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「法律に従い、科学的根拠に基づいて審議会にご議論頂く」学会の提言にも冷静な厚労省

感染症学会が十分なデータもないまま緊急承認を求める提言を厚生労働相宛に出して、医師たちから批判を浴びている「ゾコーバ」の問題。厚労省は「法律に従って審議会でご議論頂く」とこれまで通り審議を続けることを明らかにしました。

感染症学会が十分なデータもないまま緊急承認を求める提言を厚生労働相宛に出して、医師たちから批判を浴びている「ゾコーバ」の問題

この提言について、薬の承認審査を担当する厚労省の医薬品審査管理課は、「法律に従って、審議会でご議論いただく」「科学的根拠に基づいて議論する」として、提言には左右されず、引き続き審議会での議論を進める姿勢を明らかにした。

ゾコーバの承認審査をめぐっては、7月20日に「薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会」が開かれ、「有効性を示すデータが不十分」として継続審議になったばかりだった。

医薬品の承認審査は「法律と科学的根拠に基づいて行われる」

今回の提言が出されたのを受け、BuzzFeed Japan Medicalは、医薬品の審査を担当し、審議会の事務局も担当する厚労省の医薬品審査管理課の担当官に取材した。

今回の提言を受けて、大臣が政治判断で承認するなど手続きが早まる可能性について尋ねると、こう回答があった。

「政治判断はないし、今は継続審議中。次回の審議がいつになるのかは決まっていませんが、審議はもちろん審議会の委員が議論するもの。委員の判断によります」

「審議は基本的に科学的な根拠に基づいて議論されるものですから、要望があるから判断がどうなるということではありません。今後も科学的な根拠に基づいて議論がなされると思います」

大臣宛に提言は出されており、審議会を飛び越えて大臣が判断するようなことはあり得るのか聞いたところ、ゾコーバの審査を行っている緊急承認制度についての法律の条文が示された。

ゾコーバが審査を受けている薬の緊急承認制度は5月に創設されたばかりで、薬機法第十四条の二の二では、以下のように定められている。

第十四条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、次の各号のいずれにも該当する医薬品として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第二項(第三号ハに係る部分を除く。)、第六項、第七項及び第十一項の規定にかかわらず、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その適正な使用の確保のために必要な条件及び二年を超えない範囲内の期限を付してその品目に係る同条の承認を与えることができる。

「法律で、『薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、承認を与える』と定められていますから、その規定に従って手続きを進めることになります」と、あくまでも審議会の議論を受けて、承認されるとした。

その上で、「学会などその他の団体から要望が出されることはよくあること。その分野の専門家からどうお考えかについてお知らせいただくのは意味がないことはない」と提言の意義について語った。

9月中にも最終結果の速報?

審議会ではゾコーバの治験の最終結果「第3相試験」のデータを踏まえて改めて議論することになっている。

塩野義製薬は7月20日の審議の時点で、「11月頃に報告書を提出する」と厚労省に伝えている。一方、「8〜9月にも3相試験の結果の速報が出る」という報道もあった。

厚労省の担当官は「速報が出て、評価に資する内容であるならば、その時点で審議会を開く可能性もある」と話している。