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製薬会社が厚労省に警告「HPVワクチン廃棄なら国際的に批判」

積極的勧奨再開の議論に向けて動き始めている日本ですが、公式な手続きは始まっていません。再開に向けて日本向けのワクチンを確保した製薬会社が、「廃棄するようなことがあれば、今後の供給にも悪影響を与える」と警告する文書を厚労省に渡していたことがわかりました。

子宮頸がんや肛門がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐHPVワクチン。

日本では公費でうてる定期接種でありながら、厚生労働省が「積極的勧奨を差し控える」措置を8年以上取り続け、海外と比べ接種率が極端に低迷してきた。

時事通信

田村憲久厚労相は「積極的勧奨を差し控えた時に厚労相だった自分が、今また大臣になったのは巡り合わせだと思う」と話しているが...

この積極的勧奨が10月に再開されることを見越して、日本向けにHPVワクチンを確保した製薬会社が、一向に公式の手続きが進まないことに痺れを切らし、再開手続きを強く迫る文書を厚労相に渡していたことがわかった。

「大量廃棄するようなことがあれば、今後のワクチン供給にも悪影響を及ぼす可能性がある」と警告している。

積極的勧奨再開が延びると...2022年4月から廃棄するリスク

HPVワクチンは、日本では2013年4月から小学校6年〜高校1年の女子は公費でうてる定期接種となった。ところが、接種後の体調不良をメディアがセンセーショナルに報じたこともあり、同年6月に厚労省は積極的勧奨を差し控え、接種率が一時1%未満に激減した。

接種のチャンスを逃す女子が増えたことを重くみた厚労省は昨年10月、個別にお知らせを送るよう自治体に通知した。その結果、各地で接種率が回復したことから、厚労省は積極的勧奨再開のための準備を始めている。

こうした動きがある中、4種類のHPVへの感染を防ぐ4価ワクチン「ガーダシル」を製造販売するMSDはこの文書の中で、今年10月の積極的勧奨再開、2022年4月までのキャッチアップ接種開始を前提に、厚労省予防接種室からの要請を受けて、接種率が回復しても支障をきたさない程度の量のワクチンを日本向けに確保したとしている。

積極的勧奨を再開するには、公式には厚労省の有識者会議「予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」の承認を受け、厚労省から通知を出す手続きが必要だ。

ところが8月の終わりに近づいても、副反応検討部会での議論も始まらないことに痺れを切らしたMSDは文書の中で「世界的な需要の高まりの中、日本を優先して確保したワクチンを廃棄せざるを得なくなるリスクがある」と懸念を表明。

海外で製造される4価ワクチンは、日本の需要に合わせて量を確保した後、日本の規格に合わせた調合がなされ、出荷の1年前に充填され、日本向けのパッケージが付けられる。そのため、他国へ転用することは事実上難しいという。

そして2021年10月の積極的勧奨再開に向けて、製造し、既に日本に到着しているワクチンは、早くて2022年4月から順番に廃棄処分が始まる見込みだとしている。

4価だけでなく9価ワクチンの供給にも悪影響

HPVワクチンはその有効性と安全性の高さから世界中で接種が進み、現在までに8億回以上うたれている。

子宮頸がんだけでなく、男性もかかる肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんなども防ぐ効果があるため、130以上の国と地域で承認されたガーダシルは、100以上の国と地域で男性接種が承認されている。

需要の高まりと共に、世界中でHPVワクチンの争奪戦が起きており、2019年の段階では世界中で2900万本のワクチンが足りなくなると予測されていた。

こうした状況がある中、日本で大量に廃棄するようなことがあれば、日本は世界から批判されるとMSDは指摘。

「世界的に供給が限られている重要なワクチンをいったん自国のために確保しながら廃棄することは、他国におけるHPV感染予防の機会を奪っていることに等しく、ワクチンの適切な配分を重視する国際的な公衆衛生の観点から、決して容認、正当化することはできません」

そして、「大量のワクチンを廃棄せざるを得なくなった場合には、ワクチンは重要かつ必須の公共財であるという認識を日本政府が持っていることを世界の関係者に納得してもらうことが難しくなる」とした上で、こう突き放している。

「そのような事態になれば、4価ワクチンのみならず、同様に世界的に需要が高まっている9価ワクチンを日本向けに確保する上でも悪影響を及ぼし得ると懸念する」

さらに、新型コロナウイルスが大流行する中、日本向けに準備されたワクチンを廃棄するようなことがあれば、日本政府も国際的な批判にさらされ、他の医薬品やワクチンの供給確保にも影響する可能性があると警告。

最後に、早急な積極的な勧奨の再開と、その後のキャッチアップ接種の実施に向けて、迅速な決断をするよう要望した。

政府関係者 「国際的な信頼の失墜も」

製薬会社からのこのような激しい突き上げが厚労省にきていることに対し、政府関係者の一人はこう話す。

「このままでは『貴重なワクチンを廃棄する国』として、国際的な信頼を失墜させるキャンペーンが起こってもおかしくない状況です。ワクチンや治療薬を供給するラインから日本が外れていきかねません」

「MSDは変異株への効果が期待されるコロナの経口治療薬の開発も進めており、ここで信頼を失えば、今後の日本のコロナ対策に影響が出てくる可能性もあります。『日本にはずっと裏切られ続けてきたから、世界の公衆衛生をしっかり考えることのできる国に優先して回す』と言われたら反論ができません」

「政府は一刻も早く、積極的勧奨再開という正常化に向けて動き始めてほしいと思います」

田村大臣 「今、10月からという話があるわけではない」

一方、田村厚労相は27日の閣議後記者会見で、記者から積極的勧奨再開の議論のスケジュールを問われ、以下のように答えた。

「HPVワクチンは私が前回の大臣の時にマスコミの報道等でもいろいろございまして、積極勧奨(をどうするか)を審議会に諮りましたら、いったん積極勧奨を止めるということで、今に至っております」

「一方で、世界的に見てもHPVワクチンというのは広くうたれ、我々、WHOからもHPVワクチンを積極勧奨しないことに対していろいろとご意見をいただいている状況であります」

「そういうところを鑑みながら、専門家の方々のご議論をいただいた上でどうしていくかということは決めていくという話になろうと思いますが、今10月からというような話はあるわけではございません」

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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