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田村厚労相のHPVワクチン積極的勧奨再開「先送り」発言に 製薬会社MSDが遺憾の意を表明

HPVワクチンの積極的勧奨再開に関し、田村憲久厚労相が事実上の先送りの態度を表明したことに対し、製薬会社のMSDが遺憾の意を表明しました。

子宮頸がんや肛門がんの原因となるヒトパピローマウイルスへの感染を防ぐHPVワクチン。国が2013年6月に積極的勧奨を差し控えて以来、接種率は激減している。

子宮頸がんだけで毎年1万人がかかり、3000人が死亡する状況を変えるために積極的勧奨再開が強く求められる中、田村憲久厚労相は8月31日の会見で、自民党議連の要望書や医師らの行った署名に対し、再開の時期を明言せず事実上の判断先送りを表明したばかりだ。

積極的勧奨が再開されず日本向けに用意したワクチンが廃棄処分になれば、今後のワクチン確保が難しくなると警告する文書を厚労省に送っていた製薬会社のMSDは9月1日、この田村厚労相の「先送り発言」に対し、遺憾の意を表明するステートメントを発表した。

「今回、厚生労働省が検討の期限を明示しないまま、積極的な勧奨再開の事実上の先送りともとれる状況となったことを遺憾に思い、厚生労働大臣が会見で言及された審議会における一刻も早い審議の開始を強く願います」と決断を求めた。

「事実上の先送りともとれる状況となったことを遺憾」

田村厚労相は8月31日に開かれた閣議後会見で、HPVワクチン積極的勧奨再開が求められていることについて、再開するか否かを諮る厚労省の審議会「副反応検討部会」や地方自治体が新型コロナ対応で忙しいことに触れた上で、こう述べた。

「そういうことを勘案しますと、なかなか10月というのは物理的に難しい」

「しかしなるべく早く方向性を出していかなければならないというように思っております。審議会の先生方にご議論いただくのは、コロナの状況が非常に厳しい状況になっておりますので、いろんなことをお願いしなければならない状況になっております」

「そういうことがひと段落ついて、ご評価いただく、ご審議いただく、そういう状況になれば、早いうちにご意見いただけたらと思います。決して遅れさせるという意味ではなくて、状況に応じて、適切に速やかに対応をお願いしていただきたいと思っております」

これに対し、MSDは「厚生労働大臣が 8 年以上の歳月を経てようやく積極的な接種勧奨再開に向けた見通しを表明されたことは、MSD として一歩前 進したものと受け止めています」と評価しつつも、今年10月の積極的勧奨の再開に向けて厚労省と協力しながら準備を進めてきたことに触れた。

その上で、

「HPVワクチンの有効性および安全性を再確認する国内外の科学的エビデンスはすでに十分蓄積されており、このような状況下において、今回、厚生労働省が検討の期限を明示しないまま、積極的な勧奨再開の事実上の先送りともとれる状況となったことを遺憾に思い、厚生労働大臣が会見で言及された審議会における一刻も早い審議の開始を強く願います」

と強く遺憾の意を述べ、早期の審議開始を求めた。さらに積極的勧奨の差し控えで定期接種のチャンスを逃した女子に対する施策も示すことを要望した。

MSDステートメント全文

MSDのステートメント全文は以下の通り。

2013 年 6 月14 日に、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症の定期接種に関して、定期接種の位置づけを変更しないまま、HPV ワクチンの積極的な接種勧奨を一時的に差し控える措置が講じられてから、8 年以上が経過しています。

2021 年 8 月 31 日の厚生労働大臣記者会見において、厚生労働大臣が 8 年以上の歳月を経てようやく積極的な接種勧奨再開に向けた見通しを表明されたことは、MSD として一歩前進したものと受け止めています。

一方、MSDとしては厚生労働省と緊密に協力し、本年 10 月の積極的な接種勧奨の再開に向けてあらゆる準備を進めてきました。HPVワクチンの有効性および安全性を再確認する国内外の科学的エビデンスはすでに十分蓄積されており、このような状況下において、今回、厚生労働省が検討の期限を明示しないまま、積極的な勧奨再開の事実上の先送りともとれる状況となったことを遺憾に思い、厚生労働大臣が会見で言及された審議会における一刻も早い審議の開始を強く願います。

MSDとしては引き続き、子宮頸がんをはじめとする HPV関連疾患から日本の女性を守るために、HPVワクチンの積極的な接種勧奨の一日も早い再開を強く求める姿勢を貫いてまいります。

加えて、積極的な勧奨がされなかったために過去8年にわたって定期接種の機会を逃した方々に対する施策についても、厚生労働省には具体的な計画を速やかに示していただくことを強く要望いたします。