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「脱ステロイド」を好意的に紹介した「ザ!世界仰天ニュース」番組内で謝罪 具体的な検証内容や再発防止策は示されず

日本テレビ系の「ザ!世界仰天ニュース」が番組内で「脱ステロイド」を好意的に紹介し、批判が集まっていた問題。番組は9月14日の放送で、改めて謝罪しました。しかし詳しい番組内容の検証や具体的な再発防止策は語られませんでした。

日本テレビ系の「ザ!世界仰天ニュース」が番組内で「脱ステロイド」を好意的に紹介し批判が集まっていた問題で、同番組は9月14日の放送で、「番組内容で、治療中の多くの患者の皆様とそのご家族、携わる医師の方にご心配及びご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」と謝罪した。

また、「今後、番組では再発防止に努めてまいります」と締め括ったが、具体的な再発防止策は示されなかった。詳しい番組内容の検証や、どの部分に問題があったかの言及もなかった。

この問題を巡っては、放送直後から医療従事者の批判が殺到し、日本皮膚科学会など関連6学会と患者会「日本アレルギー友の会」が連名で日本テレビに抗議し、ウェブサイトに声明を出していた。

「脱ステロイド」で回復したかのように放送 批判集まる

問題があったのは、9月7日に日本テレビ系「ザ!世界仰天ニュース」で紹介された「脱ステロイド」の体験談VTRだ。

20代の女性がステロイドを塗っても症状がぶり返すのに嫌気がさし、ステロイドの使用をやめたことで「見事に回復した」様子を再現ドラマで好意的に紹介していた。標準治療を否定する医師が監修していたという。

放送直後から、医療者を中心にSNSなどで批判が相次ぎ、BuzzFeed Japan Medicalにこの番組の問題点について検証する寄稿をした近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司さんは、以下の3つの問題点を指摘していた。

  1. 「脱ステロイド」は民間療法であり、治療ではなく放置。ステロイドは歴史がある良い薬
  2. 顔に塗ることだけで体内のステロイドが作られなくなることはない
  3. 脱ステロイドの激しい炎症でこすったり叩いたりすることで起こる白内障、網膜剥離のリスクに触れていない


番組は公式ウェブサイトやTwitterアカウントは9月10日、「患者が自らの判断で薬の使用を中止すると症状が悪化することがあります。治療については、医師の指導に従ってください」とするコメントを発表したが、謝罪や放送内容の訂正はなく、さらに批判は強まった。

さらなる批判の声の高まりに、番組は公式ウェブサイトで9月13日午後、患者や医療関係者への謝罪と、ステロイドの有効性と安全性、脱ステロイドの危険性を強調するコメントに差し替えた

14日朝には日本皮膚科学会など関連6学会や患者会が制作者の日本テレビに抗議。「科学的に明らかに根拠のない内容もあり、患者さんへの悪影響が懸念されます」とメディアの姿勢を強く批判する声明をウェブサイトに公開していた。

放送でも訂正と謝罪 具体的な検証内容や再発防止策は示されず

14日午後9時から放送された番組の最後で、番組ウェブサイトに掲載した謝罪文に沿って、アナウンサーによる謝罪の動画が入った。

番組内容で、治療中の多くの患者と家族、治療に携わる医師に謝罪した後、「日本テレビに今日、日本皮膚科学会を初めとする6つの学会と一つの患者会から抗議がありました」と紹介した。

さらに、診療ガイドラインを策定している日本皮膚科学会の情報を根拠として、

「ステロイドの外用薬は、皮膚炎の炎症を十分に鎮静することができるなど、有効性と安全性が科学的に立証されている薬です。正しく使用すれば、全身性の重篤な副作用は起きないとされています」と謝罪文と同じ内容を読み上げた。

やはり謝罪文と同様に、「患者の方が自らの判断で急に薬の使用を中止すると症状が悪化し、特に顔面では目に対するリスクがありますので、絶対にやめてください。治療は、医師の指導に従ってください」と自己判断による治療中止は避けるよう訴えた。

また日本皮膚科学会などのホームページも参考にするように伝えた。

最後に「今後、番組では再発防止に努めてまいります」としたが、具体的な再発防止策や番組の検証内容は示されなかった。

再発防止策を「複数の専門家が監修」「ガイドラインを確認」

患者に害が及んではならないと、訂正や謝罪のために番組制作者に働きかけてきた近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司さんは、こうコメントした。

「私としては、今後の再発防止に向けてしっかり対応してほしいです。今回は監修が1人しか入っておらず、その医師が標準治療を否定する立場であったことが問題だったと思います」

「複数の専門家が監修に入ること。放送前にガイドラインは確認すること。同様の内容でこれまで健康被害がなかったかどうかは、最低限確認していただきたいです」