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コロナワクチンめぐる「女子高生100人調査」に批判殺到。毎日新聞などが掲載→削除

批判を浴びたのはオリコンニュースの記事。女子高生100人に対し、「コロナウイルスのワクチンが日本で利用可能になった場合、早期に接種を受けたいですか?」とのアンケートを取ったもので、ワクチンの不安や副作用を煽るような内容であるとして批判を浴びていた。

新型コロナウイルスのワクチン接種を希望するかどうか、「女子高生」に限定してアンケートしたという記事が、「ワクチンの不安や副作用を煽るような内容だ」という批判を集め、その後削除された。

もともとはオリコンニュースが配信した記事で、毎日新聞や朝日新聞、中日新聞など他社サイトも転載。なかでも毎日新聞のTwitterで拡散し、同社は釈明に追い込まれた。

ワクチンをめぐっては、専門家からHPVワクチンの教訓を踏まえ「リスクコミュニケーション」の必要性が強調される一方、一部メディアでは不安を煽ったり、有効性を否定したりするような報道も散見されている。

批判を浴びたのはオリコンニュースの【新型コロナワクチン、6割超「受けたくない」 女子高生100人にアンケート】という1月20日の記事。

調査会社を通じて女子高生100人に対し、「コロナウイルスのワクチンが日本で利用可能になった場合、早期に接種を受けたいですか?」とのアンケートを取った結果、 「受けたい:34人」「受けたくない:66人」という結果が出た、と伝えた。

さらにその理由として、「副作用」「安全なのかわからないから」が多かったと紹介。「本当に効果があるかわからない」「まだ信用できない」「打っても変わらないと思う」などという意見も掲載している。

一方で、エビデンスを踏まえたワクチンの有効性には触れておらず、「政府が臨床試験を重ね、安全性を確保してから接種を開始することは間違いないが、不安な気持ちはぬぐえないということだろう」などと、副作用を強調した記事となっていた。

この記事はオリコンの自社サイトだけではなく、毎日や朝日、中日など複数のメディアのサイトが掲載。そのうち毎日新聞が自社Twitterで「女子高生100人にアンケート、6割超が新型コロナワクチンを受けたくないと答えました」と発信したことで、拡散、批判が集まった。

副作用への不安を一方的にあおる「反ワクチン」のような内容とも捉えられることから、「多くの人命が危険にさらされる」「感染拡大防ぎたいなら、不安煽るより安全性の報道を」「なぜ女子高生限定の調査なのか」などという声が相次いだ。

医療者からも声があがっている。たとえば産婦人科医の宋美玄さんは、自らのTwitterで以下のように批判している。

「コロナワクチンについて充分な情報提供もなしに取ったアンケートをニュースにすることに何の意味があるのか。 目先のページビューは稼げるかも知れないが、世界中で日本だけコロナを克服できない未来にしたいのだろうか」

ワクチンの有効性は?

前提として、新型コロナワクチンは有効性があることが研究で示されている。

厚生労働省もサイト上で「ワクチンを接種したグループでは、ワクチンでないものを接種したグループより約70~95%発症者が少なかった」とする海外の研究を紹介。

「接種された方が感染したとしても、重症化を防ぐことが期待」「医療機関の負担を減らすための重要な手段」と訴え、副作用については、「どんなワクチンでも、副反応が起こる可能性があります」と、以下のように説明している。

ワクチン接種後は、体内に異物を投与するため、接種部位の腫れ・痛み、発熱、頭痛などの副反応が起こることがあります。治療を要したり、障害が残るほどの重度なものは、極めて稀ではあるものの、何らかの副反応が起こる可能性を無くすことはできません。

そのうえで、日本に供給予定のワクチンでは「接種部位の痛みや、頭痛・倦怠感・筋肉痛などが報告されています」としながら、「安全性の確保を最優先にしています」と強調している。

なお、アメリカでは重篤なアレルギー反応「アナフィラキシー」が10万人に1人程度の割合で起きたと報告されている。

米疾病対策予防センター(CDC)によると、ファイザー社製ワクチン189万3360回の接種でアナフィラキシーがあったのは21例。確率にすると、0.0011%だ。

うち17例はアレルギーまたはアレルギー反応の既往歴が、7例はアナフィラキシーの既往歴があった。予後が追跡できた20人は、全員が回復。死亡例は確認されていない。

ワクチンは日本では早ければ2月末から医療従事者への接種が開始される予定だ。外国人を含め、全住民が無料で受けられるという。

尾身会長の示した懸念

ワクチンをめぐっては、政府の分科会の尾身茂会長が12月11日の会見で、「リスクコミュニケーション」の重要性を以下のように指摘していた。

「仮に副反応があった場合に、どう社会が反応するか。副反応は一定程度あるわけですから、それをどう正しく知ってもらうかは新たな課題です」

「よほどうまく(コミュニケーションを)しないと、いろんな差別が出てきてしまいます。うつ人とうたない人と出てくる。あるいは反対派と賛成派が分断してしまうリスクもある」

尾身会長は「子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の時に同じようなことが起きましたね」と、HPVワクチン接種後の体調不良がセンセーショナルに報じられたことで、接種が7年以上も事実上ストップしている問題にも触れ、こう語った。

「正しく、しかもわかりやすく、みんなの共通の理解が得られるためには、単に数値を出すだけではなくて、コミュニケーションのスキル(が必要)というか、相手の受ける側の立場や気持ちもわかった上でコミュニケーションをしないと、分断や差別などワクチンそのものよりもそのことが事件になってしまうことがある」

こうした懸念がある一方で、一部の週刊誌やワイドショーなどではすでにワクチンの不安を煽ったり、「感染予防効果はなし」などと有効性を否定したりするような報道も散見されている。

批判が集まった記事は、1月21日正午すぎに削除された。オリコンニュース編集部はBuzzFeed Newsの取材に対し、「チェック体制の不備で掲載されてしまったため、編集部内で記事が不適切と判断し、削除しました」と回答した。

削除は毎日新聞のツイートに対する批判を受けたわけではなく、あくまで自社判断だという。

また、毎日新聞も午後2時14分にTwitterで「配信元が内容が不適切と判断して削除しました。ツイートも削除します。掲載にあたり内容の確認が不十分でした」と釈明。

取材に対し、「掲載・ツイートにあたり内容の確認が不十分でした。今後は十分なチェックに努めます」とコメントした。


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