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政府批判は仕方ない。でもワクチン不安は煽らないで。三原じゅん子副大臣がメディアの煽り報道に苦言

新型コロナウイルス対策で期待がかけられながらも、メディアによって不安を煽る報道が始まっているワクチン。かつて日本ではHPVワクチンで恐怖を煽り、接種率が激減する失敗を経験しています。私たちは今、このワクチンとどう向き合うべきなのでしょう。

新型コロナウイルスの流行がなかなか収まらない中、注目が集まるワクチンの効果。世界で接種が進む中、日本では承認前から不安を煽る報道が始まっています。

一方、せっかく無料でうてるワクチンがあるのに、副反応への不安がメディアによって煽られ、接種率が激減しているのがHPVワクチンです。

厚生労働省の担当副大臣、三原じゅん子氏にこのワクチンとどう向き合うべきか聞きました。

子宮頸がん予防に効果はある? 厚労省も公式に認める

ーー昨年10月にはスウェーデンから、HPVワクチンが浸潤子宮頸がんを減らしたことを示す世界初の論文が出てきました。これまで、厚労省は「子宮頸がんを減らしたという直接のエビデンスはない」と国会でも答弁してきましたが。

そうですね。私は散々国会でそれについて議論してきました。

前がん病変を通じてがんになるわけですから、前がん病変を予防するならば、がんの予防の効果は当然期待されるものです。前がん病変を通過しなければがんになりません。

実際にがんを予防するエビデンスは治験では出せないとずっと言い続けてきました。だって、それはがんになるまで進むのを放置するということですから。倫理的にも、前がん病変になったら、そこで止めることは決まっています。

がんの予防のワクチンは初めてですから、そういう風に厚労省が答弁してしまったのは、問題をよくわかっていなかったのだろうなとしか思えないです。

実際に、スウェーデンの論文が出るまでエビデンスは示されていなかったと厚労省は思っているわけです。こういう大規模な疫学調査をやったから、この結果がわかって、実際にエビデンスになったという認識なんですよね。

ーー厚労省の公式見解としても、HPVワクチンが子宮頸がんを減らしたエビデンスの一つとして捉えているということでよろしいですか?

役所としても、最近になって子宮頸がんの発症予防効果を示す研究が徐々に出されており、スウェーデンの研究は大規模調査によって医学的にHPVワクチンの効果が示されており、意義のある論文であると認めています。

今後期待されていた効果を証明するエビデンスがこれからも徐々に増えてくるのではないかと考えています。

体調不良 ワクチンのせいであろうがなかろうが支援を

ーーHPVワクチンの安全性については国内外でエビデンスが積み上がっており、国内でも接種の有無にかかわらず同じ症状が出ることを示した厚労省祖父江班の疫学調査名古屋スタディが報告されています。安全性についての厚労省の見解を改めて教えてください。

積極的な勧奨の差し控え後も審議会で、ワクチンに関する海外を含めた医学的知見やHPVワクチン接種後に生じた副反応疑いの症例について定期的に評価しています。その上で、「有効性と比較して高いリスクは認められない」という評価が維持されています。

一方、ワクチン接種との因果関係を問わず、接種後に体調を崩した方への支援は重要と考えます。

以上が厚労省の公式見解です。私もいつも言っている通りで一緒ですね。

ワクチンのせいだろうが、そうでなかろうが、直接的な因果関係はどうでもいい。実際に体調を崩している方がいらっしゃるなら、その方を支援するのが何より重要だとずっと言っています。

ただ、それと安全性の知見がちゃんと積み上がってきているということは別問題ですよね。

国内でも知見が積み上がってきているのであれば、これからもどんどん出てくると思いますし、そうしたことをきちんと対象者や保護者のみなさんに伝えるべきです。それが当たり前です。

ーーその一方で、接種後に体調不良を訴える女子たちの治療については、医療機関によって差があります。協力医療機関一覧も、薬害を訴える医師の医療機関が混在しています。治療体制について質をそろえるべきだと考えますが、ご見解を聞かせてください。

85医療機関のことですね。ちょっと調べてみます。

9価ワクチン、男性の定期接種化は?

ーー9価ワクチンの定期接種化の審議が進められていますが、スケジュール感も含めて見通しを教えてください。

昨年8月に審議会で定期接種化の検討を始めることが決まりました。ファクトシート(定期接種化による費用対効果などを検討する資料)を国立感染症研究所で作成中です。

今後提出されたファクトシートを元に審議が行われます。これに要する期間がだいたい半年なので、2月に提出されると思います。3月ぐらいから審議が始まるのではないでしょうか?

審議会がやってもらえればいいのですが、コロナで仕方なく開けない場合もありますよね。

ーー男性も定期接種化を求める声が上がっています。HPVは肛門がんの他、中咽頭癌、陰茎がんなど男性もかかるがんに関わり、海外でも多くの国で男性の公的接種が導入されていることを考えると日本でも検討すべきでしょう。どのように考えますか?

こちらは日本でも男性に適用が拡大された4価ワクチンのことですね。世界では100ヶ国ぐらいで男性接種は承認され、50ヶ国で公費接種になっていると聞いています。

男性接種は12月に薬事承認されたので、またここから半年かけて、6月から定期接種化の検討がなされるようです。

新型コロナをワクチンで防げるのか? メディアへのお願い

ーー新型コロナウイルスのワクチン接種も2月下旬にも始まりそうです。一部のメディアではワクチンの不安を煽るアンケート結果を報道したり、接種後の死者の数をきちんと説明なく書いたりして、HPVワクチンの時と同じことが始まっているのですが、どう考えますか?

これは本当に重大問題です。これで例えば、日本ではワクチンをみんなうたないということになって、大量に廃棄したということになれば、世界からの信頼もなくなります。外交や経済など色々なことにつながっていきます。

コロナは自分の国だけの問題ではありません。

本当はHPVもそうなんです。HPV関連の子宮頸がんで亡くなる方は年間3000人と言われています。コロナで今、死者は4400人ぐらいになり、これだけ大騒ぎになっています。子宮頸がんは女の子だけで3000人です。子宮を取る人も多いです。

それだけの子宮が失われたり、十分な機能を果たせなくなったりする。負の影響はコロナウイルスもHPVも同じだと思います。

ここでまたHPVワクチンと同じことをやってしまったら、もう2度と日本は信頼を取り戻すことはできなくなると思います。

ーー国民の健康を守る厚生労働省としては、いたずらにワクチン不信を煽る報道は控えてほしいわけですね。

絶対にやめてほしいです。私が今、力を入れたいと思っているのは若い子たちの接種のことです。若い子は自分たちが重症化しないと安心していますが、実は後遺症で多くの子たちが悩まされています。治っていない子たちもかなりいるわけですね。

そして、ワクチンというのは「集団免疫」を作る意味でも、受けたくても受けられない人を守る力を持っている。鎖国ではないのですから諸外国との連携のため、外交のためにも「私はうちません」という考え方はどうだろうかと思います。

国民が政府を批判することはもちろんあるでしょう。人それぞれの考え方があるからそれは仕方ないことだと思います。でも、政府批判をしたいがために、ワクチン批判をするのはどうでしょうか。

政府の対策の逆張りをするために、国民を惑わせたり、不安にさせたりするのはやってはいけないことだと思います。国民の不安を煽ることもいけないし、若者に「重症化しないからワクチンをうたなくても大丈夫」と思わせるのもいけない。

コロナ疲れやコロナ慣れに対しても、メディアはそれを防ぐ側であってほしいと思います。みんなコロナを収束させたいのでしょう? コメンテーターの方達は、逆の方向には行かないでほしいですね。

HPVワクチン、どう使ってほしい?

ーー最後にHPVワクチンを、日本の対象者の人たちにどう使ってほしいと考えていますか? ご自身の体験もふまえて教えてください

がんを防げる画期的なワクチンが、今、目の前にあります。自分の命や家族のことを考えた時に、この画期的なワクチンをあなたはうちませんか?

若い女性たちに、私のように子宮を失った女性の悲しみを味わわせたくない。子どもが欲しいのに子どもが産めない女性の悲しさは経験させたくないのです。

だからといって勧めるわけではないですが、心配する気持ちがあるならば、納得できるようにお医者さんに聞いた方がいいと思います。このワクチンをうった方がいいかどうかをぜひ専門家に聞いてみてください。