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HPVワクチンの積極的勧奨 田村厚労相「いつまでにとは申し上げられない」と判断を先送り

HPVワクチンの積極的勧奨再開が強く求められる中、田村厚労相は「できるだけ早く」としながらも、コロナ対応を理由に時期は明言しませんでした。事実上、判断を先送りしたと見られます。

子宮頸がんや肛門がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐHPVワクチン。

厚労省が積極的勧奨を差し控えて8年以上が経ち、接種率が激減。その間も毎年1万人が新たに子宮頸がんになり、3000人が死亡することから、積極的にワクチンで予防することが求められている。

田村憲久厚労相は8月31日、閣議後の記者会見で、この積極的勧奨再開について「なるべく早く方向性を」と語りながらも、コロナ対応を理由に時期については明言しなかった。事実上、判断を先送りしたとみられる。

BuzzFeed Japan Medicalは大臣の発言を詳報する。

「できるだけ早く」どうするかを判断 コロナ対応を理由に時期は明言せず

【冒頭の大臣発言】

昨日自民党の議連からHPVワクチンに関する要望を受け取らせていただきました。2回目でございます。

平成25年(2013年)、HPVワクチンの定期接種化、積極的勧奨を決定したわけですが、ちょうど私その時大臣をやっておりまして、いろんな状況のもとに積極的勧奨の差し控えを決定いたしました。これは審議会でご議論いただいた上でそうしたわけです。

私自身が、この積極的勧奨をどうするかは私に与えられた大きな宿題だと思っております。

できるだけ早く、今は差し控えているわけでありますけれども、どうするかということを判断していかなければいけないと思っています。

WHOからも今のような状況に対してはご意見をいただいているわけでございます。

一定年数経って参りますと、その後の子宮頸がんの状況に大きな影響が与えられるという評価もいただいている。

今、新型コロナの対応ということで実は予防接種部会も、ワクチンの問題、副反応の問題をいろんな形で本来は1ヶ月に1回という話だったのですけれども、2週間に1回、場合によっては毎週対応していただいている。

いろんな日程的な調整もございます。新型コロナの状況がある程度、段落がついたという時になると思いますが、審議会でご評価の議論をいただかないとならないということですので、その準備はしていかなければならないと思っております。

いずれにいたしましても、いつまでも今のような状況でいいというわけではございませんので、しっかりと積極的勧奨に向かってご評価いただけるかどうかを専門家の方々にしっかりご議論、ご審議いただくことが必要だと思っております。

そのようなことを昨日は議員連盟の皆様にもお答えさせていただきました。

記者の質疑 「10月は物理的に難しい」「コロナが厳しい状況」

(テレビ東京)ーー子宮頸がんワクチンのことについて伺う。昨日の議連は10月の再開を求めたが、今の大臣の話だと新型コロナワクチンの接種がある程度目処がつくまで、ついた後に、再開の是非そのものを審議会で判断することになるだろうという見通しということでいいか?

まず審議会でいろんな議論をお願いし、かなり負荷がかかっていて大変申し訳ない状況でございます。

コロナもワクチンをどうするか、ブースターだとか、副反応もあります。いろんなことをご対応いただいている。同じ先生にお願いしている。それが滞ってはならないと思っております。

もう一つは積極勧奨というのは要は国が積極勧奨をしているが、実際に対応いただくのは地方自治体になります。当然のごとく、郵送等々、接種券などを送っていただく、積極勧奨になれば予算も必要になってきますから、地方議会で補正予算の対応も必要になってきます。

地方自治体には今(コロナの)ワクチン接種をやっていただいているという状況で、しかも3回目をどうするかも決まっていない状況です。それぞれ地方の皆様にも協力いただくこともあると思います。

そういうことを勘案しますと、なかなか10月というのは物理的に難しいという話は昨日もさせていただきました。

しかしなるべく早く方向性を出していかなければならないというように思っております。審議会の先生方にご議論いただくのは、コロナの状況が非常に厳しい状況になっておりますので、いろんなことをお願いしなければならない状況になっております。

そういうことがひと段落ついて、ご評価いただく、ご審議いただく、そういう状況になれば、早いうちにご意見いただけたらと思います。決して遅れさせるという意味ではなくて、状況に応じて、適切に速やかに対応をお願いしていただきたいと思っております。

「いつまでとは今、申し上げられない」

(BuzzFeed Japan Medical)ーー10月までというのは物理的に難しいということだが、10月までに再開をという声は、高校1年生の女子が3回接種に間に合うには10月、遅くても11月までに1回目をうたないと3回うてないから。定期接種のチャンスを逃すという重大な節目がそこにあるから言っているわけだが、10月が難しいならいつならできるのか。予算のことをおっしゃったが、既に交付税措置はなされている。地方の補正予算が組めないという理由で遅らせるのは国民の納得を得られない。副反応検討部会に少なくとも今年度中、今年中にはかけるのか、大臣の目標でもいいので時期を明言してください。

もう一点、製薬会社からこのまま積極的勧奨差し控えが長引いてワクチンを廃棄することがあれば国際的な批判を免れず、ワクチンの確保も難しくなるという文書が大臣にも提出されているはずだ。コロナ流行でワクチン確保の重要性は痛感していると思うが、この要望についてどう受け止めているのか。ワクチン確保が今後できなくなったら、HPVワクチンの接種に悪影響を及ぼすと思う。この責任をどう考えるのか。

今、HPVワクチンはうてるので、積極的勧奨はしておりませんが、うっていただくために各自治体6割ぐらいが文書等々を発していただいているのはわかってもらえていると思います。そこで今までわかってきた色々な情報をお伝えし、若干接種率が上がり出したこともある。うてないというわけではありません。予算も措置されています。

一方で、積極勧奨となるとそれに対応するのは自治体です。ワクチンをうつお金ではなくて、積極勧奨を知らしめるためのいろんな対応をしなければなりません。それは補正予算で組まないとできないということをご理解ください。

いつまでにということを言われましたが、コロナの状況がまだわからないので、いつまでとは今、申し上げられません。私の日程よりかは、審議会の皆様のご日程を諮らなければなりません。

しかしながら先ほど申し上げたとおり、いつまでも後回しでいいとは思っておりませんので、先ほど来、申し上げているように、積極的勧奨を進めてすぐにますマスメディアも含めていろんなご意見が出ました。それはご承知だと思います。

その中において、審議会におはかりして、積極的勧奨を一時停止したという状況があります。その責任を今私も感じておりますし、あの頃から比べればマスメディアもいろんな報道が出るようになっております。

そういうことも踏まえた上でなるべく早く検討して参りたいと申し上げています。

ワクチン廃棄による国際的批判の懸念「契約しているわけではない」「製薬会社の意見」

それから製薬メーカーの話は、新たなワクチンも出てきておりまして、今言われている4価に関してはそういうご意見もありますが、製薬メーカーのご意見でございますので、我々契約しているわけでもなんでもありませんから、それは製薬メーカーのご意見として承らせていただきたいと思います。

いずれにいたしましても新たなワクチンが増えて、しっかりと確保していかなければならないと思います。

(BuzzFeed Japan Medical)不足する可能性については重くは受け止めていらっしゃらないということですか?

新たなワクチンは新たなワクチンで確保していきたいと思います。4価のワクチンは4価のワクチンで色々なご意見はあると思います。

8年以上積極的勧奨差し控え 接種率激減

HPVワクチンは2013年4月、小学校6年生から高校1年生の女子は公費でうてる定期接種となったが、接種後に体調不良を訴える女子をマスコミが「副反応」や「薬害」としてセンセーショナルに報じたこともあり、接種への不安が高まった。

厚労省は同年6月、積極的勧奨を差し控えるよう自治体に通知し、接種率は70%以上から一時1%未満に激減。

ところが自分が対象者であることも知らずに無料で接種できるチャンスを逃す女子が増えたため、厚労省は昨年10月、自治体に個別にお知らせを送るよう通知した。

接種率は各自治体で回復しつつあり、この効果を見て、厚労省は積極的勧奨再開の手続きを始める準備を進めている。

この動きに関し、自民党の「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」は30日に「積極的勧奨を10月より前に再開すること」などを求める要望書を田村厚労相らに提出

医師らで運営するHPVワクチン啓発プロジェクト「みんパピ」も同時に積極的勧奨再開を求める5万5000筆の署名を厚労相に渡していた