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9価のHPVワクチンの費用を半額補助 静岡県富士市が全国に先駆けて導入

子宮頸がんを防ぐHPVワクチンについて、静岡県富士市が、効果の高い9価ワクチンの費用の一部補助を4月から始めました。全国に先駆けた取り組みです。

子宮頸がんを防ぐHPVワクチンについて、静岡県富士市は、現在は定期接種で使うことが認められていない9価ワクチン(シルガード9)について、独自に一部の費用を補助する制度を4月から始めた。

現在、定期接種に使われているのは2価ワクチンと4価ワクチンのみで、それより効果の高い9価ワクチンは通常、全額自己負担(3回で約10万円)となる。これを約半額、補助する。

こうした取り組みは全国でも珍しく、富士市は「9価ワクチンをうちたい対象者の費用負担を軽減したい」と話している。

一人につき3回、1回1万7000円を補助

今回の補助の対象となるのは、HPVワクチンの定期接種の対象となる小学校6年から高校1年の女子と、定期接種なのに国が積極的に勧めるのを中止していたため、接種を逃して再チャンスを与えられている「キャッチアップ接種」の対象者9学年だ。

補助費用は、1回の接種につき1万7000円で、1人につき3回まで補助される。

これは、2価、4価ワクチンの費用と同じぐらいの金額で、定期接種の2価、4価は自治体が全額を負担するため、「9価をうちたい」という人の金銭負担を軽減するために、同額補助することにした。

9価ワクチンは、自己負担で1回約3万円〜3万5000円程度かかるので、約半額の費用が市から補助される計算になる。

補助は、以下の3要件をすべて満たすことが必要となる。

  1. 接種日に富士市に住民登録があること
  2. 9価HPVワクチン以外のHPVワクチンの接種を1回も受けたことがないこと
  3. これまでに9価HPVワクチンの接種にかかる費用補助を受けたことがないこと


ただし、定期接種ではなく、任意接種の枠組みとなるので、万が一何か副反応被害があった場合、手厚い国の健康被害救済制度の対象にはならず、より補償額の低い医薬品医療機器総合機構(PMDA)の救済制度の対象となるデメリットもある。

元々、女性の健康づくりに熱心な土地柄

担当する富士市健康政策課によると、9価ワクチンの補助制度は全国でも珍しく、他の自治体では聞いたことがないという。

同市がこの補助制度を独自に設けたのは、元々、産婦人科医や市議、自治体の保健師が女性の健康づくりのために熱心に活動していた土壌があるからだ。

その中で「女性のがんを減らす」ことも目標の一つとして掲げられており、産婦人科医の講演などで、HPVワクチンや9価ワクチンについても知っている市民が多かったという。

健康政策課主幹は、「『9価ワクチンを既に自費でうった』とか、『9価ワクチンをうちたい』という声が市民から上がっていました。定期接種で本来支払うべき額と同じぐらいの補助をして、任意でうちたい市民の負担を減らそうと考えたのです」と補助制度の狙いを話す。

定期接種、キャッチアップ接種の対象者合わせて富士市では約1万3000人いる。4月半ばから定期接種の対象者に、5月からはキャッチアップの対象者に予診票と共に、この補助制度も案内する。

既に産婦人科医から聞いて、この補助制度を申し込んでいる市民も複数いるという。

9価ワクチン、定期接種に向けて議論中

日本ではこれまで、子宮頸がんになりやすいハイリスクな16型、18型への感染を防ぐ2価ワクチン(サーバリックス)とその二つの型に加え、良性のイボのような尖圭コンジローマの原因となる6型、11型も防ぐ4価ワクチン(ガーダシル)しか定期接種とされていない。

9価ワクチンは、現在、定期接種化の方向性で議論されており、4価ワクチンがカバーする4つの型に加え、やはりがんになりやすい31、33、45、52、58の5つの型も含めた9つの型への感染を防ぐ。

子宮頸がんの90%以上を防ぐとして先進国では主流となっていたが、接種率が激減していた日本は承認が遅れ、2020年7月21日に承認され、21年2月24日から販売が始まった

9価ワクチンについて、日本産科婦人科学会は国に繰り返し定期接種化を求め、自民党の「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」も早期の定期接種化を求めている

ただし、2価、4価ワクチンも子宮頸がんを防ぐ効果は高く、うつ年齢が低ければ低いほど効果が高いこともわかっている。厚労省は、今うてるワクチンをなるべくうつことを呼びかけている。