〈ハリー・ポッター〉シリーズの役者であり、女性解放の活動をしているエマ・ワトソンさんが、サヴィタ・ハラッパナヴァーさんへ手紙を書いた。サヴィタさんは、敗血症性の流産の際に中絶を拒否されて、2012年にアイルランドで死亡した。
「あなたのことを追悼して、そして私たちの権利の平等化に向けて、生殖の公正のために戦い続けます」とワトソンさんは、〈ポーター誌〉で書いている。
2018年5月、アイルランドの人たちは、住民投票を行い、厳しい中絶禁止法は廃止されることになった。サヴィタさんの死が、人工中絶を禁止するアイルランド憲法修正第8条を廃止するキャンペーン活動を活気づけ、「繰り返すな」というスローガンと、サヴィタさんの写真が、住民投票のキャンペーンの象徴となった。
「運動の象徴になどなりたくなかったでしょう。命を救う処置をして欲しかっただけだったでしょう」とワトソンさんは書いている。
「2012年、あなたが亡くなったというニュースが報道されたとき、アイルランドの活動家の人たちは直ちに行動を呼びかけ、その呼びかけは世界中に響き渡りました。アイルランド憲法修正第8条の廃止を呼びかける声です」
「何度も、社会の不公正が理由で悲劇的な死がもたらされると、地元コミュニティ、そして世界中の人たちが、敬意を表し、結集し、宣言します。Rest in power、力とともに、安らかに」
「故人に誓い、社会への呼びかけを、私たちは繰り返します。繰り返さないと」
「ですが、構造的な不平等の象徴となった故人のために、実際に正義がもたらされるということは、めったにありません」とワトソンさんは続けている。
「さらに希なことは、女性解放の歴史的な勝利が、他の多くの場所での生殖におおける公平のための戦いへと波及していることです」
5月にあった中絶禁止法の是非を問う住民投票では、66.4%の国民が憲法修正第8条の廃止に投票した。住民投票の前に、ダブリンにあるサヴィタさんを追悼する壁画には、力強いメッセージが残されていた。
「ダブリンのあなたの壁画には、こんなメッセージが残されていました。『あなたが眠ってしまったので、私たちは起きた』」とワトソンさんは続けている。
「憲法修正第8条のために、流産した胎児の命が、生きている女性の命よりも優先されたことは、ひとつの国家にとって、警鐘となりました。あなたや安全で合法な中絶を手に入れるためにイギリスまで行かざるをえなかった多くの人たちに対する公平がようやく勝ち取られました」
生殖における公平のための戦いは、終わりとはほど遠い、とワトソンさんは書いている。北アイルランドにおける中絶禁止法への影響について、イギリス政府は最近調査を行ったが、未だに北アイルランドではいかなる理由においても中絶は違法である。8月、アルゼンチン政府は、中絶の合法化法案を否決した。
「アルゼンチンやポーランドでは、中絶禁止法により、少女や女性、妊娠している人たちが、罰せられ、危機にさらされています」とワトソンさんは書いている。
「北アイルランドの中絶禁止法は、白熱電球が発明される前からあります」
29日、ダブリンでは毎年行われている「選択のための行進(March for Choice)」に多くの中絶権利を訴える活動家が参加したが、今年は北アイルランドの中絶禁止法に焦点を当てており、たくさんの人がワトソンさんのことを賞賛している。
「たくさんの人を刺激したサヴィタ・ハラッパナヴァーさんに宛てたエマ・ワトソンさんの手紙を読んで、ワトソンさんが北アイルランドにおける中絶権の呼びかけに賛同して、とても驚いている」と中絶支援ネットワークであるAbortion Support Networkを設立したマーラ・クラークさんはTwitterに投稿している。
同ネットワークでは、アイルランドと北アイルランドからイングランドへ中絶しに行く必要がある女性に資金援助をしている。
北アイルランドからイングランドに中絶に行く人は、1日当たり平均して28名いることが、英・保健省の最新の統計が示している。アイルランド共和国の住民投票で中絶が合法化されることになったが、必要とされる立法過程により、合法的に中絶を受けられるようになるには来年初頭までかかる。
アイルランドからイングランドに中絶を受けに行く人は、1日平均して9名おり、1980年以降、17万人にのぼると推測される。