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「高校生は要注意」 夏休み明けの学校、これまでとは違うレベルの警戒を

デルタ株の蔓延で10代以下にも感染が増えています。塾でのクラスター、集団感染による甲子園の出場停止などのニュースが相次ぐ中、どのように気をつけたらいいのでしょう。夏休み明けを前に考えます。

感染力の高い変異ウイルス「デルタ株」への置き換わりが進み、若者への感染も目立ってきている今回の第5波。

塾でのクラスターや集団感染による甲子園の出場停止などのニュースが相次ぎ、子供の重症者も出てきている。

公衆衛生の専門家が気にしているのは、高校生の間の感染の広がりが、夏休み明けに学校でこれまでと違う影響をもたらすことだ。

和田耕治さん提供

「特に高校生はこれまで以上に警戒を」と語る和田耕治さん

BuzzFeed Japan Medicalは、国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんに聞いた。

※インタビューは8月17日午後に行い、その時点の情報に基づいている。

10代以下が今までにない増え方 「今までとは少し違う危機感」

ーー子供が重症化した例があちこちの医師から報告され始めています。一部で人工呼吸器をつける子どもも出ているようですが、子供の感染についてはどう見ていますか?

感染拡大する中で、間もなく新学期が始まるに当たって、子どもたちへの影響を心配しています。

今までとは少し違う危機感を持たないといけません。

厚労省アドバイザリーボード(8月11日)

東京の年代別新規陽性者の推移。10代以下が急増している

夏休みの間に色々なイベントがありました。このグラフは東京都の新規陽性者数で接触歴のわかる人の推移です。10代以下は赤い線ですが、とても増えています。

多くは家族内感染で、今や40〜50代と同じぐらいです。10代以下の感染拡大がこれまでの流行よりも目立っています。

ーーデルタ株の影響ですか?

そうですね。これまでなぜ成人と比べて子供が感染しづらかったのか、正確な理由はよくわかっていません。ただデルタ株が広がりやすく感染しやすいということは明らかで、大学生だけでなく最近は高校生でも広がりやすくなっています。

20〜50代は第3波と同じレベルですが、10代以下だけ伸びています。10代以下といっても、大学生、高校生が多く、小中学生にどう広がるかはまだよくわかりません。

しかし、千葉県船橋市の学習塾で小中学生のクラスターが発生したように、大人の中で広がりが出てくると、小中学生にも広がる可能性があります。大人から感染したのだろうと考えられますが、子供同士での感染がどのくらいあったかはわかりません。

ただ、高校生の間で感染が広がっているのはデータでも見えてきています。今までは大人の感染からの染み出しで広がっていたのが、高校生の間でも友達同士で感染しています。15〜18歳は要注意の年代になりつつあります。

甲子園でも宮崎商業高校で5人の感染が確認されて、出場を辞退することになりましたね。高校生は今まで以上に警戒が必要です。まず警戒するなら、小学生中学生よりは高校生からです。

新学期が始まる9月以降、部活でも高校生はしっかりした感染対策をしていただきたいと思います。

中高生は不織布マスクを徹底して

ーー具体的には学校でどう感染対策をしたらいいですか?

今後の子供の流行は成人の流行がどうなるかにかかっています。学校を休校するかについては、まずは個別の学校で判断します。地域で一斉にというのはできるだけ慎重にしなければなりません。

秋は換気がしやすい季節なので感染拡大が少し落ち着くことに少し期待していますが、地域の流行状況によるのでなんとも言えません。

ウレタンマスクのデザインや色がおしゃれで気に入っている学生もいると思いますが性能は落ちますので、不織布のマスクの着用を徹底してほしい。

不織布マスクの徹底は学校でもルールにして、文科省のガイドラインにも盛り込むべきですが、小学校低学年は不織布マスクだと息苦しくて使うのが難しいという話もあります。

高校生や中学生の多くは特段の理由がない限り、不織布製マスクをつけるように学校で指定するのもよいでしょう。

ワクチン接種どうする? 大学受験生は優先接種も検討を

ワクチンを高校生がうてるかどうかにも関わってきます。

夏休みのうちに接種しましょうと、高校生にも広げている自治体もあるようです。

しかし、公衆衛生の観点からは、60代、50代、40代と年代別に順番を守ってほしい。やはり年齢が高い方が重症化のリスクがありますから。

高校生はファイザー製もモデルナ製も使えるようになったので、順番がきたら親と相談して個別に接種するかどうかを判断してほしい。学校での集団接種も、今後、検討すべきです。

まず直面しそうな課題は、大学受験生のワクチン接種をどうするかです。

年齢順にうっていくと、10代後半の受験生に順番が回ってくるのは、自治体によっては11月や12月になりかねません。家族の職域接種の枠でうってもらってもいいですが、そうなると高校生の間でもワクチン格差が出てきます。

1回目をうってから2回目を接種して免疫が得られるまで6週間程度かかります。

1月中旬の大学入学共通試験の前に接種を終えるためには、11月の後半までに1回目を接種したいところです。

しかし、2回目に強くなる副反応を考えると、3日間程度で収まるといっても、受験直前に3日間勉強できない可能性を考えてためらう学生もいるでしょう。試験がうまくいかなかったらそうしたことを悔やむ学生もいるかもしれません。

そんな思いをさせないためにも、受験生は少し早めに接種することも検討した方がいい。特に大学受験は都道府県を超えた受験があることを考えると、配慮する必要があるのだろうと思います。

韓国とイスラエルは昨年、受験生だけを優先して接種しました。日本でもコロナワクチン接種をどう高校生、特に受験生に呼びかけるかは今後の課題です。

海外でも子供の重症者が増えている

これは米国CDC(疾病管理予防センター)のデータですが、アメリカの0〜17歳の子供の新規入院の傾向です。これだけみると急増しているようにもみえます。

CDC / Via cdc.gov

米国の0〜17歳の10万人あたりの新規入院者数の推移。7月に入って急増している。

でも冷静によくみると、10万人に対して0.3とか0.4人ですから、成人と比べてもかなり少ないです。

それでもやはりデルタ株の蔓延で増えてきています。このデータから考えると、日本でも今後子供の重症例を考えて、地域の医療体制を備える必要があります。

ーーこれまで子供は重症化しないとずっと言われてきましたが、デルタ株でも重症化率は成人よりは低いですよね。

それはかなり低いです。デルタ株であっても子供の重症化率は低く抑えられています。それでも一定数の感染者が出たら、重症者も出る可能性があるということです。

日本では10代以下で新型コロナで亡くなった人は、8月10日現在まで報告されていません。

子供たちの感染に関しては多くが軽症ではあることは間違いない。

症状が長引く「Long COVID」に関する子供の研究がThe Lancet Child & Adolescent Healthに掲載されました。

これはデルタ株ではない時期ですが、2020年9月から2021年2月まで、英国の5~17歳の子供1734人を調査したところ、最も一般的な症状は、5~11歳では頭痛(62.2%)、倦怠感(55.0%)、発熱(43.7%)で、12~17歳では喉の痛み(51.0 %)です。

発症後4週間後まで症状があったのは4.4%、8週間以上では1.8%に減少しましたが、年齢が高いこと(12~17歳)は症状の持続や、症状数の増加に関係し、年長の子供の症状が長引く可能性は、その下の年代に比べると高いです。

頭痛や倦怠感、発熱がある場合は、休みをとって学校内で広げないようにしてほしいし、できれば受診して検査も受けていただきたい。部活も休むべきです。

甲子園の事例のように、それで感染が広がって出場できなくなる方がよほど痛手です。部活も感染者が出たらさっと停止して流行を収めないと授業にも影響する可能性があります。

先手先手で対応する。高校3年生は特に休みが長引くと授業単位の不足に結びつく心配もあります。

学校での感染ルート、どの流れを警戒すべき?

ーー9月からの学校ですが、今の東京や沖縄のような感染状況だとしても休校までは考えなくてもいいですか?

そうですね。色々な生活をしてきた生徒が一つの場所に集まってくるわけですから、新学期の初めは注意はしてほしい。

何を注意するかといえば、やはり症状です。

体調がおかしなければ休む。そして学校は休むことに配慮してほしい。休むことによって学生が不利益を被ることがないようにしてください。

ーー15歳から18歳が特に要注意ということですが、小中学生はどうですか?

小中学生は高校生よりは守られている印象はあります。それでも完全に守られているわけではないのは、塾での集団感染が出てきていることからも警戒しなければいけません。

学校における感染ルートは4パターンあります。

  1. 子供→子供
  2. 子供→教員
  3. 教員→教員
  4. 教員→子供

先生同士ならワクチンをうっていれば違いますが、うってない人もまだたくさんいます。先生の間で広がった場合は授業ができなくなります。

地域で流行が広がり、学校内で複数の教員の感染が発生したら授業をどうするか、授業継続計画を立てておかなければいけない時期が来ています。

先生から子供たちへの感染もあります。学校の先生もなかなか休めませんが、その場合どうするかを考えるのも課題です。教育委員会から人を派遣することも考えなければいけません。

子供から先生、子供から家庭での親への感染は実態がわかりません。事例としては確認されていますが、今後、そういうことが全体のなかでどの程度起きるかを注視しなければいけません。

子供同士の感染といっても感染は大、高、中、小で様相が違います。大学、高校では仲良し同士の感染は明らかに出ています。小中はこれまで限定的にはありましたが、今後どうなるかはまだわかりません。

ーー保育園、幼稚園も小中学生と同じですか。

同じです。大人同士でママ友などの集まりで感染があると思います。先生とも話をする時にお互いに気をつけることが大事です。

先生など人と接する職業のワクチン接種をどうするかは課題です。そういう職業にワクチン接種を義務化するかは議論が必要です。アメリカやフランスでも検討が始まっていますが、日本でも議論しなければいけません。

ワクチン接種の必要性、どう伝える?

ーー若い人に感染対策やワクチン接種のメッセージを届けるのはどうしたらいいと思いますか?

年齢にもよりますが、ワクチン接種について、16歳未満は親の承諾が必要です。子供の行動は、親がどんなふうに考えているかに左右されます。

親の間でも考え方は分かれています。1日も早く12歳以下もワクチンをうってほしいという人もいれば、子供が接種するのは心配な人もいます。若い人たちの間でごくまれに心筋炎が起きるという報告もありましたから。

今の段階で全体を考えると、年代順に接種していって、親が先に接種して「ワクチンは安全だ」と子供にも安心してもらい、受験生だけは機会があれば優先することを検討するのがいいでしょう。

体調に敏感に 親が感染した場合の対処も検討を

ーー子供たちには新学期、どう行動してもらいたいですか?

高校生の人には体調に敏感になってほしい。咳や喉の痛み、熱がある時に、「もしかしたら感染しているかも」と考えて休んでほしい。検査にも行ってほしいですが、受診するかどうかは親とも相談して判断してください。

もう一つは、周りの人は休んだ時に「彼はコロナなんじゃない?」と噂するようなことは絶対にしないでほしい。自分が具合が悪い時に跳ね返ってきます。むしろ休んだ人を助けてあげてほしい。

そして、ウレタンマスクはもうやめて不織布マスクにして、部活も休めるようにする。

まずは大人が9月は学校でいろんなことが起きる可能性を認識してください。ただし、感染者が出たとしても慌ててしまったり、学校の先生を責めたりせずに、冷静に見てほしいです。

また、小中高生が一番困るのは、親が感染した時です。

発症すると感染者は10日間ほど隔離になり、濃厚接触者の家族はその後ろに14日間、自宅待機の期間がつきます。そうすると子供は20日程度学校に行けなくなります。

こういう事例が今後増えることも考えられます。今後どう対応するかを考えるべきですが、難しいです。子供たちの学びや成長を考えると心配です。

真面目な子供や親が強く受け止めすぎないように

ーー真面目な子供や親ほど、政府や専門家らからの「大変だ。危機だ」という呼びかけをまともに受け止めてしまいます。夏休みは家に閉じこもってメンタルも不安定になっている子供もいるようです。どう対処したらいいと思いますか?

結局、こうやって発信すると、本当は気をつけてない人に気をつけてと伝えたいのに、アンテナを高く立てている心配な人が読んで、余計に心配になっていくところがありますね。それは気をつけないといけません。

どうしても人は小さなリスクを大きく見て、大きなリスクを小さく見てしまう認知の偏りがあります。ですので、できるだけそうした罠にはまっていないか振り返る必要があります。

保護者についても、子供たちに関する話題を気にするのは親の責任だと思いますが、子供は国の宝ですから、必要になれば我々専門家はすぐに「こうすべき」と発信します。

学校とも協力しながら、コロナの中でも子供たちができることを少しずつ増やしていきます。しかし、本当に危険な時がきたら、一時的に対策を引き締めることも必要です。

この冬を乗り越えると来年の春にはまた違う景色が見えるはずです。

子供たちは本当によくこの状況で頑張ってくれていますが、学校の先生も頑張ってくださっています。親も含めてそれぞれがお互いの努力に感謝しながら、混乱を乗り越えていきたいものです。

【和田耕治(わだ・こうじ)】国際医療福祉大学国際医療協力部長、医学部公衆衛生学教授

2000年、産業医科大学卒業。2012年、北里大学医学部公衆衛生学准教授、2013年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師、2017年、JICAチョーライ病院向け管理運営能力強化プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2018年より現職。専門は、公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。
『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)を昨年6月11日に出版。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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