事前の警告はいっさいなく、ある日急にTikTokアカウントが消えていた。
一部のトランスジェンダーのTikTokクリエイターたちから、戸惑いの声があがっている。TikTok運営側は、ジェンダーアイデンティティ(性自認)の偏見によるコンテンツやアカウントの削除はしないと否定しているが…。
アデア・ダニエルさん(20)は、フォロワー数150万人の人気TikTokクリエイター。
ここまでフォロワー数を増やすのに2年ほどかかったという。しかし、一晩でそのアカウントは消えてしまった。
「朝起きてTikTokをチェックしたら、ログアウト状態になっていたんです。ログインしなおそうと思ったら、新規アカウント作成ページに飛ばされてしまいました」
「そこで自分のアカウントを検索すると、なくなっていたんです。事前に警告は受けていませんでした」
BuzzFeed Newsがダニエルさん本人に取材すると、今まで投稿した動画がすべて消えてしまったことで、強いショックを受けたという。
ダニエルさんによると、投稿動画が削除されることは今までもあった。その時は、運営からTikTokの利用規約に反するという警告がきたそうだ。
ただ、コンテンツ削除について公式に問い合わせると、解除されることが多かった。トランス関連のトピックで削除処置をされることが多かったという。
「ネタ系の動画をよくポストしています。人々に知ってもらうために、トランスネタを扱うこともあります。私がSNSを利用する最大の目的は、トランスが抱える問題を人々に知って、学んでもらうためです」
アカウントが消えたことに対し、運営側からは「規約違反」と言われただけで、詳細な理由は明かされないままだ。ダニエルさんを含むトランスクリエイターにとって、「本当の理由」を知ることは容易ではない。
現在、ダニエルさんのアカウントは復活している。復活したのは、BuzzFeed NewsがTikTokの運営側に、アカウントが消えた理由について取材を申し入れた週明けのことだった。

「どういうルールなのかはわかりません。でも、(TikTokが)私たちのために作られたものではないのだということはわかりました」
「白人で、ストレートで、シスジェンダーの人たちが、ダンス動画などを投稿するために作られたものなんですよね」
メールでの回答で運営は、トランスクリエイターやトランスコンテンツ動画の削除を否定した。
「TikTokは、ジェンダーアイデンティティの偏見によるコンテンツやアカウントの削除は行っていません。我々のコミュニティの皆さんが、自分らしくクリエイティブな表現ができるよう安全な環境作りに最善を尽くしています」とメールには記載されていた。
アカウントや動画が消されたトランスクリエイターは、ダニエルさんだけではない。テイ・シェイダーさん(18)もそのひとりだ。
「私の動画も、いつも削除されますよ。ただ笑顔でメイクしてるだけの動画ですら消されています。変ですよね」とシェイダーさんは明かす。
「性的なもの、露出の多いもの、下品な表現のコンテンツは削除されますが、私の動画はそういう類ではないんです」
昨年夏、シェイダーさんの動画を使ったデュエット動画が投稿されたことをきっかけに、トランスジェンダーを差別する人々が、シェイダーさんを攻撃した。
結果、アカウントは炎上し、一部の人からシェイダーさんのコンテンツやアカウントに対して悪意のある通報が行われたようだ。
「つらかったです。本当にたくさんの人から非難されている気がして、ひどく落ち込みました。その上、ある日目が覚めたら、アカウントが凍結されていたんですから。とても傷つきました」
シェイダーさんもダニエルさんも、アカウント凍結時にTikTok運営に対し、20通以上メールを送って抗議している。シェイダーさんのアカウントは、凍結されてから3日後に復活するも、その後また凍結された(現在は復活している)。
TikTokは、たくさんのトランスクリエイターが活躍する場である。ハッシュタグ「#trans」のついた動画は、計130億回も再生されている。
TikTokにはヘイトスピーチなどに関する規約があるものの、ダニエルさんとシェイダーさんは、その不透明さを指摘している。
シェイダーさんは「アプリ自体は人々を繋ぐ素晴らしいものだと思う」としつつ、次のように語った。
「だからこそ、(運営は)もっと広い心でいてほしいですね。公に開かれたアプリであり、いろいろな人が使っているんですから」
ダニエルさんは、アカウントが凍結されても、コンテンツ制作はやめないという。
「『いつもトランス系の投稿ばっかりだね』と言う人もいます。でも、ただ投稿しているだけではないんです。この投稿が生死を分けることもあるんです」
「トランスでありながら、それを自身でわかっていない人がいます。その人たちにとって、この動画が救いとなることがあるんです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:soko / 編集:BuzzFeed Japan