• medicaljp badge

こんな患者さん大歓迎! 医療者の本気を引き出す患者の特徴とは?

SNSでどんなかかり方をしてくれたらより良い医療が提供できると思うか、理想の患者像を聞いてみました。

医師の働き方改革の議論がいよいよ3月28日にまとまる見込みで、働き過ぎている医師の労働環境が見直されようとしています。

それと表裏の関係で、患者がどのようなかかり方をしたら、医療や医師の健康を守ることができるのか、「上手な医療のかかり方」も議論されました。

自己犠牲的な働きでギリギリ踏ん張っている医師や医療者にとって、どんな患者さんだったら、働きがいがあるものなのでしょうか? 

Kokouu / Getty Images

医療者から見た理想の患者像とは?

SNSで理想の患者像について、本音を聞いてみました。

患者に理想の医師を尋ねるのと同時に、医療者側にも理想の患者像についてSNSでアンケートをとりました。

【アンケート:理想の患者って?】医療の主役は患者さんですが、医療者に伺いたい。患者さんがどんなかかり方をしてくれたらより良い医療が提供できますか? 患者さんに求めることは何ですか? できるだけ具体的に、リプライかDM、メールでお寄せください。記事にします。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

「おとなしい患者」がいい患者ではない

お医者さんや医療者の言うことに、「はい、はい」とおとなしく従うのがいい患者さん?

医療を受ける側としては、医療者にそんなことを期待されているのではないかと誤解しがちなのですが、回答はむしろ真逆なのに驚きました。

「こちらをプロとして考えて(信頼して)下さった上で、自分も主体的に関わり一緒に病気・健康と向き合おうと思って下さる方」(大学病院勤務医)

「自分の治療に自身が向き合っている、前向きである人。具体的なニーズ(本人がよくなってこうなりたい)をもっている人。家族も本人に寄り添っていること」(作業療法士)

「診察と関係ない話を始めて遮りにくいとか、何のために受診したのかご自身でもわかってない、という方はとても困ります。 意思表示をきちんとできる人。例えば何か検査をお勧めした時に、受けるか受けないか自分で決められない、という方もとても困ります」(中規模病院勤務医)

「困るのは、『あなたが良くしてくれるんでしょ』と受動的すぎる患者さん。または、治療には主体的でも、主治医やその他の専門職の言うことより、根拠のない治療や独自のやり方に固執してしまう方」(管理栄養士)

Primagefactory / Getty Images

患者も積極的に治療に参加することが求められている

自身も乳がんを経験したことがある栃木県立がんセンター看護師の高田芳枝さんは、こんな理想の患者像を書いてきてくださいました。

「看護師としての専門性を発揮させてくれる、引き出してくれる患者。一緒に考えさせてくれる患者」

「 誰かの助けを借りながらでも自分の気持ちや、自分がどうしたいのか、どう生活したいのかを伝えようとする、伝えられる患者 。その患者との関わりが楽しく、関わりが終わっても、なにかにつけて思い出すことがある患者」

優等生の患者さんを求めているのかというと、そういうわけでもなさそうです。医療者の前ではなかなか自分の考えを伝えられないという患者さんをサポートするのも専門職である医療者の仕事だからです。

「患者さんやご家族が医療の知識を持っているかは無関係です。わからない人ならばわかるように看護師の私が伝えればよいからです。医師とのコミュニケーションがうまく取れなくても、関係性を改善できるように関わります。病状や治療の説明は私が間に入って医師の言葉を患者の言葉に翻訳します」

「看護師としての専門性を発揮できて、それによって患者さんの何かが少し良い方向に向かうことが双方で実感でき、それを一緒に喜べること、その患者との関わりが自分の次のステップに繋がるといいですね」

主体的に治療に参加していて、治療のためにご自身の情報を積極的に伝えてくれ、医療者から専門性を引き出してくれる患者がやりがいを刺激するようです。

こういう回答を読むと、さすが専門職だなと、思いますね。

患者も治療チームの一人として参加を

これをさらに具体的に書いてきてくださったのが、BuzzFeed Japan Medicalの外部執筆者として度々、寄稿してくださっている緩和ケア医で腫瘍内科医の西智弘さんです。

Hiroshi Hatano

治療を「自分の家を建てる」ことに例える西智弘さん

「医師にお任せではなく、患者さんも治療チームの一員として参加してほしい」と訴える西さんは、治療を「自分の家を建てる」ことに例えます。

「建築家(医師)が間取りやしつらえまで、すべてを決めて建てた家を買うことを好む方もいるかもしれません。注文住宅のように一から全てを決めていくのは煩わしいという方もいるでしょう。しかし、住んでみてから、『思った以上にリビングが狭い』など、住みにくさを感じる方も多いのではないでしょうか?」

そして、医師にお任せの医療は、建売住宅をはそのまま買うようなことだというのです。

「医療になると、お金どころか命がかかっているにもかかわらず、どうして『建売住宅』がよいということになるのでしょう。もちろん、家を自力で建てるのが難しいように、身体のマネジメントも自分だけで行うことは難しいでしょう」

そして、家を建てるのに建築家の助けを借りるように、治療にも自分の希望や生活を伝えながら、医師の専門性を引き出して共同作業をしてほしいと語りかけます。

「医師は、患者の身体の声を聴くプロフェッショナルです。患者さんは、自分のこころの声を聴くことはできても、身体の声を聴くことには慣れていません。身体はときに寡黙であり、そしてまた患者さん自身が身体の声に耳を傾けないこともあります。私たち医師は、診察や検査などの技術でその声を聴き、あなたに翻訳することのプロフェッショナルなのです」

「患者さんは、患者の理想とする生き方を考えることはできます。でも、それを実現するための身体が、いまどういう状態なのか、これからどうなっていくのか、どんな治療法を選択すれば、その生き方を支える身体でいられるのか、といったことは、医師を利用したほうがいいことがたくさんあります」

「医師に完全に任せてしまうでもなく、かといってすべてを自分で行うのでもなく、あなたの生き方を支えるために、そのプロフェッショナルの技術を大いに利用してほしいのです」

医療者だって人間 敬意を払ってほしい

一方、医療者だって人間、患者さんの言葉や態度に悩まされることもあります。

「聖職だから」と職務以上の働きを要求されたり、「お客さん」気分の患者さんに居丈高に振舞われたら、気分が良くないのは当然でしょう。

「医療サービスを提供するプロだと考えていただければ随分と仕事が楽になります。聖職だと思われるのが一番困りますし、疲れます。情報提供を淡々と行うと医師のくせに人情味がないとか患者への愛情を感じられないなどと批判されます。直接でも投書でも。かなり疲れるのですよね。またいつ何時でも対応してほしいというのもかなり困ります」(精神科勤務医)

やはりBuzzFeed の外部執筆者でもある在宅緩和ケア医の新城拓也さんも、患者さんの態度が診療内容に影響することを心配しています。

「医者は打たれ弱いので、人として礼儀をもって話して下さればと思います。喧嘩腰、声高、居丈高、友達言葉ではまともに診療できません。きつい口調で対面されると、医者の推理力や直感力が落ちてしまうので、ぜひお願いしたいです。『いつまで待たせるんじゃわれ!』と言われてしまうと、頭の回転が鈍り、正しい判断ができなくなります」

ただ、こうした患者さんの態度は、自分たちが引き出しているのかもしれないと内省するところがまた新城先生らしいところですね。

「勤務医時代の当直中に(こういう患者に)何度もお会いしました。今は、全くいらっしゃいません。多分、こちらの問題もあるんです。きちんと敬意を持って接すれば、おかしな言葉遣いにはならないんですよね」

かかり方が変わったら、お互いに楽になる

そして、やはりかかり方の問題に触れる医師もいました。

「年に一度の定期健診(職場or住民)を受け、大病院のさまざまな科をハシゴ受診するのではなくクリニック(診療所)を『かかりつけ医』にして健康相談をし、薬のことは『かかりつけ薬局』に相談する人、でしょうか。これは医師である私自身がこうでありたいという患者像でもあります」(大学病院で教える病理医)

Cecilie_arcurs / Getty Images

どうすればお互いに気持ちよく医療を守っていけるのか

ところが私が取材していても、この「かかりつけ医」「かかりつけ薬局」を見つけるのがなかなか難しいという声をよく聞きます。

この医師も、その問題に少し触れています。

「ただこの『かかりつけ医』が、クリニックであっても眼科・皮膚科・内科・耳鼻科・婦人科・精神科等々と単科があちこちに物理的にも機能的にも分散してて、外来に行くのも大変、というのは現在の外来システムの課題じゃなかろうか、と患者視点では思います」

また、せっかくかかりつけ医や他の病院にかかった経験があるのに、きちんとその情報を教えてくれないと無駄になるという指摘もありました。

「新患としてかかるとき、かかりつけ医がいるなら紹介状をもらってきてほしいです。よく話を聞くと、すでにかかりつけ医で検査は済んでいて『心配だから大きい病院に来た』という方が少なくないです。お互いに時間と医療費の無駄です」(中規模病院勤務医)

「あちこちの病院にかかって薬を色々もらっているのに、どこにもかかっていないと言ったり、出された薬を勝手にやめたり、たくさん飲んだり、どうもないから病院に行くのを自己中止する患者さんには医療が提供できません」(内科勤務医)

患者さんの気持ちは、医師の働く環境、社会環境に影響される

札幌の小児科勤務医は「理想の患者さん像はありません」と書いてこられましたが、医師の働き方や社会環境が患者さんの不安を左右していると指摘してくださいました。

「50歳になりますが、月に6〜7回の当直をこなし、代休はなく、土日も回診に行く毎日です。気持ちに余裕が持てず患者さんに迷惑をかけてしまう時は医者を辞めたくなります」

「 いたずらに患者さんや家族が不安にならず、具合が悪ければ会社や学校を堂々と休める社会。全ての医者が標準的な治療を実践する理想の社会像はあります」

そして、患者のためにも、現在議論中の医師の働き方改革の議論に期待をかけるのです。

「正直な感想として医者は40過ぎたら開業するか、死ぬ覚悟を持つかの選択肢になりつつあります。経験のある勤務医が必要と言われながらも、社会はそれを消費することしか視野にないように感じています。
議論が深まり、次の世代を担う若者が勤務医に夢を持てるようになればいいなと切に願っております」

医師の働き方改革に関する検討会は3月28日に最終報告書がまとまる見込みです。患者のかかり方も大きく影響を受けるこの改革、患者と医療者がお互いに理解し合って、思いやりを持ち合えるように、ぜひ今回の両面からのアンケートを参考にしていただけたらと願います。


Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here