデシュパンデは話す。「彼らの時代には、あらゆる場所にコンテンツがあるという概念が存在しませんでした。時間と意思さえあれば、誰でも誤報やフェイクニュースをつくり出し、共有できるということが、彼らには理解できないのだと思います」

結局、世界中の若者たちがソーシャルネットワークに夢中になっているのと同じ理由で、インドの年配者たちはWhatsAppを受け入れているのだ。つまり、すぐにフィードバックがあることで、自分が認められていると感じられ、コミュニティー意識を持つことができるという理由だ。しかも、TwitterやFacebookより親密さを味わうことができる。

匿名希望の50代の叔母は、「私は先月、職場で賞をもらったんだけど、Facebookで自慢するのは嫌だった」と話す。「その代わり、WhatsAppの家族グループに投稿した。彼らだけに話をしたいと思ったから」

こうしたあり方は、ミレニアル世代がInstagramやFacebook、Twitter、Snapchatで共有する理由と大きく変わらない。私たちは5つ以上のプラットフォームに入り浸り、リンクや動画、GIF、写真を共有することによって、自分のアイデンティティーを形成しているが、年配者はすべてを1カ所で行っているというだけだ。私たちは年配者と同じくらい、ソーシャルメディアを過度に利用し、過度に共有している可能性が高い。毎日何時間も受動的にニュースフィードをスクロールすることの危険性をFacebookが警告しているほどだ。けれども私たちは、ソーシャルメディア依存症を普通のこと、あるいはトレンディなことだと捉えつつも、WhatsApp依存症については途方に暮れるほど迷惑だと考えている。

しかし、変化の兆しも見られる。パサックは20代の子供2人と、WhatsAppで責任を持って共有すること、WhatsAppの利用時間を減らすことについて話し合ったという。「そうしたことが必要な段階でした」とパサックは言う。「2人は不満を持っていたのです」

そして数カ月前、私も母と電話で話し合いを持った。「WhatsAppを使い過ぎだと思うよ」と私が言うと、「わかってるわ」と母は言った。「依存症なの。ごめんなさい」。コンテンツの転送は止まらなかったが、徐々に減少し、たまに送られてくる程度になった。数日前、驚くほど美しい青色のサリーを着た母のセルフィーが何枚か送られてきた。そして遂に先週、彼女はWhatsAppを本来の目的で使用した。WhatsAppを使い、私に連絡してきたのである。その日は、日常の出来事や昼食の内容について会話し、本当に素晴らしいひとときを過ごすことができたのだった。

この記事は英語から翻訳されました。翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

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Pranav Dixit is a tech reporter for BuzzFeed News and is based in Delhi.

Pranav Dixitに連絡する メールアドレス:pranav.dixit@buzzfeed.com.

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